ビボルあすサウジで防衛戦 ベテルビエフとのL・ヘビー級4団体統一戦目指す
2023年12月23日 12時11分
2023年12月22日 11時25分
全日本新人王決定戦が12月23日、東京・後楽園ホールで行われ、中止になったS・ライト級をのぞく全11階級で東軍代表と西軍代表が激突。2023年のルーキーチャンピオンが決まる。東高西低の印象が強い全日本新人王決定戦だが、その構図は近年、崩れつつある。昨年は2013年以来、西軍が7勝5敗と9年ぶりに勝ち越し。また直近の10年で6勝6敗のタイだった年は3度あり、東軍が勝ち越したのは半分の5度ということになる。
今年は西軍代表の中で毎年のように最大勢力を占めてきた西日本の4人(うち棄権1人)を上回り、中日本が5人を送り出しているのが特徴で、西部日本は3人とバランスのいい構成で東西対抗戦に臨む(下に組み合わせ)。
昨年はウェルター級、ミドル級に人材が集中し、重い階級に注目が集まった。“浪速のロッキー”こと赤井英和さんの長男・英五郎(帝拳)は、元K-1選手の左右田泰臣(EBISU K’s BOX)の前に東日本準決勝で敗退も、今年は2021年から3度目の挑戦で東日本新人王に輝き、敢闘賞にも選出された。
が、かつて父・英和さんも獲得した全日本新人王に向けては手強い相手が待ち受ける。小学1年から日本拳法を始め、高校時代に全国4冠、コロナ禍を機に龍谷大を中退し、プロボクシングに転向してきた冨永一希(仲里)。長身185センチのサウスポーを乗り越え、悲願を果たせるか。昨年から続く見どころのひとつになる。
2023年は反対に最軽量のミニマム級が充実。中でも前評判が高かったのが東日本の若き19歳のサウスポー、北野武郎(大橋=4戦全勝1KO)だった。1998年のB級デビューからトラッシュ中沼(国際)の日本フライ級王座に挑戦、双子の弟で日本L・フライ級王者となった北野隼さんとともに“北野ツインズ”としてヨネクラジムで活躍した北野良トレーナーの長男というサラブレッド。順当に東日本新人王になり、全日本新人王決定戦に駒を進めてきたが、なかなか濃い道のりを勝ち上がってきた。
ここでは、北野を中心としたミニマム級の“ライバル対決”を振り返りつつ、それを取り巻く選手たちの横顔を数珠つなぎで紹介する。昨年の赤井と同じく、獲れなかった者たちの戦いの続きもすでに始まっている。 《取材/構成 船橋真二郎》
■ジュニア経験者同士のサウスポー対決に臨む北野武郎
北野の戦いは7月25日、井上尚弥(大橋)がS・バンタム級初戦で世界2団体統一王者のスティーブン・フルトン(米)を8回TKOで下し、4階級制覇を成し遂げることになる東京・有明アリーナから始まった。
昨年の東日本新人王決勝に進出し、大橋ジムの先輩で元キックボクサーの石井武志に敗れたものの、初めて試合終了ゴングを聞かせた川上拳汰(石川・立川)に2回TKO勝ちで初戦を突破。次の準決勝では昨年のインターハイでL・フライ級準優勝の結果を残した同い年の遠藤龍匠(川崎新田)を、決勝ではその遠藤のプロ転向初戦で黒星をつけ、評価を上げた21歳の杉浦義(協栄)を、それぞれ判定で退けた。
リング上で見せる熱い表情とは打って変わり、試合後の会見ではもじもじと正反対の顔を見せる。「先のことは考えないように。目の前の1戦1戦を勝っていくだけ」と殊勝に繰り返してきた。
全日本新人王決定戦で相対することになる1歳年長のサウスポー、坂田一颯(S&K)はプロ戦歴こそ浅い(2勝1KO1敗)ものの、U-15全国大会で優勝経験のある2人の兄・坂田仁、陵雅に続き、小学5年、6年、中学2年と同大会を3度制覇するなど、ボクシング歴は長い。北野もまた小学5年からU-15全国大会の常連。中学2年だった2018年にジュニアチャンピオンズリーグ(JCL)全国大会として再スタートした同大会で初優勝を果たすと、翌年も連覇を決めており、ジュニアのリングで豊富な経験を積んできたサウスポー対決になる。
