9日、東京・後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のメインは日本ライトフライ級王座決定戦。元王者で同級1位の川満俊輝(かわみつ・としき、三迫/30歳、11勝7KO2敗)と、プロ初タイトルを狙う同級2位の野田賢史(のだ・けんし、金子/30歳、7勝4KO3敗)が谷口将隆(ワタナベ)が返上した王座を争う。
2020年10月以来の再戦になる。当時、川満はプロ5戦目、野田は3戦目。6回戦で激突した第1戦は川満が4回TKO勝ち。超攻撃的ボクシングで激闘に巻き込み、勝利をもぎ取った。
互いに5年前に戦った相手を称え合う。「ひとつ間違えたら負けてたと思うぐらいの強い選手」と川満。「勝ったから下に見ることは全然ない。タイトルマッチで再戦できるのは燃える。絶対に勝って、俺のほうが強いというのを見せたい」と気合満点でベルト奪還を誓う。
「川満くんの強さは鮮明に覚えている」と野田。タイトル初挑戦でもあるが、「僕としてはただのリベンジマッチ。いつかやり返す。その思いでずっとやってきた」と雪辱に燃える。世代別歴代最多7人の世界王者を輩出してきた1995年度生まれの同世代対決。今回も激闘必至だ。

熊本県八代市出身の野田。小学6年生からボクシングを始め、中学2年生のときにU-15全国大会で優勝。地元・秀岳館高校1年時の熊本県大会決勝で堤聖也(角海老宝石)を破り、初出場したインターハイはベスト16で井上拓真(大橋)に敗れたが、3年間で全国大会準優勝が1度、3位が2度の実績を残した。
だが、進学した拓殖大学で試練が待っていた。リーグ戦を控えた3年生の春、スパーリング中に左ヒジ靭帯断裂。競技続行も危ぶまれる重傷を負った。それでも「やめる気は一切なかった」と約3年に及んだ長いリハビリに耐えられたのは「自分は世界チャンピオンになる」と信じてきたからだという。
その信念に大きな影響を与えたのが父・龍一さんだった。プロ転向時、「タイトルマッチだけは観に行く」と言った父が今回、小学生から現在に至るまで初めて息子の試合を会場で観戦する。「負けたまま終わるのは男じゃない」。幼い頃から言い聞かされてきたという龍一さんの教えも胸に「95年組、最後の世界チャンピオン」に前進する。
三迫ジムは元東洋フライ級王者の先代・三迫仁志会長が1960年12月25日に設立。間もなく65周年を迎える。金子ジムは元東洋フェザー級王者の先代・金子繁治会長が1965年4月に設立し、60周年を迎えた。ともに戦後期に活躍した名王者が興し、長い歴史を刻んできたジムの2人が伝統の日本タイトルを争う。(取材/構成 船橋真二郎)
※「ダイヤモンドグローブ」は9日18時の第1試合開始からFODでライブ配信される。
負けた相手には絶対にやり返す
――5年前の負けで野田選手のボクシング人生が狂わされたというか。今回は気持ちが違うのではないですか。
野田 そうっすね。プロ初黒星だったし。いつかやり返す、その思いでずっとやってきて。で、この舞台、王座決定戦で決まったんで。完璧ですよね。
――舞台は整ったと。
野田 はい。あそこで負けてから、僕は勝ったり負けたりで、(帝拳ジムから)ジムを移籍して。川満くんは日本チャンピオンになって。まあ、5年前は負けるとも思ってなかったんで。同じ九州で、しゃべったりはなかったけど、高校のときから知ってたし。
――川満選手が仲の良い、同じ宮古島の狩俣綾汰(三迫=引退)選手に勝っているんですよね。
野田 勝ちました。九州(大会)で(狩俣と)結構、あたりましたね。
――前回、川満選手は狩俣選手の高校時代のリベンジも大きなモチベーションだったと。
野田 次は逆っすね(笑い)。やり返します。ずっと、金子ジムに入ったときから言ってたんですよ。いつか川満くんとやらせてくださいって。やる運命だったというか、あの負けは、このためにあったんだって、伏線回収しないと。だから、タイトルマッチは、そんなに意識してないです。
――初のタイトル挑戦ではあるけど。
野田 もちろん、日本チャンピオン、世界チャンピオンを目指してやってますけど。今回ばかりはやり返すという気持ちが強いです。僕としてはただのリベンジマッチですね。
