4.8出田裕一が元ウェルター級3冠の豊嶋亮太とV4戦 “不惑の王者”が手数と執念で上回るか
2025年4月5日 12時29分
2025年4月4日 18時11分
4月8日の「ダイヤモンドグローブ」はトリプルメインイベント。日本王者が最強挑戦者を迎え撃つチャンピオンカーニバルの一環で、ライトフライ級、フライ級、スーパーウェルター級、全3階級の日本タイトルマッチが東京・後楽園ホールで開催される。
スーパーウェルター級は、ウェルター級で日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座の3冠を制した実力者、同級1位の豊嶋亮太(とよしま・りょうた、帝拳/29歳、20勝11KO3敗1分)が、これが4度目の防衛戦となる不惑の王者、出田裕一(いでた・ゆういち、三迫/40歳、19勝10KO16敗1分)に挑む。
豊嶋は昨年5月、当時の日本ウェルター級王者・坂井祥紀(横浜光)との再戦を2-1の判定で制したのを最後に長らく主戦場としてきた階級に別れを告げ、日本タイトルを返上。11月の最強挑戦者決定戦では元キックボクサーで無敗だった左右田泰臣(EBISU K’s BOX)をフルマークの判定で破り、挑戦権を奪取するとともに新たな階級での自身の動きに手応えを感じた。
6歳から空手、小学5年生からキックボクシングに移り、プロのリングにも立った。ボクシング転向は高校3年生から。卒業後に福岡県糸島市から上京し、18歳でプロデビュー。大ベテランの出田に対しても「格闘技のキャリアで言ったら負けてない」と矜持をのぞかせる。
「お互い目指すところが明確に違う。自分の力を存分に発揮して、ここから先の未来に対しても挑戦していく姿を見せる試合にしたい」と意気込み、「展開をつくりながら、気迫でKOを奪いにいきたい」と力強く語る。
「また目指す場所に手をかけられるように」。そう口にする一方で、結果次第で「終わるか、始まるかという覚悟は常にある」と続ける。「絶対に気持ちでも負けない」と固い決意でベルトをつかみにいく。(取材/構成 船橋真二郎)
■チャレンジャー精神をぶつける
――昨年6月にウェルター級の日本タイトルを返上して、新たな階級で臨む初のタイトルマッチです。今までとは違う気持ちもありますか。
豊嶋 出田選手は40歳で安定して防衛もしてきた選手で、難しい相手ではあるんですが、お互い目指すところが明確に違うと思うので。自分の力を存分に発揮して、今だけに挑戦じゃなくて、ここから先の未来に対しても挑戦していく姿を見せる試合にしたいという思いはあります。これは今回に限ってというわけではないんですが。
――スーパーウェルター級で自分の力を示すにはいい相手だと。
豊嶋 そういうところもあります。とはいえ、自分は今回、チャレンジャーなので、そんな上からじゃなく、今までと変わらないチャレンジャー精神をぶつけたいという気持ちはしっかり持ってます。
――左右田選手との最強挑戦者決定戦の1ヵ月前、出田選手が3度目の防衛を果たしたリングで「戦ってみたい」と豊嶋選手の名前を出したのは、何かで目にしたり、耳にしたりしていましたか。
豊嶋 あ、そうですね。ただ、時が来れば、必ずそうなることですし、そのときはあまり考えないようにはしていました。
――勝てば、そうなるシチュエーションでもあったし。
豊嶋 はい。だからこそ、しっかり目の前の仕事をやりきることに集中して。まあ、キャリアが長くなればなるほど、つい先のことを考えがちになりますが、前回は転級初戦だし、自分の新たなスタートと思って。
――余談になるかもしれないですが、左右田選手はキックボクサー時代、帝拳ジムに出稽古に来て、亀海(喜寛)さん、その他の選手たちとスパーリングをしていたと聞きました。知らない間柄ではなかったのでは?
