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いま注目の日本S・ライト級王者・藤田炎村に聞く 「2024年は革命を起こしたい」あすV2戦

2023年12月11日 11時20分

 12月12日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」で、進境著しい強打の日本S・ライト級王者、藤田炎村(三迫/28歳、11勝9KO1敗)が2度目の防衛戦を行う。今年4月の王座決定戦で1位のアオキクリスチャーノ(角海老宝石)を右フック一撃で沈め、2回KO勝ちで戴冠を果たすと、8月には指名挑戦者の大野俊人(石川・立川)を寄せ付けず、痛烈に倒した末、3回でストップ。特に強打者対決となった前回の初防衛戦ではスキのない試合運びを見せ、成長をアピールした。

 キャリア13年、37歳でタイトル初挑戦の同級6位・関根翔馬(ワタナベ/6勝2KO7敗2分)に対し、テーマは「シンプルに圧倒すること」。王者はきっぱりと言い切る。「すべての面で上」と椎野大輝トレーナーも自信を示す。その上で「初のタイトルで気持ちも入ってくるだろうし、(関根は)不器用な選手だからこそ、こうと決めたことを徹底してやってくると思うので。それに巻き込まれないようにしないといけない」と気を引き締める。

 すでに来春のチャンピオン・カーニバルで10月7日の最強挑戦者決定戦で勝利した李健太(帝拳)が勝者を待ち受ける。アマチュアで日本記録となる62連勝など大きな実績を残し、プロでも無敗の長身サウスポーとの一戦が「高いモチベーションになる」と藤田は言う。

「自分に革命を起こしたい」という2024年。次なるステージにも目を向け、アメリカ合宿も視野に入れるが「先を見てるわけじゃない」と藤田は強調する。すべて勝つことでしか手に入らない未来だからこそ、「関根選手に負けるわけにはいかないし、いいところを出させたくないから、しっかり対策も考えるし、頑張れる」。勢いに乗る日本王者に聞いた。《取材/構成 船橋真二郎》

■「ベルトに強くしてもらっている」

――2023年は3試合やることになります。

藤田 いや、かなりいいペースでやらせてもらってますね。

――すべてタイトルマッチということで、成長という意味でも大きいのでは?

藤田 ほんとにそうですね。僕は試合のたびに成長してる実感があるんですけど、学びがめちゃくちゃ多いんですよ。特に前回はそれが大きかったです。

――前にうかがった話で、普段からチャンピオンとしての責任、追われる者の危機感を常に感じていると。そういう意識で日々を過ごしてきたことも、成長につながったところもあるのでは?

藤田 うん。ありますね。試合だけ勝ってればいいわけじゃなくて、練習の一つひとつ、もちろんスパーリングもそうですし、ちゃんと自分が日本一だよ、ということを普段から証明し続けなきゃいけないんで。それがチャンピオンの責任だと思ってますし、成長せざるを得ないというか。証明できたかどうかは別として、その意識でやってます。練習のたびに。

――というのも、地位が人をつくるじゃないけど、自信が感じられたんですよ。

藤田 あ、防衛戦ですか? そうですね。ベルトに強くしてもらってるな、というのは自分でも感じてますね。でも、正直に言うと前回の試合は今までで一番緊張したんですよ。

――そうなんですか。

藤田 はい。入場のとき、「30分後に自分の人生の明暗が分かれてるんだな」と考えたら、急に歩き方も忘れるぐらい緊張してきちゃって。普段だと入場曲が流れたら、どんなに緊張しててもピリッと変わるはずなんですけど、自分でも分かるぐらい地に足がついてなくて。怖かったですね。その状態でリングに上がるのが。最後は、もう時間切れっていう感じでした。

――いつもなら切り替わるところが。

藤田 試合前の一番いい精神状態(の感覚)が自分の中にあるんですけど、そこを大きく外れた状態でリングに上がっちゃいました。人生で初めてです。あんな思いで上がったのは。

――もしかしたら、それもまた最後の最後に来たチャンピオンならではの戦いだったのかもしれないですね。

藤田 ああ、それはあると思いますね。結局、ゴングが鳴る瞬間まで、変に冷静というか、「あ、こうやって初防衛って失敗するんだろうな」とか、「鬼門と言われてるのはこういうことなんだな」って、自分で考えちゃうぐらい集中できてなかったし、試合に入り込めてなかったんで。