――5年前は、言葉を選ばずに言うと“潰された”という試合でした。
野田 ほんとに。ボッコボコでしたよ。
――打ち返しても、打ち返しても、打ち返してくるような。
野田 あのときの川満くんの強さは鮮明に覚えてるんで。パンチの感じ、試合の運び方。アレをどう崩すか、考えながらやるのが楽しいです。(ニコッと笑いながら)今回、一番楽しいですね。
――このシチュエーションに燃える。
野田 負けたやつには絶対にやり返すっていうのがあるんで。プロで3人に負けてるんですけど、ほかの2人もいつかやり返してやろうと思ってるんで(笑い)。
――(WBOアジアパシフィック同級王者の)尾崎優日(大成)選手、山本智哉(横浜光)選手は現役だし(笑い)。
野田 はい(笑い)。強くなることを求めてやってるんで。負けたということは僕より強いということじゃないですか。勝てば、強くなったと証明できるし。川満くんは日本チャンピオンになったので、ここを超えればっていう。
――前回、7月の亀山(大輝=ワタナベ)選手との試合後でしたか。負けたまま終わるのは男じゃない、と。
野田 ずっと父ちゃんから言われてきたんですよ。ケンカで負けても、負けたまま終わるのは男じゃねえ、やり返して来いって。小さいときからすり込まれてきたんで(笑い)。

約3年ぶりのライトフライ級
――あらためて前回の川満戦、自分の状態、相手を含めて、どう振り返りますか。
野田 1戦目、2戦目と1ラウンドで倒してきて、当たれば倒れるって、調子に乗ってたところはありました。3ラウンドぐらいで倒してやるって。全部、ひっくり返されたっすね。
――そのときの気持ちは?
野田 でも、もうやめよう、とかじゃなくて、いい経験だったなって、すぐ切り替えられたんで。とにかく反省でした。
――当時の強さを鮮明に覚えているということですが、今の川満選手をどう見ていますか。
野田 僕とやったときより強くなってますね。あっちもまだ5戦目で、今とは全然、動きが違うし……。まあ、帝拳ジムでは外にスパーリングに行かなかったんですよ。金子ジムに来て、出稽古に行きだして、三迫ジムには結構、行ってたんですよね。
――そうなんですか。川満選手とは?
野田 1回もやってないんですよ。普通にいるんで、普通にしゃべってましたけど(笑い)。金子ジムに来て、2年ぐらいになりますけど、1回も。
――それも含めて、やる運命という感じがしますね。
野田 ほんとに。一発勝負というか、まあ、1回でもやってたら、また違った気持ちがあったかもしれないですけど、僕の体の中に負けたイメージがまだ残ってるんで。その不安を打ち消すために練習してるのもあるし。それで一皮むけると信じてるんで。
――川満選手を超えることは、自分を超えることですよね。
野田 そうですね。5年前は僕のほうが有利と出てましたけど、今回は逆なんで。チャレンジャーですね。
――前回、足りなかったのは、そこかもしれないですね。
野田 そうですね。今回は1ポイント差でもいい、2-1でもいいんで、勝ちに徹します。どんな汚い試合でも、勝てればいいです。チャンピオンになるためじゃなくて、ほんとにリベンジしたいというだけです。
――これまでの試合後に何度か話をさせてもらいましたが、ライトフライ級に近い契約体重のときより、フライ級のほうが圧倒的にパフォーマンスがいいですよね。今回が(2023年3月の山本戦以来)約3年ぶりのライトフライ級になります。そこはどう捉えていますか。
野田 自分の感覚としても動きが全然、変わるんで、フライに変えようと思ってたんですけどね。さすがに挑戦者決定戦、タイトルマッチと2戦はきついとジムに話して。でも、今回は早い段階で川満くんと(王座決定戦が)あるかもよ、と分かったんで、早くから(体重)調整してますし。コンディションをどこまで持っていけるか、そこは自分との勝負、自分次第なんで。ライトフライはラストぐらいの気持ちで、最高の状態に仕上げます。

“95年組”最後の世界チャンピオンに
――ボクシングを始めたのは小学6年生のときですか。
野田 そうですね。田舎で、ボクシングジムもなかったから、1年生から最初は空手を始めて。
――八代市ですよね?