■杉浦義は決勝敗退の3日後に早くも始動
東日本新人王決勝から3日後、週が明けた11月6日の協栄ジムに早くもバンデージを巻く杉浦の姿があった。北野との一戦は熱戦だった。ダメージが心配されたが、「(これだけ早く練習を再開して)意外と僕もタフなんだな、と分かりました(笑い)」と冗談めかしながら、右構えと左構えで交互にサンドバッグを叩く。初回開始早々からサウスポーにチェンジして戦い、北野を戸惑わせたが、もともとプロになるまでは左で構えていた。
名門・協栄ジムの“魂”を受け継ぐ。1999年11月のプロデビューから11連勝、A級トーナメント優勝も果たした鈴木ワタルさんが最初の師匠。同時代を生きた元同門から「託された」と瀬藤幹人会長は表現する。
和歌山・勝浦町出身の杉浦が同・新宮市で鈴木さんが主宰するアマチュアジムに入門したのは高校1年のとき。やがて幼いころから打ち込んできた空手からボクシングに気持ちが傾くようになる。アマチュアの公式戦出場経験こそないものの、ふとしたきっかけで左で構えると優位に戦える感触があり、それからサウスポーで通した。が、プロを志して上京し、当時の協栄新宿ジムの門を叩くと「いいところがなかった」と内田洋二トレーナーから痛烈なダメ出し。元の右構えに戻されたという。
「地方で周囲の相手がサウスポーに慣れてなかっただけで、自分が強いわけじゃなかった」と杉浦は苦笑するが、北野戦を前にしたスパーリングで調子が上がらず、「試しにやらせてみたら、よかったので」(内田トレーナー)とサウスポーで仕上げた。かつて左で練習を重ねた経験と約2年、4戦のプロキャリアがあったからこその“秘策”で、決して急造ではなかった。
「ヨシのいいところは前に出続けられる気持ちの強さ」と内田トレーナーが評するファイター型で、4月の遠藤戦は先行を許しながらも粘り強く戦い抜き、スキルで上回る相手に逆転の2-0判定をものにした。それでも「(内容では)自分が負けたと思った」と控え室で悔し涙を噛みしめ、負けん気の強さをのぞかせた。
決勝の戦いを「終わってみたら、北野選手が打ち合ってくれて、楽しかった」と笑顔で振り返るが、「いつか」の思いはもちろん強い。「また、ここから勝って、上に行きたい」と清々しく前を向いていた。
■プロの水に慣れ、本領を発揮してきた遠藤龍匠
準決勝で北野に敗れてから3ヵ月後の12月3日、遠藤は神奈川県川崎市のカルッツかわさきで再起。試合開始早々、狙いすました鋭い右ストレートで2勝(1KO)2分無敗の阿部大翼(青木)を鮮烈に倒し、会場をどよめかせると最後は左、右、左、右の4連打を決め、豪快に沈めた。78秒の速攻劇。これまでとは明らかに動きが違った。
4月のデビューからコンスタントに4戦を重ね、「ちょっとずつプロのリングに慣れてきた」という。アマチュア時代の当日計量が前日に変わり、当日までのリカバリーの感覚がつかめてきたことを一番の要因に挙げ、「今日はパワーの“乗り”が違った」と実感を込めて振り返った通りの出色のパフォーマンスだった。
杉浦との初陣は上々のスタートを切るも「気持ちが高ぶって、攻め過ぎた」と後半に入るとスタミナも落ちた。「子どもの頃から憧れてきたプロのリングで、思うようにパンチが当たるし、『楽しくてしょうがない』と話していた」と笠康次郎トレーナーは高揚する愛弟子を抑えられなかったことを悔やむ。「やっと違いを見せられたけど、まだまだ」と期待の裏返しで厳しい及第点を与えた。