豊嶋 あ、そうですね。実は僕も6回戦の頃、キックボクサー時代の左右田選手と手合わせしたことがあったので。それに僕がキックをやってた頃、一緒の日に試合をしたこともあって、自分が見上げてた人だったので。
――そういう縁があったんですね。
豊嶋 だから、そういう意味でもよかったです。今の実績や実力はともかくとして、そういう背景があったからこそ、挑戦心を持って試合に向かいやすかったので。
――目の前の相手に集中することができた。
豊嶋 はい。で、縁があるというと出田選手とも一緒に仕事をしたこともあるんですよ。
――あ、そういう縁も(笑い)。
豊嶋 そうなんですよ。パーソナルトレーナーの仕事で事務仕事を一緒に。だから、2戦続けて。まあ、あまり関係ないですが(笑い)。
■ここ最近の自分とは明らかに違った
――実際に初めてスーパーウェルター級の体重をつくって、左右田戦に臨んで。手応えはどうでしたか。
豊嶋 やっぱり、直前はかなり緊張して。久しぶりに深めに緊張してたんですが、試合が始まったら楽しみになりました。最初に動いた瞬間、ここ最近の試合の自分と明らかに速さが違い過ぎて、ビックリするぐらいだったし、しっかり脚もついてきたので。まあ、倒すことはできなかったんですが、思ったより技術は見せられたんじゃないかなと思いますし、フルマークで勝てたので。
――5ラウンドでしたか。倒しに行ったところもありましたね。
豊嶋 あ、そうですね。いや、難しいですね。噛みついてきたらチャンスも大きくなるんですが、ディフェンスに徹されるとチャンスが少なくなるんで。
――左右田選手、はぐらかし方がうまかったですか。
豊嶋 それはもう昔から知ってたところで。あ、こんな感じかというのはあったんですが、それはそれでいい経験にはなりましたし。そういう状況でも、今後は決定力を見せていく試合をしたいなと思いました。
――仕留めきることを求めていきたい。
豊嶋 やっぱり、目の前のことを確実にやりながらも、上を目指していかないと。ここまで二十何年、ずっと格闘技漬けで生きてきて、それが根底になければ、自分にとってはやっている意味がなくなってしまうので。
――どのように求めていきますか。
豊嶋 この階級にアジャストしていくこともそうですし、あとは気持ち、もう少し攻勢を強めたほうがいいなというのは、前々から思ってることではあるんですが、よくも悪くも思考がややディフェンス寄りのところがあるので。
――そうなんですか。豊嶋選手のディフェンスは基本的にブロックが主体で、そこからリターンを返して、攻撃につなげるのがひとつのパターンですよね。
豊嶋 そうですね。まあ、ブロックにしても受け方を考えて、がっつり受けちゃうとリターンが遅れちゃうので、いかに流しながらスムーズに返せるか。直受けしないブロッキングですよね。どっちの腕で受けるか、どこで受けるか、こう来たらこう、こっちならこうとか、いろいろパターンを想定して。
――細かいところまで考え抜いて。
豊嶋 いや、残念ながら、僕には天才的な動きは難しいので(笑い)。まあ、別に“秀才型”でもいいと思ってますし。だから、防御への振り分を1割捨てて、攻撃に持ってくるだけでも僕の場合はやることが結構、変わってくるんですよ。でも、そこがあらためて明確になってきたので、頭でっかちというか、あまり考え過ぎないで体現する勇気、踏み込む勇気も必要ですよね。
――どこかで一皮むけるというか。
豊嶋 はい。そういう話になってきますよね。
■結果を出さないと終わりの緊張感
――難しい相手という言葉もありましたが、出田選手に対しては、どんな印象を持っていますか。
豊嶋 基本的に誰もが嫌がるというか、ボクシングができる人ほど、嫌がる戦い方をされている選手で、そこがはっきりと強みなんだろうなと思います。
――ボクシングができる人ほど。
豊嶋 いや、やりづらいだろうなと思います。距離的にも大体の人が得意としない至近距離で戦って、きれいなボクサーファイターほど、巻き込まれて負けてるイメージがありますよね。
――では、対豊嶋亮太ではどうですか。
豊嶋 これは別に油断でも過信でもなく、対自分には有効にはならないです。まあ、もしかしたら全然、違う動きをしてくる可能性もあるかもしれないですけど、本来のスタイルを貫いてこようが、違うことをやってこようが完全制圧して、やることをなくすだけなので。