野田 行ったことありますか?
――(2017年2月の)福原辰弥さんの世界戦で、海を挟んで反対側の天草には。
野田 あ、ありましたね。ちょうど反対側っすね。めっちゃ田舎で、空手しかなくて。
――ボクシングをやりたかったけど、ということですか。
野田 父ちゃんが好きで、ずっと見てるんですよ。ビデオで録ってた辰吉(丈一郎)さんの試合とか。別に「やれ」とも言わないんですけど、流れてたら見るじゃないですか。で、僕に言わないで、テレビに向かって言うんですよ。まあ、聞こえるじゃないですか(笑い)。
――お父さんは、なんと?
野田 世界チャンピオンはいいねえ、カッコいいねえ、やっぱ、男はこうじゃなきゃな、みたいな感じで、ずーっと(笑い)。
――そうやって、子どもの頃から見せて、言い聞かせて(笑い)。
野田 そうなんですよ。絶対にやる方向に寄せてたんですよね、あれは(笑い)。だから、自然と自分は世界チャンピオンになるんだな、これで有名になるんだなって、根拠のない自信というか、小っちゃいながらに信じてきたんで。
――で、6年生から。
野田 それぐらいにジムができて、空手をやってた一番上の8歳離れた兄ちゃんが始めたんで、僕も一緒に車に乗せてもらって。遠いんですよ。
――どこまで?
野田 八代です。でも、ひと山、越えるぐらい遠いんで。八代ボクシングジムかな。今はないんですけど。僕の頃は(八代の)秀岳館にもちゃんとしたボクシング部はなくて、ジムで練習して、試合に出てました。
――そうだったんですか。ボクシング部があったのかと。
野田 僕が卒業してからですね。今みたいな立派な練習場ができたのは。
――そこからU-15全国大会で優勝して、高校の大会に出て。今、プロで活躍している熊本市出身の選手とは、また環境が違うわけですね。
野田 ジムもめちゃくちゃ狭かったですからね。
――野田選手は1995年世代で。以前、堤聖也選手に聞いたんですけど、高校時代の初黒星の相手が野田選手だった、と。
野田 そうなんですよ。熊本県総体の決勝で。1年生同士で、確か勝ったほうが30年ぶりぐらいの1年生の熊本チャンピオンで。
――そうだったんですね。
野田 でも、堤、強かったですよ。パンチがめちゃくちゃ硬かったっす。痛いんですよ。まあ、その1回だけで、堤はライトフライに上げて(野田はピン級)。結構、スパーリングはやりましたけど、今までで一番、パンチがあったっすね。
――堤選手に勝って、出場したインターハイの2回戦で井上拓真選手に負けたんですね。
野田 あ、そうです。拓真ともやったな。
――ほかにも桑原拓(大橋)選手、中嶋憂輝(角海老宝石=引退)選手とか、いろいろな選手たちとやり合って。今の状況をどう見ていますか。
野田 まあ、95年組とか言われて、そのへんの名前が、(ユーリ)阿久井(政悟=倉敷守安)とか、坪井(智也=帝拳)も出てきたし、ズラーッと出てきますけど、誰か忘れてんじゃねえのかって。それを分からせてやろうと思ってますけどね。
――それこそ、川満選手とも95年組対決ですよね。
野田 そうなんですよ。まあ、僕は95年組で最後の世界チャンピオンになれれば、と思ってるんで。
――いつかの試合後にも言ってましたね。遅れてきた95年組として、最後に世界チャンピオンになると。
野田 まあ、僕はまだ結果は出してないですけど、最後に全部、持ってってやろうと思ってるんで。あとは自分がやるだけです。頑張って、結果を出していけば、自分のイメージ通りになるって信じてるんで。

親父にベルトを見せたい
――記録を見ると大学3年生以降のリーグ戦、全国大会に名前がなくて。ケガをしたと。
野田 そうですね。3年のリーグ戦前のスパーリングで。相手の腕と重なって、パーンとすごい音がして、手が上がらなくなって。左ヒジの靭帯が切れてました。そこで手術して。
――重傷ですよね。
野田 リハビリをすれば、生活に支障はない、でも、ボクシングはできるかどうか分からない、と言われました。でも、熊本に帰ってもやることないし、大学に行きながら東京でリハビリして、卒業したら帰ろうと。でも、やめる気は一切なかったです。
――ボクシングを?
