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あの柴田国明が、リナレスが、八重樫東が…
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2020年6月1日 月曜日

衝撃の1ラウンドKO特集 まさかの「王座陥落編」 
あの柴田国明が、リナレスが、八重樫東が…

 我々ファンをあっと驚かす1ラウンドKO─。王座奪取が感動的なら、王座陥落は言葉にできないほど悲劇的だ。リングに上がり、勝利をイメージしたのも束の間、すぐ目の前には恐ろしい闇のような穴が待っていたのだ。衝撃の1ラウンドKO特集、第3回は「王座陥落編」。

昭和の名チャンピオン柴田国明

 世界王者として日本選手として初めて初回KOでベルトを失ったのが柴田国明だ。柴田は1970年12月、敵地で“メキシコの赤い鷹”ビセンテ・サルディバルを13回TKOで下してWBCフェザー級王座を奪取した。

 王座陥落後、クラスを上げてWBA・J・ライト級王座を獲得して2階級制覇を達成。ベン・ビラフロア(比)に判定勝ちした試合はハワイで行われ、海外で2度世界王座を獲得するという離れ業は、“天才パンチャー”柴田の実力ならではだった。

 その柴田が立場を入れ替えてビラフロアの挑戦を受けたのは2度目の防衛戦。73年10月17日、第1戦と同じホノルル・インターナショナル・センターでゴングが鳴った。

 体格で上回るサウスポー、ビラフロアがスタートからアグレッシブに攻める。柴田もガードを固めてボディ攻撃で対抗。初回から激しい打ち合いが始まった。そしてラウンド終盤、柴田が左フックを打ちにいったところに、ビラフロアのシャープな左がカウンターになって炸裂した。

 次の瞬間、柴田はキャンバスに大の字。一瞬立ち上がろうとしたものの、そのまま10カウントとなり、詰めかけた8000超の観衆は大騒ぎとなった。KOタイムは1分56秒。

 柴田はキャリア6敗のうち5敗がKO負け。天才パンチと打たれ脆さを併せ持つボクサーだったと言える。その後、みたび王座に返り咲き、WBC・J・ライト級タイトルを3度防衛したことを付け加えておきたい。

リナレスがダウン。信じられない光景だった

 グッと時代は近づき、舞台は2009年10月10日、代々木第2体育館。WBA・S・フェザー級王者として2度目の防衛戦のリングに上がったのは“エル・ニーニョ・デ・オロ(ゴールデンボーイ)”ホルヘ・リナレスだった。

 17歳で日本でプロデビューしたリナレスはここまで27戦全勝。圧倒的なスピードとスキルで既に2階級制覇を達成していた。メキシコの挑戦者フアン・カルロス・サルガドにチャンスはないように思われたのだが…。

 ジャブの差し合いから試合は静かに始まったかに見えたが、開始50秒、サルガドが左フック、右ストレートを放つとリナレスが尻からキャンバスに落下。立ち上がったもののダメージは深刻だ。再開後にサルガドがラッシュするとあっけなく試合は終わった。TKOタイムはわずか1分13秒だった。

サルガドは涙を流して喜んだ

「驚きました…」、「相手のパンチが変則的に伸びてきて反応できなかった」とは試合直後のリナレス。

 不敗記録が途絶えたリナレスはこの後、しばしスランプに陥ったが、その後はライト級に進出して3階級制覇を達成。現在は34歳となり、キャリア終盤のラストスパートをかけようとしている。

 WBC・S・フライ級V8チャンピオン、徳山昌守が川嶋勝重に敗れた2004年6月28日の試合は、「王座奪取編2」で書いたので、そちらに譲りたいと思う。https://boxingnews.jp/news/74831/

 最新の1ラウンド王座陥落試合となると、2017年5月21日、有明コロシアムの八重樫東ということになる。IBF・L・フライ級王座の3度目の防衛戦。挑戦者はフィリピンのミラン・メリンドだった。

初回決着にはメリンドも「驚いた」

 八重樫は激闘ファイトを売りに3階級制覇を達成。軽量級最強のローマン・ゴンサレスとの打撃戦でファンのハートをガッチリるかみ、心身ともにタフなのが八重樫の売りだった。その八重樫がまさか1ラウンドで沈んでしまうとは…。

 メリンドが慎重に圧力をかけ、八重樫が足を使いながらそれに応じる立ち上がり。ラウンド中盤、八重樫の攻撃に合わせてメリンド左フックから右をフォローすると、八重樫が尻もちをついてダウンした。ゆっくり立ち上がった八重樫は自ら手を出していったが、メリンドに左ボディ、左アッパーと追撃されると再びキャンバスに転がった。

 それでもまだ、会場に集まったファンは八重樫が負けるとは思わなかったはずだ。しかし、ダメージは予想以上に深刻。メリンドにワンツーを決められ、ダウンした八重樫は主審のTKO宣告をぼう然とした表情で目にすることになった。

試合後、八重樫は気丈に取材に応じた

 勝者のメリンドは「八重樫はタフなので序盤で終わるとは思わなかった」と驚いた様子。 八重樫は「パンチを当てられた。こっちは当てられなかった。短い時間ですが、そこですよ」と悔しさをこらえながら話した。

 柴田、リナレス、徳山、八重樫─。1ラウンドKO負けを経験したチャンピオンがいずれもボクシング史に名を残す王者であることは興味深い。いずれの選手もこの試合で終わらず、たくましく再起したことも記しておきたい。

=第4回は近日中に公開=

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