2020年に閉鎖になったK&Wジムでボクシングを始めた小学4年のときから、笠トレーナーに鍛えられてきた。北野とは同じ神奈川県下で小さい頃から互いの存在を知り、中学の頃はスパーリングをしたこともあった。遠藤は主に日本ボクシング連盟主催のアンダージュニア大会(UJ)で腕を磨き、公式戦で初めて拳を交えたのは高校生のときだった。
関東大会の県予選で対戦し、判定で敗れたこともあった北野とのプロでの白熱の“再戦”は、逆に「攻めるべきところで攻められなかった」と反省する。本領を発揮し始め、はっきりと口にはしなかったが、“3度目”が実現したときは「次こそ」の思いがにじむ。
後楽園ホールでのデビュー戦に続き、師匠の笠トレーナーから受け継いだ『Departure』を入場曲にリングインしたのは2度目。“再出発”を飾り、「いい形で勝てて、来年につなげられる」と巻き返しを誓っていた。
■山本諒真は高校時代の“盟友”に刺激
一方の坂田に対し、「刺激になったし、負けられない」と熱い視線を向けるのは、「元国体王者vs元高校王者」として注目された昨年の東日本ウェルター級準決勝で松野晃汰(神奈川渥美)の前に初回TKOで敗れた山本諒真(DANGAN)。今年2月の復帰戦にも2回TKO負けでまさかの連敗を喫し、「自分はプロボクシングには向いてないのかなと思って、辞めようか悩んだこともあった」と吐露する。失意の底から這い上がり、10月に2回TKO勝ちで再起を果たしたリングで思わず涙をにじませた。
山本が「イッサも苦しい思いをしてきたと思うので」と慮るように、坂田も昨年10月の中日本・西部日本新人王対抗戦で宮澤蓮斗(蟹江)に判定負け。今回が1年越しで勝ち取った全日本のリングになる。この2年、対戦相手の棄権が相次いだことで、思うように試合経験を積めていない坂田の現状にも思いを馳せるが、高校時代に共有したやるせない気持ちも忘れてはいない。
熊本・八代市の出身。中学2年のとき、本田フィットネスジムの元日本ランカー・吉田龍生さんが同・宇土市に開いたアマチュアジムで本格的に練習に励んだ山本は、東海大学附属熊本星翔高1年時の2019年にインターハイ・ウェルター級でいきなり優勝。が、翌年はコロナ禍で大会が軒並み中止に。高校3年の4月には世界ユース選手権に日本代表として出場するが、2年ぶりに開催が決まった高校最後のインターハイにかける思いは強かった。
ところが……。熊本県チームに“濃厚接触該当者”が出て、直前で出場不可となる。大会初日の計量合格直後、無念の不戦敗となった高校の同級生の中に念願の全国大会初出場になるはずの坂田もいた。
恩師の吉田会長をはじめ、「まだまだこれから」と変わらず応援してくれる人たちの期待に応えたい一心で挫折を乗り越えた翌月、坂田も不戦勝で進んだ西軍代表決定戦に4回TKO勝ちし、13ヵ月ぶりに再起。山本もまた「必ずチャンピオンになる」と思いを新たにした。
1月26日のDANGANオール4回戦興行で再起2戦目が決まっている。高校1年のインターハイの時点でスカウトされ、東京に呼んでくれた瀬端幸男・DANGANジム会長が用意する道を信じ、山本は「上を見過ぎず、1試合1試合、確実に勝っていきたい」。チケットの入手が叶わず、全日本新人王決定戦は会場に駆けつけることはできないが、「必ずチャンピオンになると思っている」という“盟友”の勝利を「U-NEXT」のライブ配信で見守る。
■吉野修一郎と対戦したことを誇りに
今年の東日本ウェルター級新人王になった31歳の須賀大地(世田谷オークラ)。全日本新人王に向けた戦いは、トーナメント開幕前から始まっていた。今年2月、高校以来、約12年ぶりにボクシングのリングに立った。相手は山本諒真(DANGAN AOKI=当時)。2回に右カウンターで痛烈に倒し、鮮やかなTKO勝ちでプロデビューを飾った。