野田 はい。治ったら、プロでやろうと思ってました。でも、2年経って、卒業する頃になっても痛かったんですけど。で、八代に帰って、いろいろ聞いたら熊本のほうにヒジの専門の先生がいると教えてもらって。車で片道1時間かからないぐらいですけど、毎日、毎日、通い続けて、1年後ぐらいに「もう大丈夫」と。ほんとに痛みがなくなったんで。
――いい先生と出会って。
野田 はい。で、その1週間後には東京に来てました。
――長いリハビリで精神的にも大変だったと思いますが、諦めなかったのは?
野田 いや、小さいときからの自分は世界チャンピオンになるって信じてたっていう、それだけですね。リハビリしてる間も同級生はバーッとプロに行きましたけど、何とも思わなかったです。最後にひっくり返せばいいや、ぐらいで。
――遅れてきた95年組という思いは、そのときから。
野田 そのときからです。走ったり、できる練習はしながら。焦りもなかったです。ずっと世界チャンピオンになるっていうのがあったんで、ひたすら信じてるというか。バカだろ、と言われるかもしれないけど、それでいいかなって。
――ある意味、お父さんに導かれましたね。
野田 導かれたっすね(笑い)。僕の試合、映像は見てますけど、1回も観に来たことないんですよ。「日本チャンピオンになるときと、世界チャンピオンになるときだけ行く」って、それは僕が小学6年生で始めたときから。プロになるときも「タイトルマッチだけは観に行くから」と。
――では、今回、初めて?
野田 初めて来ます。まあ、そういうのでもね、親父は僕がチャンピオンになると信じてるのが伝わってくるんですよ。3回負けてもタイトルマッチしか行かねえって、言い続けたし。
――辰吉さんのビデオから始まって、どんどん、その気にさせられて(笑い)。
野田 うまくやられったっすね(笑い)。だからこそ、親父にベルトを見せたいですね。
――そういえば、2戦前の衣装が辰吉さんをイメージしたロングガウンでしたね。
野田 そうなんですよ(笑い)。あれが初メインで、初のガウンでした。
――初のガウンは原点の辰吉さんで。
野田 はい。最近、ああいうガウンはなかなかないし。
――前回はブルース・リーですか。
野田 あ、分かりました? 僕の周りの人は毎回、どんな衣装か楽しみにしてくれるんで。これも親父の影響で(笑い)、僕も永ちゃん(矢沢永吉)が好きで、コンサートに行くんですよ。最後はいつもの白いスーツなんですけど、最初に登場するときの衣装が毎回違うんですよ。その瞬間も楽しみでワクワクするんで。
――メインイベンターとして、お客さんを楽しませたいという気持ちで。
野田 そうですね。入場からグワーッと盛り上がってほしいんで。今回も変えました(笑い)。
――どんな衣装かは入場の瞬間までのお楽しみ(笑い)。
野田 お楽しみで(笑い)。もちろん、試合でもワクワクさせますよ。
――誰もが激しい試合になると予想する試合だと思います。
野田 僕も思ってます。技術、パンチ、スタミナ、いろいろあるけど、どっちが純粋に勝ちたい気持ちが強いか、そこの勝負になると思うんで、間違いなく面白い試合になります。楽しみにしてもらいたいですね。絶対にやり返します。


