12.9「俺のほうが強い」川満俊輝が野田賢史と決定戦 5年ぶりの再戦に臨む元王者が奪還にかける思い

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 9日、東京・後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のメインは日本ライトフライ級王座決定戦。元王者で同級1位の川満俊輝(かわみつ・としき、三迫/30歳、11勝7KO2敗)と、プロ初タイトルを狙う同級2位の野田賢史(のだ・けんし、金子/30歳、7勝4KO3敗)が谷口将隆(ワタナベ)が返上した王座を争う。

 2020年10月以来の再戦になる。当時、川満はプロ5戦目、野田は3戦目。6回戦で激突した第1戦は川満が4回TKO勝ち。超攻撃的ボクシングで激闘に巻き込み、勝利をもぎ取った。

 互いに5年前に戦った相手を称え合う。「ひとつ間違えたら負けてたと思うぐらいの強い選手」と川満。「勝ったから下に見ることは全然ない。タイトルマッチで再戦できるのは燃える。絶対に勝って、俺のほうが強いというのを見せたい」と気合満点でベルト奪還を誓う。

 「川満くんの強さは鮮明に覚えている」と野田。タイトル初挑戦でもあるが、「僕としてはただのリベンジマッチ。いつかやり返す。その思いでずっとやってきた」と雪辱に燃える。世代別歴代最多7人の世界王者を輩出してきた1995年度生まれの同世代対決。今回も激闘必至だ。

川満俊輝はベルト奪還に気合い

 川満にとっては思い入れのあるベルトだ。もともとは尊敬するジムの先輩・堀川謙一(引退)が持っていたベルトで奪還に燃えた。沖縄・宮古工業高校の先輩で、昨年11月に31歳で急逝した元プロの知念大樹さんが喜んでくれたことも大切な思い出のひとつ。大樹さんの父で母校の恩師・知念健次監督も応援に駆け付ける。

 自宅の見える場所に飾り、「よし、頑張るぞ!」と気持ちを高めてきた。「生活の一部」を失った喪失感は大きく、支えてくれる妻・優希さんのためにも取り返したい気持ちは強い。また試合の日は、前回のベルト奪取後、母校でボクシングを始めた高校2年生の甥・蓮くんの誕生日でもある。さまざまな思いを力に変える。

 今年4月、ベルトを奪い取られた高見亨介(帝拳)が7月にWBA世界ライトフライ級王者となり、8日後の17日に王座統一戦に臨む。何より「自分も……」の思いが川満を駆り立てる。

 三迫ジムは元東洋フライ級王者の先代・三迫仁志会長が1960年12月25日に設立。間もなく65周年を迎える。金子ジムは元東洋フェザー級王者の先代・金子繁治会長が1965年4月に設立し、60周年を迎えた。ともに戦後期に活躍した名王者が興し、長い歴史を刻んできたジムの2人が伝統の日本タイトルを争う。(取材/構成 船橋真二郎)

※「ダイヤモンドグローブ」は9日18時の第1試合開始からFODでライブ配信される。

■どんよりとスッキリと……
――4月の高見(享介)選手との試合から半年以上たちました。どんな気持ちで過ごしてきましたか。
川満 どうですかね……。チャンピオンじゃなくなって、“どんより”と“スッキリ”みたいな。

――スッキリ?
川満 そうですね。ちょっと楽になった、というのもあります。

――プレッシャーから解放されたような。
川満 そうです。楽になって。まあ、よくはないんですけど(苦笑)。

――どんよりと悔しい気持ちもあるし、スッキリと楽になったところもあるし。複雑な。
川満 複雑ですね。だから、あの(高校の同級生の比嘉)大吾(志成)と高見くんが一緒に出たのは、素直に悔しかったし、見てられないような気持ちで……。

――あの日(7月30日の横浜BUNTAI)は多分、3試合とも見てられないというか。複雑な感情だったでしょうね。高見選手が世界チャンピオン、比嘉選手が引き分け、(寺地)拳四朗(=BMB)選手が負けて。
川満 そうですね。拳四朗さんも。そうですね。3試合とも……。(感情が)ぐちゃぐちゃになる展開でしたね(苦笑)。

――覚えていますよ。拳四朗選手が花道を引き上げる後ろを三迫ジムの選手たちが何人も続いて、その一番後ろから、下を向きながら歩いてくる川満選手の姿を。
川満 はい。一番後ろを(苦笑)。あの前に高見くんと会ったんですよ。

――そうだったんですか。
川満 はい。最後に。おめでとうございます、ありがとうございますって、それぐらいですけど。でも、素直に強かったし、(高見に対して)もっとやれたんじゃないか、というのもあったんですけど、自分に勝ったから獲ってほしい気持ちもあって。高見くんも頑張って、世界チャンピオンになったんで、僕もまた違う形ですけど、もっと頑張って、自分もならないといけないという気持ちになったんで。

――もっとやれた、という気持ちが残ったんですね。
川満 そうですね、もっとやれるだろ、ぐらいの感じだったんですけど……。まあ、変な気負いとプレッシャーと……。高見くんが強いのは分かってたんで、勝てるのかな、みたいな不安も……。そういう弱気になった自分もいたんで。

