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1991.9.19 浪速のジョーが時代の寵児に

ボクシング今日は何の日 辰吉丈一郎が世界戴冠 
1991.9.19 浪速のジョーが時代の寵児に

2020年9月19日 10時51分

 1991年9月19日は“浪速のジョー”こと辰吉丈一郎がWBCバンタム級王者グレグ・リチャードソン(米)を下して初めて世界チャンピオンになった日だ。会場は大阪府の守口市民体育館。21歳だった辰吉は具志堅用高、井岡弘樹の9戦目を抜き国内最速となるプロ8戦目での世界王座奪取記録を打ち立てた。

歓喜の涙を流した辰吉

 圧倒的な才能と挑発的ポーズ、どこまでもふてぶてしく、それでいて憎めないキャラクター。デビュー当時からスターの輝きを放っていた辰吉はプロ4戦目で日本王者の岡部繁を完膚なきまでにたたきのめし、ファンからの熱狂的な支持は不動のものとなりつつあった。その辰吉が初めて世界に挑んだのがリチャードソン戦だった。

辰吉はスタートからペースを握った

 アマ275戦、プロで29勝4KO4敗の技巧派チャンピオンに対し、プロ6勝5KO1分の辰吉は初回から左ジャブ、長いリーチを生かした左フック、左ボディでリチャードソンに襲いかかった。流れるようなコンビネーションも圧巻。これがプロ8戦目なのか? 驚いたのはだれよりもリングの中のリチャードソンだったろう。

 8回に入ると、辰吉が右ボディ、左ボディでさらに王者を追い込んだ。9回に入ると辰吉のパンチを浴び続けるリチャードソンは下がるばかり。迎えた10回、チャンピオンは勝利へのかすかな望みをかけて反撃に転じようとしたが、それはあまりにはかない抵抗だった。

王者リチャードソンを追い込む辰吉

 終了間際、辰吉が左フック、右ストレートを決めるとリチャードソンをグロッギーに。会場の大歓声で、主審はラウンド終了のゴングが聞こえないほどだ。そして王者が11回開始のゴングに応じられず、辰吉のTKO勝ちが決まった。

 収容人数3000人という狭い守口市民体育館は割れんばかりの大歓声に包まれた。勝利が決まった直後、キャンバスにうつぶせに倒れた辰吉。ヒーローインタビューでは「やったで」と軽く親指を挙げて、男手一つで育ててくれた父粂二さんに感謝した。

 辰吉はこのあと王座陥落、網膜剥離、引退の危機、奇跡の世界王者復活、またしても王座陥落―と激動のボクシング人生を送り、ファンのハートを熱くこがし続けた。壮大な大河ドラマの始まりが29年前のリチャードソン戦だった。

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