S・ミドル級4団体統一王者カネロ 来年5月に復帰戦、9月にビボルと再戦を希望
2022年11月24日 9時40分
2022年11月23日 11時53分
28日に後楽園ホールで行われる川島ジム主催の「アンタッチャブルファイト」で、現役時代は“証券マン・ボクサー”として二足の草鞋でも知られた元日本S・バンタム級王者、真部豊・マナベジム会長の長男・真部光(ひかる)がプロデビュー戦に臨む。
小学生の頃からリングに上がることが当たり前になった昨今、元プロの子どもがアンダージュニアやジュニアチャンピオンズリーグ(U-15)に親子で出場する姿も珍しくなくなったが、「息子はアマチュアもスパーリング大会も出てなくて、試合の経験は全然ないんです」(真部会長)というから事情は異なる。
現在24歳。今年5月で開設から20周年を迎えたマナベジムには「高校を卒業するまでほとんど行ったこともなかった」という。1997年12月13日、真部会長が王者の地元・熊本に乗り込み、3度目の挑戦、29歳で念願の日本タイトルを奪取した2日後に生まれ、父の戦う姿は「肉眼で見た覚えはないです」。ボクシングは「自分とはまったく関係のない世界」だった。
きっかけはコロナ禍だった。SE(システムエンジニア)として働く会社員が普段の顔。新型コロナウイルスの蔓延で在宅勤務になり、通勤時間がなくなった分、時間に余裕ができた。「大学生の頃、運動不足解消のため、たまに父と1対1で練習していた延長」で体を動かし始めた。半年、1年と続けていくうちにプロライセンス取得に照準を定めるようになった。
今年4月、堤駿斗、鈴木稔弘(いずれも志成)らアマチュアホープがB級プロテストを受験した陰で目標を果たした。その時点でもリングに立つつもりはなかったが、「比較的、高い頻度で練習に来れていて、ある程度、仕事の見通しも立っている時期」にバンタム級4回戦の相手を探しているという連絡がジムに入り、「できるチャンスがあるなら」と挑戦を決心した。
目標は「今回、勝つこと」だけ。先のことは頭にない。「今後、続けていくか、もしくは一度でやめてしまうのか、そのときの自分にどんな心境の変化が起きるのかで考えようと決めています」。それは同じサウスポーであり、奇しくも新人時代と同じ階級でデビューすることになった新米プロボクサーと父の共通点でもある。
真部会長もまた証券会社に勤めていた20歳のとき、運動不足解消のため、オープンしたての宮田ジムに入門。デビューしたときも「チャンピオンとか、大それた目標は持っていなかった」と振り返る。
「まず1勝」に始まり、4回戦から6回戦に上がれば8回戦、8回戦に上がれば日本ランカーと段階を踏んで目標はふくらんだ。そんな真部会長が日本タイトル奪取戦と並んで「ものすごく嬉しかった」と思い出深い試合に挙げたのが2回KO勝ちしたプロデビュー戦だった。
対戦相手は2戦して1敗1分の佐藤拓夢(調布三迫)。試合が近づくにつれ、「メンタル的にも強い覚悟が求められることを非常に感じています」と緊張や不安も高まっている。だが、父の指導だけでなく、宮田ジムに出稽古に行き、父の師匠でもある宮田博行会長に「ガードの位置、頭の振り方」といった実戦的なアドバイスも受けるなど、準備万端。
「自分に期待するところもありますし、負けられないな、という気持ちはかなり強くあります」
父もまた「ああいう舞台に立って、戦うこと、勝つことで、人として自信につながれば」と多くは求めていない。思いがけずコロナ禍がくれたチャンス。元日本王者の息子は父と同じリングでどんな自分と出会うだろうか。(船橋真二郎)
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