14日、名古屋・IGアリーナのメインイベントで行われた世界4団体S・バンタム級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの井上尚弥(大橋)が、WBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を117-111、118-110、118-110の大差3-0判定で破り、4団体王座の防衛に成功した。

互いにリードジャブを1発ずつ放つと、目まぐるしいフェイント合戦に突入。俄然、緊迫ムードが高まったが、この展開を切り裂いたのはやはり井上だった。右ボディーストレートを突き刺して、ジャブから入ろうとするアフマダリエフに左フックを合わせる。
この日の井上は、強打を打ち込みながらバランスを崩すという動作を徹底的に回避。また、“打ったら必ず動く”を終始実践。ジャブ&ステップバックを基本動作とした丁寧な職人芸を披露し続けた。
時折放たれるアフマダリエフの左右フックは、明らかに威力に満ちていた。井上のガード上を叩く打撃音は、井上を上回らんばかりだった。が、井上は左ジャブに加え、右ストレート、さらには中盤から左ボディーブローも加えた得意のコンビネーションを次々にヒット。アフマダリエフはこのボディー攻撃を嫌がりつつも、ダメージを感じさせない気持ちの強さは見せた。
井上の多彩な左、タイミングが同じで放たれる右ストレートと右アッパー。これらの組み合わせをまったく読むことができなくなったアフマダリエフ。待ち構えてカウンターを打つ狙いから、井上の多彩な攻めに圧倒されて手を出せなくなっていく。自然、同時打ち、相打ち狙いとなっていくのだが、スピード差で井上を捕らえることができなかった。
これまで、ステップと距離で外すのが防御動作の主体だった井上。だが、この日はスウェーバック、ウィービングなど、大きなボディーワークを多用していたことも印象的だった。アフマダリエフの攻撃をはっきりとかわそうという強い意思が感じられた。
いつしか両頬が真っ赤に腫れあがっていたアフマダリエフは、ラフな左右フックを振り回すファイターと化していた。そういう形に追い込んだのは、井上尚弥の高い技術力だった。
最終回終了間際、アフマダリエフが渾身の右フックを合わせてきた。井上は顔もそらしつつ一瞬ダメージを受けたようだったが、事なきをえた。
「アウトボクシングもいけるでしょ? 誰が衰えたって?」。近戦の試合ぶりへの懐疑論に対し、おどけてアピールした井上は、「チームで戦略をしっかりと練って、この日を迎えた。倒しにいきたい気持ちを抑えたからこそ、この結果になった。中盤、倒しにいってたら、また違う結果になったかもしれない。今日はこの戦い方でよかったと思います」と、丁寧な戦いぶりを振り返った。そして、「次はサウジアラビアで12月に試合があるとも聞いているので、また素晴らしい戦いを見せたいと思います」と宣言。
ここで、会場を去ろうとした“ライバル”中谷潤人(M.T)を見つけると、「中谷くん! あと1勝! 来年、東京ドームで盛り上げましょう!」と呼びかける。振り返った中谷も笑顔と両拳を握りしめて、井上に清々しく応じた。
井上(32歳)は31勝27KO。アフマダリエフ(30歳)は14勝11KO2敗