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WBO-AP・S・フライ級王座の初防衛戦に臨む川浦龍生 寺地拳四朗とのスパーでメンタル強化も

2025年2月4日 11時23分

 2月11日に東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のセミファイナルはWBOアジアパシフィック・S・フライ級タイトルマッチ。王者の川浦龍生(かわうら・りゅうせい、三迫/30歳、12勝8KO2敗)が田井宜広(RST/27歳、8勝8KO1敗)を挑戦者に迎え、初防衛戦に臨む。

初防衛戦に王者の証明をかける川浦

 川浦は昨年8月、当時の王者・大橋哲朗(真正)との王座戴冠戦で劣勢を終盤にひっくり返す逆転の11回TKO勝ち。テクニックとスピードに定評のあるサウスポーは、課題にしてきたメンタル面での成長を示し、2度目の挑戦でベルトをつかんだ。

 徳島市立高時代は1年時のインターハイと選抜、主将も務めた中央大時代は1年時の国体で、いずれも3位が最高成績。それぞれ寺地拳四朗(BMB)、井上尚弥(大橋)、谷口将隆(ワタナベ)とプロで世界王者となる面々に決勝進出を阻まれた。

 プロでは2023年6月のタイトル初挑戦で4回TKO負け。現在も日本王座に君臨する高山涼深(ワタナベ)の強打と勢いに飲み込まれた。強い気持ちを示してのボクシングキャリアを通じて初のタイトルだが、「自信にはなった」と話す口調はどこまでも控えめである。

 川浦の世界ランクはWBO5位。昨年1月に韓国でWBOオリエンタル王座(JBC非公認)を獲得した田井は同10位にランクされ、世界ランカー対決になる。だが、まだランクに見合った実績は残していないと足もとを見つめる川浦は「1戦1戦、実力を証明していきたい」と語り、まずは「防衛してこそ、チャンピオン」と固い決意をにじませる。※最新でWBA3位にランクイン

 挑戦者の特徴はスイッチ。「惑わされないように」と左構え、右構えの両方とスパーリングを重ね、世界2階級制覇王者の寺地とも手合わせ。丸山有二トレーナーと抜かりなく準備してきた。(取材/構成 船橋真二郎)

■チャンピオンならではのプレッシャー
――念願のチャンピオンになって、気持ちの変化はありますか。
川浦 そうですね。追う立場から追われる立場になったので。これまでとは違ったプレッシャーを感じてます。

――追われる立場を実感しますか。
川浦 ここから僕のベルトと世界ランキングをみんなが狙ってくるというか。僕が強いチャンピオンだったら、誰もやりたがらないと思うんですけど。まあ、世界ランキングと言っても、もともと中川(健太=三迫)さんが持ってたのが、大橋選手に移って、僕に移ってきただけなんで。もっと実績を積んでいきたいな、と思ってるんですけどね。

――防衛を重ねる中で強さを見せたいですね。
川浦 そうですね。勝てるんじゃないか、ぐらいに思われてると思うんで。川浦とはやりたくない、と思わせるぐらいのパフォーマンスというか、強さを見せていきたいというのはあります。

――そうなったときが次の段階に行けるときですよね。今の世界ランキングはWBO5位です。
川浦 いや、恐れ多いですよね(苦笑)。上の人は元世界チャンピオンとか、そんな人ばっかりなので。※1位がローマン・ゴンサレス、2位が田中恒成、3位がフランシスコ・ロドリゲスJr、4位がアンドリュー・マロニー

――ここから世界ランカーに相応しい力を見せていきたいですね。
川浦 はい。1戦1戦、実力を証明していきたいです。

念願のタイトルを手にした大橋戦

■逆転勝利の戴冠戦
――前回の試合、途中で流れを持っていかれた中で、そのままズルズルいかずに踏ん張って、逆転できたことがタイトル以上に大きかったと思うんですけど。
川浦 そこは一番、大きかったですね。これまでの僕の負けパターンだったと思うんですけど、そこで踏ん張って、盛り返せたところは、成長できたのか分からないですけど、よかったところではありました。

――スタートはよくて、4回に大橋選手が切り替えて、前に攻めてきたところから流れが変わったと思うんですけど、心境としてはどのような感じでしたか。
川浦 どうにかしようと思ってたんですけど、どうにもできないラウンドが続いて、後半まで来ちゃったんで。正直、このパターンでまた負けるのかって、頭をよぎったところもあったし、自分に対する苛立ちもありました。

――確かにロープを背負わされる場面が続きましたけど、その中でも要所要所にカウンターを返して、決してやられっぱなしではなかったと思いますけど。
川浦 あ、そうですね。攻められながらも、(大橋が)あれだけ動いてたら、疲れるだろうなと思ったし、少しでも当てていけば、ちょっとずつダメージも溜まってくると思ったんで。どこかで落ちてくるかな、とは思ってました。

――試合後に丸山トレーナーに聞いたら、劣勢の展開が続いていたときでも、コーナーに戻ってきた川浦選手の目は生きていた、諦めていない目をしていて、そこが今までとは違ったと。
川浦 確かに諦めはしなかったです。諦めたら何も変わらないし、今までと一緒なんで。あとは応援してくれる方の声援もあったし、(三迫貴志)会長を含め、セコンド全員、丸山さん、加藤(健太)さん、横井(龍一)さん、全員でカツを入れ続けてくださったので。負けられない、これで終わりたくない、と踏ん張れたところはありました。

――9回あたりで流れが。
川浦 はい。9ラウンドは相手が落ちてきたのか、楽になったんですよ。そこでまた頑張れました。9、10、11、12全部取ったら、前半のポイントの分で逆転できるんじゃないかなって、自分の中で思えたので。

