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V2戦に臨む日本L・フライ級王者の川満俊輝 「目の前の試合に集中して、一生懸命やるだけ」

2024年12月3日 11時03分

 10日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインは日本L・フライ級タイトルマッチ。王者の川満俊輝(三迫/29歳、10勝6KO1敗1分)が同級6位の大橋波月(おおはし・なつ、湘南龍拳/26歳、8勝6KO3敗1分)を挑戦者に迎え、2度目の防衛戦に臨む。

 川満は昨年12月、神戸で当時の王者・大内淳雅(姫路木下)を2回TKOで下して王座を奪取。2021年7月のWBOアジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦で、のちにIBF世界ミニマム級王者となる重岡銀次朗(ワタナベ)に痛烈な2回TKOで敗れて以来、2度目のタイトルアタックを実らせ、感涙にむせんだ。

 今年5月には1位挑戦者の安藤教祐(KG大和)に6回TKO勝ち。3年前に初回TKOで退けたことのある安藤を返り討ちにし、初防衛戦もクリアした。だが、「自分は下から上がってきた人間。チャンピオンという感覚はない」と川満は言う。「ただ、強くなりたい」。この1年、王者になる前と変わらない姿勢で練習に打ち込んできたという。

 大橋戦に勝利すれば、来春のチャンピオン・カーニバルで8戦全勝6KOのホープ・高見亨介(帝拳)と対戦することになる。世界4団体でランク入りする高見に対し、川満もWBC9位、WBO13位、IBF14位の世界ランカー。どちらが世界に近づくか、という大一番に進むことになるが、「自分はいつも通り、目の前の試合に集中して、一生懸命やるだけ」と実直に語る。

 大橋は昨夏、4年3ヵ月ぶりにカムバック。今年4月、復帰3戦目で日本ランク入りしたばかり。王者優位という見方も「ランキングに入る選手は強いので。絶対に油断はできない」と意に介さない。ともに攻撃型で熱戦必至、KO決着濃厚の顔合わせ。「大橋選手はパンチがある。何があるか分からないので。どれだけ自分の(近い)距離で戦って、のみ込めるか」。

 沖縄の離島・宮古島の高校時代、ともに汗を流して、切磋琢磨した比嘉大吾(志成)、狩俣綾汰(三迫)が今年、それぞれ転機を迎えた。川満は2人への思いも胸にリングに上がる。(取材/構成 船橋真二郎)

■自分が強くなることだけに集中
――次が2度目の防衛戦で、チャンピオンになってから1年になります。
川満 そうですね……。僕はもう一生懸命、1試合、1試合、目の前のことをやっていくという感じなので。どれだけ自分のボクシングができるか、自分が強くなることだけに集中して。

――チャンピオンとか、2度目の防衛戦とか、そういう意識ではないと。
川満 そうですね。なんかもう、みなさん、高見(亨介)くんのこととか、先のことを言うんですけど(苦笑)、自分は下から上がってきた人間で、自分がチャンピオンという感覚はなくて。ただ、強くなりたいですね。

――今までと変わらず、自分が強くなることに集中して。
川満 ずっと変わらないです。今の自分で大丈夫か、まだまだだぞっていうので今まで練習してきて。でも、ずっとプレッシャーはあるし、怖いのは怖いので……。一つひとつ勝っていくことで、また自信になると思うので。自分はいつも通り、目の前の試合に集中して、一生懸命やるだけです。

――では、次の大橋選手に対しては、どんな印象を持っていますか。
川満 パンチがありますよね。相手の距離でやったら、強いパンチが飛んでくるので。いつもなんですけど、どれだけ自分の距離で戦って、のみ込めるか、だと思います。

――攻撃型の選手同士だけど、距離が少し違う。
川満 ちょっと長いですよね。大橋選手のほうが。

――近い距離ではあるんだけど、ちょっと遠いのが大橋選手の距離。
川満 はい。そこを一歩でも半歩でも詰めて、自分の距離でできれば、相手もやりづらさを感じるのかなと思うので。

