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愛妻とともに目指す世界王者 飯村樹輝弥のストーリー ビート1月号より

2023年12月17日 15時52分

 アマチュア時代に4度試合をした永田丈晶に競り勝ってプロ5戦目で日本王座に就いた飯村樹輝弥。新妻の真成美夫人が試合中にサブセコンドを務めるなど、海外でも珍しい夫婦二人三脚である。《文:船橋真二郎/ボクシング・ビート1月号より》

 1年前の年の暮れ。別の取材で訪れていた角海老宝石ジムに、歯を食いしばって汗を流す飯村の姿があった。力を込めてサンドバッグを叩きながら、時折、しかめっ面をして左の脇腹を押さえる。それでも、またファイティングポーズを取り直しては右、左とパンチを打ち込むことをやめなかった。

 2ヵ月前、肋骨の骨折を押して臨んだプロ4戦目でフィリピンのエスネス・ドミンゴの強打の前に6回TKO負け。3度倒されて、なお立ち向かい、勝利への執念を見せたが、レフェリーに止められ、初黒星を喫していた。

 「やっぱりボクシングが好きで、楽しいんで、毎日やりたいんですよ」と白い歯を見せたかと思えば、「みんなに差を広げられちゃうんで、休んでなんかいられないです」と端正な顔を引き締めた。

 どちらも心からの言葉だったのだと思う。「焦らず、無理はしないで。完治を最優先に」と返すと「またケガをしたら本末転倒なので我慢して、でも、妥協はしないでやります」。きっぱりと言った。そして「自分の実力はあんなもんじゃないんで」と悔しさをにじませながら、決然と言葉をつないだ。

 「あの負けをいい経験じゃなく、 自分の“財産”にします」

 年が明け、半年後の7月1日。願ってもない再起の舞台は整った。3ヵ月前の王座決定戦出場を上位ランカー陣が軒並み回避していたことで、当時日本6位だった飯村に指名挑戦権が与えられた。

 「ぬるい復帰戦をやるつもりはなかったんで、運よく自分に光が射してくれたと思いました」..

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