――試合前に?
川満 はい。嫌だな、と思いました。カッコ悪いなって、自分が嫌になりましたね。でも、それを最後まで拭い切れなかったです。

――前回は最後、体重調整に苦しんだところも。
川満 そうですね。迷惑をかけちゃったんで。今回、加藤(健太トレーナー)さんにアドバイスをもらったり。感謝です。

――毎日、体組成計で計った数値を報告したり、食事を画像で送ったりしているそうですね。
川満 はい。加藤さん、横井(龍一トレーナー)さんに。3ヵ月、4ヵ月前からですかね。こんなに長い感じでやったことはないんで、嫌だな、と思ったんですけど(苦笑)。

――毎食、毎食、食べる物の画像を送ったりして(笑い)。
川満 そうです(笑い)。でも、そういう我慢してる中で練習とかもやると、試合前の感覚に近い感じで、気合いも入る感じでできたんで、いいなと思いました。

――では、メンタル面でもいい状態でやってこれたと。
川満 そうですね。やってこれました。

5年前は3回にダウンを奪った川満が野田に4回TKO勝ち

かかってこいよ、という気持ちで
――ベルトを奪還するチャンスが来たことについてはどう感じていますか。
川満 思い入れのある日本のベルトで、堀川さんが持ってたベルトを取り返すぞっていう気持ちもあって、大内(淳雅=姫路木下)さんから獲って。そのときはまだ大樹先輩も生きてて、ベルトを持ってもらったんで……。

――神戸まで来られて。先輩が喜んでくれたことも思い出として残っているんですね。
川満 そうですね。神戸まで来てくれて。忘れられないですね。あのときのことは。

――最初は慣れない東京の生活で、大樹先輩に助けられたと。
川満 あ、そうです。いっぱい助けてもらいました(笑い)。

――確か川満選手の広島でのデビュー戦のときのトランクスが大樹先輩の。
川満 そうです(笑い)。トランクスがなくて、どうしようと思って、大樹先輩に言ったら、俺のを使えよ、あげるよって。

――それでは、あのトランクスは今も川満選手が持っているんですね。
川満 はい。持ってます。ここだっていうときに履きたいな、と思ってるんですけど(笑い)。

――ここじゃないですか?(笑い)
川満 ここですかね?(笑い) でも、確かに……。いいかもしれないですね……。

――さておき、大樹先輩の一周忌でもあるし、ベルトを取り返したい気持ちが強くなりますね。
川満 そうですね。もう一度、獲って。

――ベルトはずっと自宅にあったんですか。
川満 あ、家にありました。見えるところに飾ってあって、毎日見て、「よし、頑張るぞ!」って思うっていう、生活の一部というか。

――日本のベルトは持ち回りで、手元からなくなると実感しますよね。
川満 そうですね。ずっとあったのがなくなるんで、なんか不思議な感じというか。あるとないとじゃ、全然違うんで。

――だから、奥さんも毎日見て、生活していたから。
川満 はい。申し訳ないですね。ずっと協力してもらって、助けてくれてるのに……。もう一度、ベルトを見せたいですし、取り返したいですね、奥さんにも。

――相手が野田選手で、5年前に勝った相手との再戦になります。
川満 再戦って、(負けた)相手がめちゃくちゃ燃えるというか、絶対にやり返してやるぞって、相当な覚悟と気持ちで来ると思うんで。それを上回らないとダメなんで。そうですね。野田くん、ほんとに強くて、ひとつ間違えたら負けてたと思うぐらいの強い選手だったんで、勝ったから下に見ることは全然ないんで。

――前回は激闘というか、すごい試合になりましたね。
川満 そうですね(笑い)。また、こうして大きなタイトルマッチで再戦できるのは燃えますし、絶対に勝って、俺のほうが強いというのを見せたいと思ってやってます。僕も絶対に負けられないので。

――ベルトがかかった試合でもあるし。
川満 はい。ここで勝てば、また自分もさらに強くなれると思うんですよ。1回、チャンピオンにならせてもらって、すごいものなんだなというか、そのベルトの重みを知ってる分、燃えてるし、かかってこいよ、やってやるぞ、ぐらいの気持ちなんで(笑い)。

昨年5月、プロ初の再戦で川満は安藤教祐に6回TKO勝ち

■川満俊輝のボクシングの根本
――勝った相手との再戦という意味では、一度は1ラウンドTKOで勝った安藤(教祐、KG大和=引退)選手と再戦して、気持ちの持っていき方という面でも経験しているし。
川満 あ、そうですね。そういう意味では、再戦だからっていう不安というか、プレッシャーには感じてないですね。

――あのときはチャンピオンで、初防衛戦で、そういう面での難しさもあって、永田(大士)選手にアドバイスをもらったんでしたね。だから、ちょっと違うかもしれないですけど。
川満 ああ、永田さん、ありましたね(笑い)。でも、あのときもチャンピオンだからって、守りに入らないでやろうっていう感じだったんで。今回もチャレンジャーの気持ちを忘れないでやろうと思ってるんで。