――となると、ちょっとした距離、ポジションの違いで、相手のいいパンチをもらう可能性がありますね。
川満 大橋選手、相打ちのタイミングとか、打ち終わりのタイミングが怖いですね。ちょっとしたガードのズレ、空いたところを狙われると危ないと思うので。でも、そういうガードとか、いいパンチをもらわないポジションとか、ディフェンスを意識して、(中に)入る練習を横井(龍一トレーナー)さんとずっとやってきたので。それを出せたらいいな、と。

安藤を撃退した初防衛戦

■攻撃を生かすディフェンス
――5月の安藤(教祐)選手との初防衛戦の後は反省ばかりが口をついて。
川満 そうですね。行くときに思い切り行くのは、大事なんですけど、そこで丁寧じゃなくなるというか……。そこでもらったら危ないだろっていうのを何回かもらってたんで。もっと冷静になれよ、と自分でも思いました(苦笑)。

――攻めているときのディフェンス。
川満 はい。攻めてるときとか、攻め終わりのところですね。

――特に今回の相手に対しては怖いところですね。
川満 そうですね。大橋選手はパンチがあるし、何があるか分からないので。

――それこそ、横井トレーナーと練習しているというガードとか、ポジション取り、意識するディフェンスが身に着いていれば。
川満 それが理想です。最終的には体に染みついてるぐらいの。

――ここというときに攻められるのが川満選手のいいところでもあるし。
川満 そうですね。(三迫貴志)会長、横井さんには、チャンスとか、ここで行かなきゃというときに躊躇したらダメだ、ということも言われるので。本能は大事にしつつ、ですね。

――神戸でタイトルを獲ったとき、三迫会長が躊躇なく行けるのが川満選手のよさだと。ディフェンスを意識し過ぎて、そのよさを消してしまうのも違うし、しっかり状況判断もしながら、攻めるべきタイミングを見極めることも含めてですね。
川満 はい。そこは抑えられないところもあるんですけど(苦笑)、消さないように(ディフェンスを)体に覚え込ませるところまでいきたいです。長い目で見たら、もらわない人が生き残って、強くなれるし、上に行けると思うんで。

――大橋選手は4年3ヵ月ぶりに復帰してから、A級2戦目でランキングに入ったばかりです。チャンピオン優位という見方をされると思いますが。
川満 ランキングに入る選手は強いので、絶対に油断はできないですし、僕はチャンピオンだから大丈夫だろ、みたいなのはないので(笑い)。

■チャンピオンとは―
――チャンピオンになってから、ユーリ阿久井(政悟=倉敷守安)選手とか、飯村樹輝弥(角海老宝石)選手とか、チャンピオンとスパーリングをする機会が増えたと思います。
川満 そうですね。あと京口(紘人=ワタナベ)さんとか、(寺地)拳四朗(=BMB)さんと。

――拳四朗選手とは以前から機会があったと思いますが、自分がチャンピオンになって、そういうチャンピオンとやることで、何か感じるものはありますか。
川満 やっぱり、みなさん、全体的に強いですけど、その中にも自分の強みはこれというのを持ってるな、というのを強く感じます。バランスがいい中にも自信がドンとあるというか。

――ある意味、川満選手が今、ディフェンスを伸ばすことで、より自分のよさを生かそうとしているのと似ているかもしれないですね。その中で自分の強みがより生きるし、自信を持って出せるというか。
川満 そうですね。あと、やっぱりチャンピオンは違うんだなと感じるのは、普段からスパーリングする相手でも、食ってやるみたいな感じで来るんですよ。もっと精神的にも強くならないといけないなと常に感じるんですけど、出田(裕一)さんはドンとしてますね。

――チャンピオンになると毎回、そういうスパーリングになるから、対応して、乗り越えることで強くなるのかもしれないですね。
川満 強くなると思います。自分はプレッシャーばっかり感じてやってるんですけど。出田さんはボクシングを楽しんでやる気持ちを忘れないでやってて、練習も常に楽しんで、チャレンジ精神を持ってやってると聞いたので。すごいな、と思います。