――あの試合を見る限り、そうは感じ取れなかったですけどね(笑い)。

藤田 めっちゃ言われます(笑い)。「あそこまで落ち着いた入場は初めて」とか。「冷静だったね」とか。ポジティブな感想が多かったんですけど、僕は表に出さないので。ただ、不思議とゴングが鳴って、相手が来たら、ざわざわしてたものが一気に地に着く感じになりました。

――ゴングが鳴る瞬間まで、ということだったんですね。

藤田 はい。あれは、もう体験したくないな、と思いつつも、僕が試合前に「フタを開けてみたら差があったね、みたいな結果になる」と言ってたとおりになったじゃないですか。だから、コンディションうんぬんでジタバタするのはやめようと思いました。もちろん影響を受ける部分はあると思いますけど、自分がやってきたこと、培ってきた強さはあって、埋まらない差ってあるんで。今回の防衛戦もそうですけど、そこは自信を持っていいと思いました。

■確実に圧倒することが大事

――今回の防衛戦も「埋まらない差がある」「自信を持っていい」という言葉がありましたが、挑戦者をどう見ていますか。

藤田 まあ、正直、まったく見てなかったというか、予想外の相手でしたね。ただ、試合が組まれるということは、ジム側に何かしらの意図があると思うんで、それに対して100点満点で答えるだけです。そう割り切ってますね。

――プロとして、ジムに与えられた課題をしっかりクリアしないといけないと。

藤田 まさにそうです。会長なり、トレーナーなりの、この試合を超えて、こうなってほしいみたいな意図が必ずあると思うんで。それに100点満点で答えることで、藤田のことは信頼していいとジムに認められてこそ、本物だと思うんで。ただ、ファンの立場で、喜ばれるカードか、そうじゃないかということは、すごく考えちゃいますけど。

――そういう諸々を踏まえて、藤田選手の中で今回の防衛戦のテーマは明確になっていますか。

藤田 シンプルに圧倒することですよね。「そりゃそうだよね」っていう結果になるのが僕の中の理想というか。「1位にああいう倒し方をしたんだから、そりゃそうなるでしょ」ぐらいの圧倒的な差を見せつけて、合格なんじゃないかなって。ただ、僕がいつも言うように試合は生ものなんで、人の予想を簡単に裏切るじゃないですか。フューリーとガヌーもそうだし(笑い)。そこを、しっかり、明確に、確実に圧倒することが大事だと思ってますけど。

――埋まらない差があるからと緩んではいけない。

藤田 ダメだと思います。でも、「油断しないように」と言い聞かせて、油断しないほど、人間って単純じゃないんで。どこかで甘えたりとか、緩んだりが絶対に出てくるんですよ。そうなったときの対処も考えておかないといけないと思います。多分、ほとんどの選手がそこをサボると思うんですけど。だから、アップセットが起きる。

――前に話してくれましたが、試合前にいろいろなパターンを想定して試合に臨むと。そのうちのひとつのパターンになる。

藤田 そうですね。パターンの1個になるというのは、今、話しながらですけど、思いました(笑い)。

コンビを組む椎野トレーナー

目の前の相手、状況に応じた最適解

――前々回の王座決定戦は、想定のパターン内ではあったけど、赤点ギリギリと。初防衛戦の自己評価は?

藤田 合格点だと思います。

――満足はしている?

藤田 いや、まだやりたいことはあって、課題はある一方で、安定して相手を倒すことができたのはよかったと思います。パンチをもらわないことが点数の一番のポイントなので。そういう意味で合格です。

――前回の試合で目を引いたジャブが象徴していると思うんですけど、安定感のある試合、技術的なところを見せられた。

藤田 まさにそうで。東洋大学の選手とスパーリングをしたときにヒントをもらって。ものすごく強い選手なんですけど、当たり前をサボらないんですよ。打ったら、しっかりよける、ガードをもとの位置に戻すとか、そういうことをサボらないでやってるなと感じて。アマチュアは3ラウンドしかない緊張感の中でやってるんで、見ていて学びが多いんですよ。プロと競技性は違いますけど、その強さを取り入れられたら、と思って。そこを試合で試しました。

