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6.10永田大士が2冠王座V3戦 自分、相手、周囲、戦況…「すべてを把握して、制圧する」

2025年6月4日 12時27分

 S・ライト級2冠王者の永田大士(三迫)が10日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインイベントに登場。東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座ともに3度目の防衛戦に臨む。

 これが27戦目(21勝7KO3敗2分)、35歳のベテランの今回のテーマは「見る」こと。永田大士らしくガンガン行く、が決まり文句だったサウスポーのファイターは自分自身、対戦相手、周囲、戦況、「すべてを把握した上で、相手を制圧したい」と語る。

 前回2月の防衛戦で星大翔(DANGAN)に対し、初回に不用意なダウンを喫してしまった反省が背景にある。まだ温まりきらない立ち上がり。遠い距離から仕掛けた打ち終わりを突かれた。攻撃ではなく、ディフェンスから入り、自分の得意な近い距離に入ったところで仕掛けろ――。加藤健太トレーナーのアドバイスで2回から修正。8回TKO勝ちを飾ったが、苦い思いが残った。

 挑戦者のキム・ジュヨン(韓国/35歳、19勝11KO2敗3分)は丸4年のブランクを挟んで13連勝中。ウェルター級で韓国王者とIBFアジア王者、ミドル級で韓国王者となるなど、以前は上の階級を主戦場にしていた。キムの体の強さ、出方を確認した上で戦い方を選択したいというのが加藤トレーナーの考え。永田にはテーマの完遂が求められる。

 元WBA世界S・フライ級王者の飯田覚士さんからビジョントレーニングの指導を受け、視線や視界が重心バランスや意識などにも影響することを学んだという。日々の練習にも取り入れ、まさに「見る」ことを追求してきた。

 現在、WBO15位と世界ランクにも名前を連ねる。「雑にならないで、丁寧に」と永田。その上に自分らしいアグレッシブさを表現する。柔軟かつスキのない試合運びの先に望む結果と未来が広がる。(取材/構成 船橋真二郎)

ビジョントレーニングを取り入れている永田

■不用意なダウンの反省を生かして
――前回から4ヵ月で迎える防衛戦ですが、どんなテーマを持って臨みますか。
永田 いつもこう(両手で視野が狭くなるしぐさをして)なっちゃうんですけど。それで前回、まだ自分の体ができてない状態で、1ラウンドにダウンを取られたんで。やっぱり、いろんなところが見えてないといけないなと思って。

――自分の状態もそうだし、状況も見て、ということですか。
永田 はい。で、ダウンを取られた後も(コーナーからの)指示がまったく聞こえてなくて。クリンチ! クリンチ! (展開を)1回切って! とか。そういう声がめっちゃ飛んでたんですけどね。パンチを返さないと、ダウンを取り返さないとって、焦ってたんで。そういうところが一番の反省ですね。

――インターバルに、自分の距離に近づくまではディフェンスで入って、そこから攻めようと加藤トレーナーにアドバイスされて。それで展開を立て直せたということでしたね。
永田 そうですね。どこかで簡単にいけると展開を端折って強引にやろうとしてたんで。その結果ですね。どんな相手でも1ラウンド目は大切だな、と肝に銘じて。で、自分も見て、周りも見て、コントロールできるようにしないと。

――あのダウン、試合後の控え室では効いていないということでしたけど。
永田 はい。まさに効いてなかったんですけど。でも、ダウンはダウンじゃないですか(笑い)。そういうもので試合は勝ち取られていくので。

――そのラウンド、2ポイント失うだけじゃなくて、その後のジャッジの見方にも影響するかもしれないですよね。
永田 まさにそうです。僕自身、効いてなかったとしても、ジャッジの人に永田、足にきてるんじゃない? と見られたら、それが事実になっちゃうから。

――実際、我々リングサイドの記者たちは効いていると見ていましたからね。
永田 そうですよね。そういう周りがどう見ているかもちゃんと見えてないといけないし。でも、あれはあれで今はよかったと思ってます。あそこで反省できたから、そういうことを意識して、今はボクシングができてるんで。で、次の相手も強いんで、なおさら気が引き締まりますね。

――相手のキム選手ですが、どういう印象を持っていますか。
永田 好戦的な選手ですね。最後に負けたのが10年ぐらい前(8年5ヵ月前)なんで、ずっと負けなしでやってきた自信を持って挑んでくると思います。

――19勝11KOでパンチもありそうですね。
永田 はい。ずっとタイトルをやりたかったと聞いたんで、モチベーションも高いと思うし。潰しにかかってくるだろうな、と思って。もともとミドルで韓国(王座)を獲って、ウェルターでIBFアジアと韓国(王座)を獲ってる選手なんで。油断できない相手です。

――身長は173センチ。175センチの永田選手より少し低いぐらいですが、そういう体格ということですよね。もう一昨年の10月ですか。ウェルター級で韓国人選手(キム・ジンス)と試合をして、体格差を感じたと言ってましたね。
永田 あれはしんどかったですね(苦笑)。今回も気が引き締まるしかないというか、リスクはあるんですけど。でも、そのリスクを乗り越えることが今後の自分の糧になり、強さになると思って。

加藤トレーナーとのコンビは10年以上になる

■相手に集中しつつ、周りにも意識を向ける
――加藤トレーナーは、まず相手の体の強さを確認して、どう出てくるのかを見て、それから戦い方を決めていきたいと。前回の反省とも重なりますね。
永田 そうですね。そもそも相手のことを観察できないといけないんで。

