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2.13 「燃えるような試合を」タイトル初挑戦の小林柾貴 元プロゴルファーの父に感謝のベルト誓う

2024年2月7日 12時29分

 2月13日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインは日本S・ウェルター級タイトルマッチ。日本王者と最強挑戦者が激突する恒例のチャンピオンカーニバルの開幕カードになる。

小林柾貴

 これがタイトル初挑戦の24歳、同級1位の小林柾貴(こばやし・まさき/角海老宝石/9勝4KO2敗)が、今年10月で40歳、“不惑の年”を迎える王者の出田裕一(三迫/17勝9KO16敗1分)に挑む。

 小林にとって、ノーランカーで迎えた2023年は飛躍の1年になった。昨年3月、日本同級3位に躍進していた足名優太(金子)を8ヵ月ぶりの再戦で返り討ちにし、初8回戦で初の日本ランク入り。同10月の最強挑戦者決定戦で、ベテランサウスポーの加藤寿(熊谷コサカ)を3回でストップし、一気に挑戦者の座をつかんだ。

 11連敗、引退、所属ジムの閉鎖……波瀾万丈のボクサー人生を歩んできたのが出田だ。悲願のベルト奪取は一昨年11月。が、またも試練に見舞われる。川崎真琴(RK蒲田=引退)との激闘の代償に左目網膜剥離を発症し、手術。完治まで長期離脱を余儀なくされた。昨年8月、この間に暫定王者となった中島玲(石田)に逆転の2-1判定で競り勝ち、戦線復帰。王座を統一するとともに初防衛に成功している。

 182センチの長身を利し、距離を取って戦うのが小林のスタイルだった。所属していたイマオカジムのプロ退会を機に移籍。石原雄太トレーナーとともに取り組んだインファイトが「自分の性に合った」という。もともと10年前、絶対王者の内山高志に食い下がり、激闘を演じた金子大樹に心打たれ、この道を志した。傍らで一緒に中継を見ていたのが元プロゴルファーの父・正宗さん。心と体が一致した4連勝で勢いに乗る挑戦者は、一番の理解者でボクシングと出会うきっかけをくれた父に「ベルトを見せたい」と意気込む。

接近戦を土俵とする王者に対し、小林は「絶対に面白い試合になる」と力を込める。石原トレーナーも「お互い気持ちが強いので、気持ちで引いたほうが負ける」とする一方で「ポジションとか距離、タイミングを変えたり。小林のほうが戦い方の幅は広い。熱くなり過ぎず、打ち合いのなかで変化をつけられたら」と勝利のポイントを挙げた。《取材/構成 船橋真二郎》

■飛躍の1年を振り返る

――キャリア初のタイトルマッチになります。小林選手のなかで日本タイトルはどのように見てきたものですか。

小林 デビューした頃から「日本チャンピオンになりたい」というのが目標としてあったんですけど。最初は新人王を獲りたくて。で、(東日本新人王の)決勝でポカして、負けちゃって。次はランカーを目指して。

――1歩1歩、段階を踏む気持ちで。

小林 はい。現実主義なんで(笑い)。

――でも、1年前は6回戦を卒業したばかりのノーランカーで、去年の1年でガラッと状況が変わりましたね。

小林 そうなんですよ。A級初戦でランカーから話が来たんで(笑い)。

――その足名選手は一昨年11月に上位の玉山(将弥=帝拳)選手に勝って、日本3位に入っていて。一度負けている小林選手に雪辱したいという気持ちが強かったのではないかと想像しますが(一昨年7月に小林が判定勝ち)。

小林 はい。次も勝てるのかなと考えると精神的にしんどかったですけどね。怖かったというか。でも、逃すわけにはいかなかったんで。

――そういう意味でも接戦に競り勝ったのは大きかったですね。

小林 でも、次の加藤さんとの最強挑戦者決定戦が一番プレッシャーだったかもしれないです。初めてのサウスポーだったんで。

――同門の村上(雄大)選手とスパーリングをかなりしてきたけど、なかなか思うようにいかなかったと言っていましたね。

小林 いやー、結構やりましたね。僕、あんまりスパーリングはやらないんですよ。打たれちゃうんで(苦笑)。でも、サウスポーなんで、頭がおかしくなるぐらいやったんですけど、それでもダメで。どんなに打たれても最後まで諦めないと覚悟を決めて。

――それが3ラウンドに左フックで倒して、TKO勝ち。デビューした頃から目標にしてきた日本タイトルに対する気持ちもあったと思いますが、足名戦、加藤戦を勝ち抜く上で、何が一番大きかったですか。

昨年11月、ベテランの加藤を下して挑戦権を獲得した

小林 場慣れしてきた感じはあります。だんだん練習してきたことを出せるようになってきたかなって。

――それはどれぐらいから?

小林 A級に上がったぐらいからですね。

――A級に上がってからって、足名戦じゃないですか(笑い)。場慣れというのは?