――安藤選手との再戦の前には永田(大士)選手からアドバイスをもらったんでしたね。
川満 はい。永田さんも井上(浩樹=大橋)さんと2回やったじゃないですか。

――1回、勝ったことのある相手とどう戦うか。心構えを。
川満 そうです。やっぱり、1回、負けた相手に挑むときって、自分がやるとしても、次は絶対に勝ってやる、という気持ちでぶつかってくると思ったんで、怖い部分があって。どういう気持ちで練習して、試合に臨んだのか、永田さんに聞いたんですけど。自分に自信を持って、やることをやるだけでいいんだよ、と言っていただいて。

――ジムの先輩チャンピオンからも学びながら。
川満 はい。ほんとにお世話になってます。

永田㊧、出田㊨の先輩王者と

比嘉、狩俣の転機に気持ちも新たに
――今年は6月に狩俣綾汰選手が負けて、引退を決断して。9月には比嘉大吾選手が久しぶりの世界挑戦に敗れました。どんな思いがありますか。
川満 綾汰に関しては、試合前から気持ちが不安定なのをずっと感じてて。ここの勝敗は大事なんじゃないか、(負けたら)綾汰の中で決めてるのかな、というのを薄っすら感じてました。自分に相談してきたときも、頼るというか、いつもの感じじゃなくて。なんか、こう……。

――不安というか。
川満 あ、そうです。不安なのかな、というのを感じてたんで。試合当日も少しでも力になればと思って、サポートしたつもりだったんですけど。でも、そうやって決断して、やりきったし、悔いはないと清々しく言ってたので……。寂しいですけど、自分もまた頑張るから、俊輝も頑張れよ、と言ってくれたので。

――千葉のほうで仕事をしているそうですね。
川満 そうです。引っ越しの手伝いもしたんですけど、今までと関係は何も変わらないから、と言ってくれて。今も連絡して、お互いに悩みを話したり、そこはほんとに心強くて。今、綾汰もまた新しい道で頑張ってるので、自分も頑張らないとなと思います。

――比嘉選手の試合は見ましたか?
川満 はい。(会場には)行けなかったんですけど。で、試合が終わった後、大吾が、オレはやりきった、みたいな感じでまたLINEをくれて。で、俊輝は俊輝らしく、悔いの残らないようにやってほしいって、言ってくれたんです。自分のボクシング人生なんだからって。

――川満選手からは?
川満 大吾のおかげで今の自分がいるって。やっぱり、高校のときは毎日、悔しかったんで(笑い)。

――毎日のようにスパーリングでやられたんでしたね。
川満 そうです。僕にとっては悔しくて、嫌なやつだったんですけど(笑い)。だから、自分も頑張れたし、大吾がいなかったら、こうしてプロボクシングの世界にも来てなかったと思うので、ほんとに感謝してますし。一番悔しい思いをさせられたけど、自分は一番近くで大吾の強さも感じて、一番尊敬できる人だな、と思ってます。

――いろいろ思い起こしたところも。
川満 そうですね。あらためて、2人の存在は大きいんだな、と感じて。また自分も頑張ろうと思いました。

――それから10月には1995年生まれの同い年の堤聖也(角海老宝石)選手、岩田翔吉(帝拳)選手が世界チャンピオンになりました。特に岩田選手は高校3年のときのインターハイ準々決勝で負けた相手でもありますね。
川満 そうですね。堤くんも九州大会でやったことがあったんですけど。

――あ、そうだったんですか。
川満 はい。1回だけ。すごいですよね。今年は1995年の同い年の人が活躍して、刺激を受けてますし、勇気をもらってます。

――岩田選手は同じ階級の世界チャンピオンですね。
川満 そうですね。すごいと思う反面、同じ階級なので意識しないわけではないですけど。でも、自分はまだまだなので。もっと強くなるために一生懸命、頑張るだけです。

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