――それがジャブからしっかり試合をつくることだった。

藤田 「今日は間違いなく倒せるな」って、1ラウンドで分かったんですよ。だったら、すぐ終わらせるんじゃなくて、相手は何がしたいか、何をされたくないかということを、いつも以上に冷静に見て、自分が持ってる武器の中から選んでやりました。その結論がジャブでした。大野選手もジャブが痛かったと言ってたので、自分の見立てたとおりだったかなと思います。それは大野選手だからジャブだっただけで、次の選手だったら、また別の武器になるし。

――相手に応じた最適解を出す。

藤田 あ、そうですね。そういうイメージでやりました。

――左手を痛めたのは試合中のジャブが原因でしたか?

藤田 指ですか? 試合前です。1週間前に折れて、靭帯も切れちゃって。

――そんな状態で影響は?

藤田 まあ、痛かったですけど。別に。右手もあるんで(笑い)。

――おお(笑い)。

藤田 僕はそういう感じです(笑い)。いい意味でバカになれるし、割り切ることができるんで。

――話を聞いていると、倒されたときはこうする、と事前に想定しているのと同じで、左手が使えないなら右手があるとか。置かれた状況、相手、目の前の条件の中でできること、最適解を探すということですね。

藤田 ああ、そうかもしれないです。

――勝つというゴールに対して、じゃ、どうやって勝つのか、ということを、その場、その場で瞬時に判断する。

藤田 そうですね。大げさかもしれないけど、戦場ですよね。ムダな選択肢は取れないじゃないですか。

――使えない武器にずっと引きずられていては、命取りになる。

藤田 はい。この武器が効かないなら、次はこれ、次はこれ、とパッ、パッと捨てて。ボクシングのいいところは弾切れがないんで(笑い)。

――言葉で言うほど、簡単ではないと思いますが。

藤田 でも、ほんとに僕はそういう感じかもしれないです。日常生活で何かトラブルが起きても判断は早いほうですね。じゃ、こうしようって。

椎野トレーナーとミット打ち

■勝ってこそ、つかめる未来

――先の話になりますが、李健太選手が挑戦権を獲った試合を会場で見ていたと思います。次にやる挑戦者として現実的に見ている相手だと思いますが。

藤田 そうですね。次につながる相手ですよね。

――アマチュア時代、特に高校時代は6冠、62連勝と実績がズバ抜けていて、長身のサウスポーで誰もがやりにくい相手だと思います。挑戦者決定戦で判定勝ちしたアオキ選手とは藤田選手も戦っているので、イメージしやすいところもあったと思いますが。

藤田 アオキ選手が若干有利かなって、僕は思ってたんで。シンプルに想像を超えてきたなと思いました。

――アオキ選手は相手も燃えてくれたほうが自分も生きると思うんですけど、クールに貫き通した印象でした。

藤田 いや、そうですね。そういう意味でも、あの試合は100%じゃなくて、もっとできるし、もっと強い選手だと思います。あれを崩すことを角海老陣営も考えていて、それでも崩れないのは、外から見てる以上の強さがあると思うし、そう考えて、あの試合を見たら、極めてレベルが高い選手だな、と。対峙して、「うわっ」と思うことが絶対にあると、見たときに想像しました。

――自分を証明するにも、もう一段、強くなるという意味でも、うってつけの相手ということでいいですか。

藤田 うん。最高ですよね。さすがにゴンテ選手を僕が超えたら、今の日本チャンピオンの中で、頭ひとつ抜けた評価を得られると思いますし、そういう挑戦者がいるのは恵まれてるなと思います。

――勝手なイメージなんですけど、藤田選手は短期目標、長期目標というか、目の前の目標だけじゃなくて、その先の大きなビジョンを具体的に持てるものは持っていると思うんですけど。

藤田 ありますね。

――その先を今、どう見ていますか。

藤田 まあ、僕は明確に見える外側にある先のことは見ないようにする性格なので、難しいですけど。ギリギリ見えるのは世界ランカーじゃないですかね。

――今年、ジムの先輩の吉野(修一郎)選手がシャクール・スティーブンソン(米)と戦いましたが、さらに先を目指すなら、あの差を中量級の日本人選手は見ないといけないと思います。