小林 別に最初から緊張はしなかったんですけど……。なんだろ? 自分は本番に強いんだって、自分を勘違いさせて、いくら練習でやられても大丈夫だ、と割り切れるようになったというか。

――対サウスポーに限らず、練習ではうまくいかないことが多い?

小林 もう、B級とか、C級でも、(スパーリングで)結構ボコられるんで。「大丈夫かな?」っていう感じなんですよね。

――あまり自信が持てないということも言っていましたね。

小林 そうですね。全然、自信がなくて。ただ、練習量には自信があるんで、これだけ練習をやってきたんだから大丈夫だって、自分で自分の脳内を勘違いさせた感じですね。

――やることはやってきたからと開き直れたのが足名戦で、そこから自分の力を出せるようになってきた1年だった。

小林 あ、そうですね。2回連続でチャンスをもらったんで、逃せないなっていうのもあったので。

■小さいグローブで殴り合うのが楽しい

――タイトルマッチに向けて、これまでと違う気持ちもありますか。

小林 結構、いつも通りです。楽しみのほうが大きいかもしれないですね。初めてのメインイベントということで……ん? 2回目?

――足名戦が金子ジム主催のメインでした。

小林 そうですね。でも、また状況が違うんで。

――タイトルマッチのメインですからね。ボクシングを始めたときからずっと、そういう場所に立つ自分を思い描いてきたでしょうから。

小林 はい。目標だったんで、楽しみです。出田選手はオーソドックスで、ファイトスタイルも噛み合うと思ってるんで、お客さんもめちゃめちゃ楽しいと思います。

――挑戦権を獲った試合後には、出田選手とは“根性勝負”になると。

小林 はい。絶対に面白い試合になると思います。

――どういう選手だとチャンピオンを見ていますか。

小林 粘り強いんじゃないですかね。諦めないですよね。で、ベテランなんで、まあ、この前もそうだったんですけど。

――加藤選手が38歳で、出田選手は今年で40歳ですもんね。

小林 ベテランには負けたくないっていうのが強いんですよね。

――それはどういう?

小林 みんな、そっちを応援するじゃないですか(笑い)。

――年齢で注目されるということはあるかもしれないですね(笑い)。

小林 はい。注目されて、無条件で応援されると思うんで(笑い)。そういうのをひっくり返してやりたいっていうのがあります。

――“根性勝負”ということで思い描いている展開は打ち合いですか。

小林 はい。KOでも、判定で終わっても、どっちでも面白いと思います。

――勝つためのポイントは何だと考えていますか。

小林 平常心じゃないですか。もしかしたら緊張するかもしれないですけど、そういうなかでも平常心でやれるか。

――緊張ということでは、今までの試合ではどうでしたか。

小林 試合当日の朝は若干、緊張しますけど。毎朝、走るんですよ。

――試合当日の朝に?

小林 はい。井岡(一翔=志成)さんが試合の朝は散歩してるって聞いて。角海老に移籍して1戦目の西川(宏次郎=八王子中屋)選手との試合から。

――(2連敗からの)再起戦でしたよね。

小林 あ、そうです。そこから走って、勝ってるんで。

――ゲン担ぎもある?

小林 はい。自分、めっちゃゲン担ぎするんで(笑い)。まあ、それで気持ちを落ち着かせてるのもあると思いますけど。(会場に)出発するってなるときはもう緊張してないですね。そこから試合まではまったく。

――で、試合中はずっと「ボクシング、楽しい!」「最高!」と言っていると石原トレーナーが(笑い)。

小林 ああ! それ、まったく覚えてないんですよ(笑い)。石原さんは結構、インターバル中に話しかけてくれて、会話があるんですけど。何を言われたか、訊かれたかは覚えてるんですけど、自分が何を発言したかはまったく。

――楽しくてしょうがないと(笑い)。

小林 試合は楽しいんだと思います(笑い)。

――それだけ入り込んでいるんでしょうけど、何が一番の楽しさですか。

小林 試合のグローブ、小さいじゃないですか。あれで殴るのが楽しい気がします。スパーリングは大きいんで。小さいグローブで殴り合うのが。

――逆に小さいグローブで殴られることもある。

小林 その怖さも含めて、楽しいんだと思います。

――それはデビューしたときから変わらない?

小林 そうですね。最初は僕、S・ライトだったんですよ。

――そうか。今は10オンスだけど、最初は8オンスで。

小林 はい。ここ(拳)で殴ってる感触が分かるんで。ああ、楽しいなって。サンドバッグを8オンスで叩くのとはまた違って、殴る感触が。

――殴る感触が楽しい?