――で、11回でストップに。
川浦 正直、余裕はなくて。必死でしたけどね。

――これまでも何度も話して、申し訳ないんですけど、どうしても思い出すのが大阪での久髙寛之選手との挑戦者決定戦で。快勝ペースで試合を進めながら、相手が前に出てきたところから一気に流れが変わって、押し切られた。
川浦 あ、そうですね(苦笑)。

――そういう自分を乗り越えて、アマチュア時代から獲れなかったタイトルを獲ったわけですが。
川浦 そうですね。ここまでタイトルを獲れずに来て、やっと30歳で獲れたので。続けてきてよかったな、と思いますし。そうですね……。表現するのが難しいんですけど、自信にはなりました。

――歯切れが悪いのは、まだまだということですか。
川浦 そうですね。やっぱり、獲っただけで満足するわけにはいかないですし。せっかく会長、久保(明子)マネジャーがチャンスをつくってくださって、あれだけ苦労して獲ったベルトですし、もともと中川さんが持ってたベルトでもあるんで。すぐ手放すわけにはいかないんで。防衛してこそ、チャンピオンという気持ちが強いですね。

丸山トレーナーとのミット打ち

■スイッチを駆使する挑戦者対策
――挑戦者の田井選手に対しては、どういうイメージを持っていますか。
川浦 動画も少し見ましたけど、右にも、左にも、頻繁にスイッチするんで、惑わされないように。それに乱されて、自分が崩れないようにしていければな、と思ってるんですけど。

――落ち着いて対応できるように。
川浦 そうですね。まあ、スイッチなんで、普通なら打ってこれないところからでもパンチを打ってくると思うんで。気を抜いて、もらわないように。

――いつの間にかスタンスが変わっていて、思いがけない角度、タイミングでパンチが飛んでくるかもしれないと。
川浦 そうです、そうです。そこは気をつけないといけないですね。あとは勝った試合は全部KOですけど、相手がほとんど外国人で、力を測りづらいところがあるので。自分の中では、変則で、やりづらくて、パンチ力がある、と想定してやってます。

――特に直近の試合は早いラウンドで終わってますからね(3連続初回勝ち)。
川浦 そうなんですよね。なんで、あとは実際に向かい合ってみて、自分がどう感じるか、ですね。

――スパーリングはどのように?
川浦 まあ、スパーリングは、右構えとやったり、左構えとやったり、両方とやってます。

――最近はサウスポーが相手のことが多かったですよね。
川浦 そうですね。去年の2月に角海老の廣本(彩刀)くんとやった以外は、ずっとサウスポーで、左に慣れ過ぎちゃったところがあるんで。右に慣らしていくというか。

――右構えと1回、挟んでいるとはいえ、感覚が変わるものですか。
川浦 変わりますね。最初は距離の違和感みたいなのがあるんで、右を多めにやってます。で、一昨日……水曜日ですかね(取材は土曜日)、拳四朗さんとやっていただいたんで。

――拳四朗選手とスパーリングをするのは久しぶりですか。
川浦 久しぶりですね。でも、たまに精神を鍛えるために、というか(笑い)。

――精神を鍛えるため?
川浦 はい。丸山さんが、精神を鍛えるために入れといたから、ということがあるんで。去年も何回かやってもらってます。

■世界2階級制覇王者とのスパーリング
――拳四朗選手とは、その水曜日が今回は初めてですか。
川浦 初めてです。で、また来週も。

――この前は何ラウンドだったんですか。
川浦 6ラウンドですね。

――どうでしたか。
川浦 やっぱり、ハイペースで、手数が多いし、打ち分けも巧いんで。少しでも油断すると腹を効かされて、で、下に意識が向くと今度は上にくるんで。

――気が抜けない。
川浦 気が抜けないですね。ずっと集中してないとやられますし、緊張感がすごくあるんで。いい練習をさせてもらってるな、と思います。

――同じ6ラウンドでも濃密なんですね。
川浦 そうですね。その日の夜は寝れないんですよ。疲れてるはずなんですけど、まだアドレナリンが出てるというか、目が冴えてしまって。

――ずっと余韻が残っているような。
川浦 そうですね。打たれないように気をつけないとダメージも溜まるんで、ずっと集中してる状態が続いてるのか。

――階級は下ですが、やはりパンチはありますか。
川浦 ありますね。パンチって、いろいろあると思うんですけど、ドーンと重いというより痛いというか、もらうと嫌な感じですね。点を突いてくるような。で、ボディー打ちも巧いですからね。

――ボディーもドスンというよりはピンポイントで突かれるような感覚。
川浦 そういう感じですね。

――想像するだけでも嫌ですね。
川浦 嫌ですね(苦笑)。でも、強い人とやって、そういう緊張感の中でやることで、もっと自分も成長できると思うんで。

――それこそ、世界ランカーに相応しい力を見せるためにも。
川浦 せっかくやらせてもらってる以上は、吸収できるところは吸収して。そういう上下の打ち分けだったり、フェイントだったりを自分で受けてるので、逆に自分も使えるようになれればいいと思いますし。

――前回はメンタル面の課題を乗り越えて、逆転勝ちで成長を見せましたけど、チャンピオンとして、そもそも逆転する必要がないぐらいの内容で勝つところを見せないといけないですよね。
川浦 そうですね。前回も(いい流れの)3ラウンドぐらいで仕留められれば、4ラウンド以降の姿を見せることもなかったわけなんで。今回、そういう姿を見せずに圧倒できたらベストですけどね。

――それが今回のテーマになりますか。
川浦 まあ、相手もタイトルマッチで気合いを入れてくるでしょうし、あの展開に持ち込もうとしてくると思うんで……。

――覚悟しつつ、ですね。
川浦 そうですね。覚悟しつつ。試合でしかアピールできるところはないんで、しっかり試合で見せたいと思います。

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