藤田 いや、あれは僕たちが見なきゃいけない現実だと思うし、その意識を持てるか持てないかが差になると思います。でも、それって想像じゃ無理なんですよ。だから実際に現地に試合を見に行くか、体験するしかないんで、僕は来年、アメリカ合宿に行って、自分と世界の距離を体感したいと思ってます。

――現地に吉野選手のシャクール戦を見に行ったり、アメリカ合宿に行ったり、まさに今、同じジムの渡来(美響)選手がやっていることですね。

藤田 あ、そうですね。いや、あいつにはいつも一歩先を行かれるんですよ。生意気なやつですよね(笑い)。

――身近に行動を起こした選手がいるのはいいことですよね。

藤田 いや、いい嗅覚だと思いますし、本気で世界を獲ろうとしてるやつの行動って、絶対にああなるんですよ。それを25歳の彼がやってるんですよ。僕は今年(12月26日)で29歳じゃないですか。焦らないといけないんですよ。だから、2024年は自分に革命を起こしたいな、と思って。

――なおさら、早く行動に移さないといけない、となりますよね。

藤田 いい刺激になりますね。渡来の考え方、意識の高さを見て、学ぶことも多いし、彼がいるだけでも、このジムにいる価値があると思います。

――以前、自分がチャンピオンになって、スパーリングで殺しに来るぐらいの気迫で来るのは渡来選手だけと。

藤田 あいつはそうです。ほんとに生意気なんで(笑い)。

――でも、スパーリングだろうとチャンピオンに挑む姿勢として、正しいですよね。

藤田 正しいですね。とにかく筋が通ってるんですよ。彼のやってることは。そう来るなら、僕も殺すつもりで行きますし、それを分かって、やってるはずなんで。

――チャンピオンとしても緊張感をもってやれるし、そう来ることを向こうも求めていて。だから、お互いに強くなれる。

藤田 そうです。でも、意外と多いんですよ。自分なんて、と遠慮する選手が。渡来は違うっすね。「俺のほうが上だよ」って態度で来るんで(笑い)。

――生意気に(笑い)。

藤田 はい(笑い)。でも、そう本気で思って来るんで。だったら、この部分なら、お前より上だよって。まあ、やり合いですよね。彼とのスパーリングは。一番試合と近いと思います。

――渡来選手もそうですが、アメリカに行って、世界との距離を確かめることで、ここから自分がどうするか、という新たなスタートになる。

藤田 いや、そうですよね。ほんとに。いいんですよ。どれだけ遠かろうが。それを持ち帰ってくることが大事で、現実を見ないと始まらないんで。

――2019年の全日本新人王で負けたとき、2023年には日本チャンピオンになると決めたと。そこを見て、どう到達するかを考えてやってきて、達成したのと同じことで。今度はさらに上を見て。

藤田 まあ、その現実に誰よりも焦ると思いますけど、そこを見ないことには前に進めないんで。

――自分が誇れるのは成長スピードと言っていましたよね。

藤田 そうですね。デビューして5年ですか。当時は5年でここまで来るとは思ってなかったんで。冷静に考えて、自分の成長率に期待してもいいなって、はっきり思えるんで。

――次の防衛戦、その未来につなげるためにも圧倒的な内容を見せないといけないと。

藤田 はい。でも、先を見てるわけじゃないんですよ。今回、僕が勝って、得られるのは評価じゃないんです。どんなに圧勝しても「まあ、そうだよね」で終わると思うんで。得られるものはファイトマネー(笑い)、やっぱり藤田の試合は面白いと再認識してもらえること。で、一番は李健太選手との試合が正式決定すること。それが高いモチベーションになるんです。

――勝ってこそ、つかめるものとして。

藤田 はい。だから、関根選手に負けるわけにはいかないし、いいところを出させたくないから、しっかり対策も考えるし、頑張れるっていう。別に先を見てるわけじゃないんです。

――では、「やっぱり藤田の試合は面白い」という意味では、見てくれる方にどういう試合を?

藤田 まあ、みなさんが僕の試合に期待することって、やっぱり攻撃力だと思うし、KOだと思うんですよ。そこはブレないです。応える自信はありますし、エキサイティングなシーンを届けたいと思います。

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