井岡一翔－田中恒成戦について、元チャンピオンのお二人に語り合ってもらった。田中と同じ名古屋の先輩チャンピオンで解説者としても活躍中の飯田覚士さんと、井岡をアマチュア時代から知る現役ボクサー小國以載。理論家の両氏も展望のやりがいがあるこの試合を心待ちにしている。＝ボクシング・ビート1月号より＝

――お二人は試合の展開をどう読みますか？　まず、仕掛けるのは田中という声を多く聞きますが。

小國　ただし「相手は井岡でしょ」という部分がありますね。果たして田中君にそうさせるのかなと考えたりします。意外に井岡が1ラウンドから飛ばしたり。

飯田　そうなんだよね。

小國　田中君が前半飛ばしてくるのは分かってる、そこで性格上、見るのかな?　と。皆井岡が見ると思ってるから。それを読んで、逆に押さえに行くのは、ないこともない。

飯田　俺もね、そこはちょっと行くんじゃないかと。カムバックしてから結構行くようになっているのと、そもそも待ちからのスタートはしんどい。特に序盤でポイントを取られるのってのは……。

小國　嫌ですよね。

飯田　また田中がああいうタイプだからね。

小國　待ちでポイントを取れないですよね。駆け引きしたり、その場で止まってくれる相手なら井岡は行かなくても取れるでしょうけど。田中君は速いテンポで出入りするので。

飯田　捕まえられない、待ちでカウンターも合わせづらいとなると、様子見や待ちの時間はただポイントを取られることになってしまう。

小國　行くことによってチャンスを見出すかもしれませんよね。田中君も好戦的になるでしょうし、そうなると雑になってくるから。井岡はそこらへんは丁寧ですからね。

飯田　俺は5割以上の確率で井岡は待たないと思う。そしてそのほうがいいと思う。見るにしても、せいぜい本当に最初の最初だけ。スピード感や距離感をちょっと把握するぐらいで、昔の待ちのスタイルはやらないほうがいいと思う。

小國　俺もそう思います。田中君は脚も使いますから、いつも以上の追い上げをする必要がありますね。

飯田　うん、でもま、今回ガチで勝敗を予想できる？

小國　いやーっ、ただ、判定なら田中、KOなら井岡かなと俺は思うんですよ。

飯田　それは皆と逆だね。

小國　田中君は木村翔選手との試合を見ても、気の強さが出るというのか、雑になるところがあります。井岡は行くけど、正確に仕留めに行く。たとえば田中君が倒そうと思って行ったところにパンチが入れば分からないかなと。田中君も結構倒れますから。逆に井岡が出遅れると、田中君がそのまま逃げ切りかなと僕は思ってるんですけど。

飯田　もうね、今回こそめちゃくちゃ面白い。ボクシングファン皆に勝敗予想してほしいぐらい。いっぱい言い合って、いろんな人の意見を聞いて、もう盛りだくさんの情報とわくわく感を持って観てほしい。これほど勝敗予想がしづらい試合も最近はないよ。

小國　皆、予想バラバラですよね。また、井岡が戦い方が変わったことが試合を面白くさせてますね。以前のボクシングならちょっとしんどいと思うんですが。

飯田　今は「行く」ということを覚えて腹が据わってきた。全然変わったよね。

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