――相手の得意な距離も含めて、すべての距離で相手のやりたいことを潰すと。
豊嶋 僕は(階級を)上げてきましたけど、スパーリングではミドル級が相手でもフィジカルで押し負けない、むしろ押すぐらいの自信もありますし、全距離で威力のあるパンチを打つ練習をしてきて、それが最近、スパーリングでかなり出せてきてるんで。
――特に近い距離で強いパンチを打つのは難しいですよね。
豊嶋 そうですね。近い距離だと振る幅がないんで難しいんですけど、そこも研究して、改善できてきてるんで。
――そういう成果を試合で出せれば、どの局面でも完全制圧できるということですね。
豊嶋 はい。どの局面でも勝ちたいです。今回、階級を上げて2戦目になるので、より力感が増して、どの距離でも威力のあるパンチを打てるところもそうですし、うまく展開をつくりながら、気迫でKOを奪いにいきたいですね。
――KOをテーマにして。
豊嶋 難しい相手だからこそ、そういう気迫で行かないと勝負として負けてる感じもしますし、結果的にそうならなければ仕方ないですが、最低でも勝ちは絶対として、倒しきれたら最高です。そのための練習もしてきてますんで。
――11連敗、9年以上、勝てない時期があって、プロデビューから18年近くかけて日本チャンピオンになった出田選手のキャリアに対しては、どのような気持ちを持っていますか。
豊嶋 いや、僕も格闘技のキャリアで言ったら負けてないんで。諦めないで続けることの難しさは重々承知してますし、しっかり続けて、芽を出した出田選手の気迫だったり魂には敬意を表します。だからこそ、そういう相手にもしっかり勝てるように。ここに至るまで僕にもいろいろありましたし、積み上げてきたものをひとつの形にして、KOないし勝利につなげたいなと思います。最後は気持ちだと思うので、絶対に気持ちでも負けないように。
――目指すところが明確に違うということでした。世界で戦うことをイメージして、ボクシングを選んだんでしたよね。
豊嶋 そうですね。そこまでたどり着くことは誰もができることではないですし、だからこそ、続けてきて。自分より才能のあるやつが格闘技仲間にもいっぱいいましたけど、僕だけがいまだに戦い続けてるっていうプライドもありますし。また目指す場所に手をかけられるように。
――ここからまた結果を出していって。
豊嶋 結果を出さないと終わりなので。始まるか、終わるか。最近は今まで以上に、そういう覚悟は常にありますし。そういう緊張感を持って、腹を決めたほうが成長につながると思うし。僕も今年で30歳なので。
――今年の年末で。二十代最後の1年になりますね。
豊嶋 そこまで(年齢を)気にしてるわけではないですが(笑い)、次につながる1年にはしたいと思ってます。登っていく先も大事ですけど、登っていく過程を何より大事にして。
■帝拳ジムと“1995世代”の波に乗って
――昨年からジムにはチャンピオンが続々と誕生して。1月の藤田健児選手、4月の李健太選手、で、5月の豊嶋選手が3人目で勢いをつけましたが、今のジムの空気をどう感じていますか。
豊嶋 いや、かなりいいですね。チームであり、仲間ですけど、せめぎ合うというか、切磋琢磨し合う環境になって、口には出さなくても「オレもやらなきゃ」と危機感を覚えるわけじゃないですか。全体の上を目指す欲が上がっているので、非常にいい流れが久しぶりに来たなって。僕も帝拳ジムには11年ぐらいいて、上から数えて4、5人目になってきたんで。
――そうなってきましたか。
豊嶋 そうなんですよ(笑い)。世界チャンピオンの先輩方がいっぱいいたとき、いなくなったとき、いろいろな時代を見てきて、今はまた若いのが非常に勢いがあるので、自分も負けないようにやっていきたいですね。
――で、ボクシングのアマチュア経験がない豊嶋選手は“番外編”になるかもしれないですが、今、1995年度生まれの同い年がすごいじゃないですか。
豊嶋 そうですね。この世代は燃えてるというか、いいなと思いますね。うちにも(岩田)翔吉、(中野)幹士、(李)ゴンテ、坪井(智也)、いっぱいいるんで。
――(ユーリ)阿久井(政悟)選手とも仲が良いですよね。
豊嶋 あ、そうですね。ほんとに刺激になりますね。自分も勝っていかなきゃって、ほんとに思えてるんで、この波にも乗っていきたいと思います。
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