――では、今回はお決まりのフレーズの“永田大士らしくガンガン行く”ではなく。
永田 いや、はい。永田大士らしくガンガン行きますよ(笑い)。

――いやいや(笑い)。まずは1ラウンドの入りを大事にして。
永田 はい(笑い)。でも、自分の感覚というか、自分らしさも大事にして。行けると思ったら、1ラウンドでも行こうと思いますし。ただ、相手のことも見て、トレーナーの声も聞いて、ですね。永田大士らしくガンガン行くんですけど、雑にならないで、丁寧に。

――自分の感覚はしっかり持ちつつ、相手を観察して、周りのセコンドの声も聞いて、試合展開も見ながら、ということですね。
永田 はい。それこそ、さっき(直前の雑談で)話したビジョントレーニングでやってるんですけどね。前を見ながらも、周りも見れるように、とか。

――間接視野を意識するような?
永田 そうです。それが相手に集中しつつ、周りにも意識を向けることにもつながるんで。

――飯田覚士さんに見てもらっているということで。ビジョントレーニングを取り入れようと思ったきっかけは何だったんですか?
永田 だいぶ前から考えてて、行動に移すまでに時間がかかったんですけど(笑い)。2回目の井上浩樹(大橋)戦ぐらいからかな。見方、見え方を意識はしてて。自分が見えてない部分があるんだろうなというのは思ってたんですけど。やっぱり、自分の意識が強い部分と弱い部分があって、ぼんやりとしか見てない部分と、もっと向き合ったほうがいいなと思って。

――そういう意味では、前回の星戦の反省が行動に移すきっかけにはなったんですかね?
永田 あ、そうですね。で、4月に(フィジカルトレーナーの)寺中(靖幸)さんの寺中特殊部隊でフィジカル終わりにビジョントレーニングをやる機会があって、いいなと思って。で、本格的に飯田さんのところで。

――まだ日は浅いと思いますけど、何か気づきはありましたか。
永田 目線で重心の位置が変わるとか。フェイントで(目線がズレて)重心がズレるんで、バランスという意味でも目線は大事だなと思って、意識したり。あと僕はサウスポーなんで、(前の)右目ばっかり使ってたんで、もっと左目を使えるようになれば、もっと距離感も合うし、空間把握もできると思うんで。

――先ほどの間接視野を含めて、そういうところをトレーニングで。
永田 そうですね。飯田さんに教えてもらったことをやってます。朝の習慣にして、息子にミルクをあげたあとにやったり(笑い)。で、スパーリングで視野が広く、全然違う感じに見えたりもするんですけど、でも、それを毎回にしないといけないんで。

――では、これからも継続して、ということですね。

フライ級王者の寺地と汗を流す

■自分のやるべきことをやる
――今回、どういう試合展開で、どういう勝ち方をしたいとか、思いとしてはどうですか。
永田 意気込んで倒しにいくということはないですね。自分のやるべきことをやれば、絶対にチャンスはくると思ってるんで。

――そういう結果に自分で持っていけるようにということですね。先ほどの話で、チャンスがきたら行くし、でも、セコンドの声も聞きながら、相手の状態も見ながら、試合の状況も見ながら。
永田 そうです。まず自分自身のことを把握して、相手を把握して、周囲のこと、試合展開も把握して。すべてを把握した上で、制圧したいと思います、相手を。そういう感じですね。

――それをきっちりやり切ると。
永田 はい。勝つためにやるべきことをやります。

――海外に出て、大きな試合をしたいという希望をずっと口にしてきて。前回の試合後はこんな内容では海外とは言っていられないと。だから、今回は。
永田 はい。自分にできることを行動で見せる、試合で見せるしかないんで。そうすれば(三迫貴志)会長がそういう道をつくってくれると思うんで。自分は自分のやるべきことをやって。

――いろいろなことに柔軟に対応して、スキのない試合運びをすることが結果にも、その先にもつながると。
永田 そうですね。やるべきことをやるのみです。すべてを把握して、相手を制圧します。

――前回、話を聞かせてもらったのが1月で、チャンピオン・カーニバルが始まる前ということで、三迫ジムのトップのひとりとして、試合や練習、背中で見せたいと。ジムからはチャンピオン2人(出田裕一、川満俊輝)、挑戦者2人(渡来美響、山口仁也)が出て、1勝3敗と厳しい結果になりましたが、思うところがあるのではないですか。
永田 まあ、結果は残念ですけど。勝負の世界だから、と言ったらそれまでなんですけど、周りの結果がどうとか、僕は関係ないですね。

――あくまで自分。
永田 はい。よく言うじゃないですか、周りが勝って、勢いに乗ってるから自分もとか、周りが負けて、落ちてるからオレがとか。周りがどうでも、自分のやるべきことは変わらないんで、それは違うんじゃないかな、と思うんですよね。

――自分のやるべきことを見失わないように。
永田 そうですね。仲間の試合を見て、こうしたほうがよかったかなとか、こうなっちゃいけないな、オレだったらこうしたなとか、だから、勝つために自分はこうしようとか、考えたりはしますけど。

――自分に置き換えて、考える。
永田 はい。それで、自分のやるべきことが明確になるというか。まあ、僕はそういうのに引っ張られがちなんで、自分に言い聞かせてるところもあるんですけどね。ダメだ、ダメだ、気にしちゃダメだ、みたいな(笑い)。

――ああ、周りの結果に一喜一憂して、自分がブレないように敢えて。それは試合も同じですね。ダウンしたり、カットしたり、いろいろなアクシデントが起きるけど、その中で自分のやることをやる。
永田 そうですね。はい。なので、自分もそうだし、相手もそうだし、周囲、状況、すべてを把握して、制圧します(笑い)。

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