――最近の野田選手の試合は映像で見ましたか。
川満 チラッとですね。そんなには見てないですけど、昔、試合をしたときのイメージとチラッと見た今のイメージをリンクさせて、イメージをつくってる感じです。

――印象は変わりましたか。
川満 自分の中では昔のほうが動いてたかなと思うんですけど、今のほうがドシッとしたイメージですね。その分、倒してますし、一発があるんで、怖いなっていう。

――当時は帝拳ジムで、今は金子ジムに移籍して、環境も変わりました。
川満 そうですね。野田くんも苦しい思いをしてきたのをすごく感じて、自分もそういう気持ちは分かるので。そういう気持ちの面で強くなって、上回らないとな、と思ってます。

――前回は激闘というか、川満選手が潰して、押し切った試合でした。
川満 そうですね。潰して。

――今回も同じような展開になりそうですか。どうイメージしますか。
川満 どうなんですかね……。でも、今の野田くんのスタイルを見ても、そんな逃げるような感じじゃないと思うんで、最終的に激しい感じになるんじゃないかと思います。どっちが強いか、最後は俺のほうが強いぞ、というのを見せつけたいです。

――さっきも言っていたように自分の強さを見せる試合、証明する試合にしたいと。
川満 ほんとにそうですね。自分でも信じてるというか、自分で自分のことを。自分を信じることの大切さを高見くんとの試合で学んだので。やっぱり、弱気になったら弱気なボクシングになるんですよね。変に警戒して……。警戒するのは大事なんですけど、自分の中で出し切ってないところで(レフェリーに)止められちゃった感じがして。

――自分の感覚としては。
川満 はい。行き切って負けたんだったらいいんですけど、どうせだったら僕がガンガン行って、ぶっ倒されたほうがまだよかったなって。そういう感じがして、悔しかったんです。自分に。自分に対して、悔しかったですね。

――次の試合では、そういう気持ちを残したくないですね。
川満 残したくないです。残したら、一生後悔すると思うんです。

――そういう意味では、前回の野田選手との試合は100%、100%以上、出し切った試合ですよね。
川満 はい。モロに。お前、アゴが上がってんだよって、横井さんに怒られたんで(笑い)。

――アゴが上がっても、関係なく行きましたもんね(笑い)。
川満 そうですね(笑い)。

――行くだけじゃダメだから、ディフェンスだったり、勝負どころの見極めだったり、横井さんと取り組んできたんでしょうけど、そこが川満選手の根本的な部分ではあるから。
川満 そうです。やっぱり、行くというのは大事にしたいですね。僕のボクシングで。

――知念監督とやってきた川満選手のボクシングの原点ですよね。
川満 はい。そうです。だから、大事にして。

横井トレーナーとミット打ちをする川満

■寺地拳四朗にも刺激をもらいながら
――知念監督は今回も後楽園ホールに?
川満 はい。来ていただけます。

――試合が決まってから、何かお話は?
川満 電話では。そうですね。最後のチャンスだぞ、全部出せ、あららがま魂(なにくそ、という不屈の魂を表す宮古島の方言)だぞ、と言ってもらいました。もちろん、最後にするつもりはないですけど、それぐらいの気持ちで臨みます、と言いました。

――大樹さんのこともあるし、知念監督にも見せたいですね。
川満 はい。またチャンピオンになるところを監督にも大樹先輩にも見せたいです。

――そういえば、今も宮古工業高校のボクシング部員は甥っ子の蓮くん1人だけなんですか。
川満 1人です。一瞬、後輩が入ったけど、やめたみたいで(笑い)。

――では、知念監督とマンツーマンで。全国大会にはまだ?
川満 そうですね。最近、沖縄県大会で3位に入ったみたいですけど。

――今、2年生でしたか。
川満 2年生です。始めたのが1年生の途中……後半とかなんで、まだ始めて1年ぐらいなんで、まだまだです。でも、きつい思いをして、勝つことの喜びが分かったと思うんで、僕も嬉しかったです。蓮の誕生日なんですよ。試合の日が。

――そうなんですか。試合には?
川満 多分、来てくれると思います。

――では、蓮くんにも。もう一度、いろいろな人に見せたいという気持ちも力になりますね。
川満 はい。また(狩俣)綾汰(かりまた・りょうた、三迫=引退)に見せたいと思ってるんですよ。チャンピオンになったぞって。

――前回、5年前は高校時代の九州大会で狩俣くんが野田選手に負けているから、リベンジという気持ちもあったんでしたね。
川満 ありました。今回も変わらないです。5年前に勝ったのはまぐれじゃなかったぞっていうのを、また綾汰に見せたいと思います。

――高見選手との試合前にもスパーリングをしていましたが、今回も何度か拳四朗選手と手合わせしているんですよね。どうでしたか?
川満 やっぱり緊張感がすごくて、試合に近い感じでできるんで。自分の“真の姿”が見える感じがして、いい練習というか、いい経験になります。ありがたいです。

――拳四朗選手も12月27日にサウジアラビアで大事な試合が。
川満 はい。拳四朗さんもやってくれると思うんで、その刺激をもらいながら。僕も負けないぞ、という気持ちです。

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