もともと同じ階級になりそうな山本の存在は知っていて、「前の年の新人王に出てくれて、ラッキー」と思っていた。が、準決勝で敗れ、「今年も出てくるだろうな」と覚悟していたところに舞い込んだのが、山本サイドからのオファーだった。「ここで対戦を回避しても、どうせ新人王でやることになる。だったら今、やってやろう」と勝負をかけた。
テレビで見たK-1に憧れ、千葉・鴨川の文理開成高(現・鴨川令徳高)に入学後、ボクシング部に入部した。L・ウェルター級で出場した高校3年のインターハイでベスト8、国体では3位の成績を残し、ここで引退のはずだった。一般受験で進学した駒澤大学で軽音楽サークルに入り、卒業後は先輩のロックバンドに加入。その一員として、ずっと活動してきたという。
きっかけは「コロナ太り」。ダイエット目的でキックボクシングジムに入会。昨年、ほんの腕試しのつもりでK-1アマチュアに出場し、全国大会で優勝する。「まだ行けるな、となって。どうせやるならボクシング、プロに挑戦しよう」と30歳でカムバックした。
アマチュア時代、須賀には忘れられない試合がある。高校2年になった春の関東大会決勝。相手は3ヵ月前の選抜で優勝し、すでに全国2冠を達成、その年のインターハイ、国体を制することになる1学年上の吉野修一郎(三迫、当時は作新学院高)だった。まだ競技歴1年の須賀に対し、監督の指示は「3ラウンド、しっかり足を使って、最後まで立っていたら、お前の勝ちだ」。その通りに戦い、大差のポイント負けも、のちにプロでライト級3冠王者となる強豪とリングで向かい合った経験が心の支えになってきた。
「吉野さんと対戦したことがあるということを誇りに思ってます。今のところ人生で一番の強敵なので、思い出すと大抵のことは『大丈夫だな』と思うようになりました」
ベースはアウトボクシングだが、変則的なタイプ。「キックをやったせいで変則な動きが多くなっちゃうんですけど(笑い)、いろんな経験を経てきた僕の人生が今のボクシングに出てるなと感じていて。そこも強みのひとつだと思ってます」と胸を張る。
4年ぶり3度目の新人王挑戦で初めて全日本に進んできた松岡蓮(浜松堀内)に対し、「年齢的にもつまずけない年齢。行けるところまで最短距離で行きたい」と必勝を期す。
■全日本新人王決定戦の組み合わせ(23日/14時試合開始=U-NEXTでライブ配信)
◇ミニマム級4回戦
北野武郎(大橋)
×
坂田一颯(S&K)
◇L・フライ級4回戦
磯金 龍(大橋)
×
上蔀哲汰(S&K) 西軍・技能賞
◇フライ級5回戦
高熊龍之介(松本ACE)
×
坂井 涼(畑中) 西軍・MVP
◇S・フライ級4回戦
佐藤 祐(三迫)
×
藤野零大(カシミ) 西軍・敢闘賞
◇バンタム級5回戦
三浦良斗(ワタナベ)
×
森口山都(クラトキ)
◇S・バンタム級5回戦
須藤大和(伴流) 東日本・技能賞
×
武藤涼太(松田)
◇フェザー級5回戦
牧田健之介(RK蒲田) 東日本・MVP
×
石崎大二朗(LUSH)
◇S・フェザー級5回戦
下村佳輝(三迫)
×
小松直人(森岡)
◇ライト級4回戦
西畑直哉(竹原慎二&畑山隆則)
×
児島弘斗(黒崎KANAO)
◇S・ライト級4回戦=【中止】
川村英吉(角海老宝石)
×
宮川竜成(尼崎亀谷) ※棄権
◇ウェルター級4回戦
須賀大地(世田谷オークラ)
×
松岡蓮(浜松堀内)
◇ミドル級5回戦
赤井英五郎(帝拳) 東日本・敢闘賞
×
冨永一希(仲里)
2024年12月3日 21時24分
2024年12月3日 11時03分
2024年12月3日 10時50分
2024年12月3日 1時42分
2024年12月2日 10時21分
2024年12月2日 6時56分