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今週末カネロ登場! プラントとのS・ミドル級4団体統一戦を展望する

2021年11月1日 12時21分

 サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)がいよいよS・ミドル級4団体統一をかけたリングに立つ。6日(日本時間7日)ラスベガスのMGMグランドで、カレブ・プラント(アメリカ)と“最後の”統一戦。WBA、WBCそしてWBOと順に獲ってきたカネロにとって、プラントの持つIBF王座が最後のピース。大方の予想はもちろんカネロだが、プラントにしても勝って歴史に名を刻むチャンスだ。《ボクシング・ビート11月号より》

 カネロのキャリアを振り返ると“つくられたスター”の要素も否定はできない。対戦相手のセレクトやゴロフキンとの2戦に代表されるスコアカードの有利性だ。それでも現在のボクシング界が彼を中心に回っているのはたしかだ。

 ただしカネロは努力家である。ミドル級、S・ミドル級からL・ヘビー級まで進出し、再びS・ミドル級を主戦場に移して一撃のパワーの威力を倍増させている。

「いまカネロは何でもできる。インサイドでもアウトサイドの攻防でも苦にしない。ディフェンスが非常に堅くカウンターパンチに秀でている。168から175(S・ミドル級からL・ヘビー級)で彼に勝てる男は見当たらない」。ESPNの解説を担当する元2階級制覇王者ティモシー・ブラッドリー氏が絶賛している。

 今回のプラント戦、ざっくりと言えば、完ぺきに近づいている男vsテクニシャンと表現できるだろう。自ずから前者が有利となるが、プラントがただのテクニシャンでないことはアップセットの可能性をはらむ。もちろん「若干の」という言葉を添えなければならないが……。

 これまで両者がリングで達成したものには大きな差がある。勝負はそれだけで決するものではないが、プロ60戦目となるカネロと22戦目のプラントではキャリアの厚みが違う。プラントがカネロを攻略すればこれは大事件だ。

 カネロが最近対戦したカラム・スミス、ビリー・ジョー・サンダースよりもプラントが優れている点は、スピードと自己ペースに持ち込むのが上手だということではないだろうか。堅実な戦法ながら実にリラックスして戦っている印象を与える。

 彼の長所がそのまま最高峰のカネロに通用するとは思えないが、個々の戦力は上質なものを装備している。カネロを悩ませると推測されるのはディフェンス能力だ。ブロッキング、頭と腰の動き、ステップワークと、唸らせるものを持っている。ある専門家は「プラントのディフェンスは(昆虫の)複眼を持っているようだ」と高く評価する。KO率は高くないが、パワーもトップクラスで通用するものを有している。

 番狂わせを起こすにはプラスアルファが不可欠だろう。あるいはカネロを苛立たせるような作戦も必要になってくる。

 9月22日、ロサンゼルスで行われた発表会見で両者が手を出し合い火花が散ったのはプラントの策略だったかもしれない。そこで自身が右目尻をカットするのは想像していなかっただろうが、気持ちで負けない姿勢を見せつけた。まだマックス(上限)を披露していない選手がキャリア最強の相手と戦って大化けするケースは少なくない。

 しかし「比類なきチャンピオン」を目指してきたカネロのモチベーションはただならぬものがある。それはトップスターという地位どうのこうのではなく、一ボクサーとして偉業への執着を感じさせ、チャンスはもう目の前なのである。会見の乱闘はカネロの闘争心に火を点けたのもまた事実なのである。

 勝負のキーポイントはカネロの“カット・オフ・ザ・リング”(相手の逃げ道を断つ戦法)に対し、プラントがどう対応するかだろう。カネロのプレスの巧さと相手にロープを背負わせた時(同時に自身がロープを背にした時も)の攻撃は最近の試合で実証済み。その局面でディフェンスが定評のIBF王者が真価を発揮する可能性は――。

 そこでプラントが武器の一つであるカウンターを浴びせることができれば展開は面白くなる。カネロのオフェンス面の充実ぶりから、相当困難なミッションではある。おそらく脚を使って対応することになるだろう。

 そうなるとプラントは押され、見栄えが悪くなる。“スターパワー”という言葉もあるが、ポイントはカネロに傾くだろう。劣勢になってプラントが盛り返す力がどれだけあるのかは、未知の部分である。

「カレブはグッドファイターでスキルが半端じゃないがカネロの能力には及ばない。いま好勝負が期待できるのは、大柄で攻撃力があるデビッド・ベナビデス(前WBC王者)だ」。ブラッドリー氏の言う通りなのか!? カネロは56勝38KO1敗2分。プラントは21勝12KO無敗。Photo from Amanda Westcott/SHOWTIME

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