小林 はい。殴ると痛いんですけど。当たれば。なかなか当たらないんですけど(笑い)。

――で、これで殴られたらヤバいという怖さのなかでやり合うのが。

小林 そういう緊張感も含めて楽しいです。

――今度はタイトルマッチという舞台で、お客さんもそうですけど、自分自身も思う存分、楽しめそうですね。

小林 はい。勝つか負けるか分からないですけど、それは運命なんで。勝つために練習して、当日は運命に任せて、思い切りやります。

■移籍をきっかけに

――先ほど話に出た西川戦はインに入って、ボディーを叩いたり、それまでの小林選手と違ったから、よく覚えているんですけど。

小林 そうですね。タッパがあるんで、イマオカジムでは離れてやってたので。

――正統派のボクシングでしたよね。

小林 あれが性に合わなかったというか、離れてやったら、どうしたらいいのか自分で分からなくなるんで。

石原トレーナーと

――そうなんですか。ゴリゴリ来る西川選手の攻撃をうまくブロックしながら、インファイトで打ち勝って。あの試合後、石原トレーナーに角海老に来たから勝てた試合だったんじゃないかと話したんですけど。

小林 角海老に来て、石原さんに初めて見てもらったぐらいに「近い距離でもやったほうがいいよ」って言われて。それからですね。

――だいぶ変わりましたよね。

小林 だいぶ。で、勝ってますしね。

――心と体が一致した。

小林 はい。自分の性に合ってますね。自分らしくやれるかなって。それが自信になってるところもあるんで。

――移籍したのはイマオカジムが協会を退会したからですよね?

小林 あ、そうですね。

――角海老に決めたのは?

小林 夜もやってたんで。それだけの理由です(笑い)。そのときはコロナで夜までやってるところがなくて。自分は当時夜19時までバイトをしてたんで、夜でもやれる環境を探してて。

――ああ、その頃は時短で開けていたジムが多かったから。

小林 はい。誰がいるから移籍したいとかじゃなく、それで行っただけです。石原さんは、教え方も分かりやすくて、夜もいらっしゃったんで(笑い)。

――石原さんは、直前(2020年10月)に負けた星大翔(角海老宝石)選手のトレーナーでもありますよね。

小林 あ、そうですね。それは知ってたんですけど、まあまあ、そんなことは別に考えず。星さんは、最初はちょっと(複雑な気持ちが)ありましたけど、スパーリングもするし、一緒に合宿にも行ったし、アドバイスもしてくれるんで。いい先輩って感じで。

――でも、石原トレーナーと組むことになって、結果として。

小林 角海老に来て、一緒にやってきてよかったです。対戦したときに分析したから、教えやすいというのは言ってました。

――ああ、どういうところが強みか、弱みか、対戦相手として分析したから。「近い距離でも」というのも、そういうところからかもしれないですね。

小林 だと思います。

――次の試合は角海老でやってきたことが生きる試合になりそうだし。

小林 いや、ほんとに。やってきたことを全部出して、一発で獲りたいです。

■何かに打ち込みたいと始めたボクシング

――デビューは19歳ですけど、始めたのはいつ頃ですか。

小林 高校1年の終わり頃ですね。地元が(東京西部の)あきる野市なんで、石川ジムに行ってたんですけど。

――あ、最初は立川の石川ジムに。

小林 そうなんですよ。だけど、遊んじゃって、週2、3回ぐらいしか行けてなくて。で、高校2年のときに退学になっちゃうんですよ。学校には行くんですけど、友だちと遊びに出て、昼休みに帰ってくるみたいな(笑い)。授業は午後の2時間だけ受けて。

――学校に行ってなかったわけではなく(笑い)。

小林 出席日数は足りてたと思うんですけどね。でも、そんなだったから、やめてくださいと(笑い)。退学になったら、時間ができるじゃないですか。で、ボクシングを。

――それからイマオカジムに?

小林 はい。バイトをしながら。

――渋谷は離れてますけど、なぜイマオカジムに?

小林 ロバート山本さんがいるじゃないですか。テレビのボクシング企画を見て、(山本さんが練習していた)イマオカジムを知ってたんで。

――プロテストを受けるみたいな?

小林 あ、そうです。で、渋谷にも興味があったんで(笑い)。

――なんか危なっかしいな(笑い)。

小林 ちゃんと週6で練習してましたよ(笑い)。

――退学になって、将来のことをいろいろ考えたりは?

小林 いや。ボクシングができたんで。バイトもできるし、時間を有効的に使えて美味しいなって(笑い)。

――ご家族の反応は?

小林 全然いいよ、みたいな(笑い)。お母さんは心配しますけどね。親父は好きなことをやれよって。ありがたかったですね。

――自信はありましたか。

小林 自信はありました。

――どういう自信?

小林 小、中と野球をやってたんですけど、ちゃんと真面目に続けてたし、何かを続けてやれる自信ですかね。

――ポジションは?

小林 ずっとピッチャーです。でも、結果は全然(笑い)。

――先ほど練習量に自信があると言っていましたが、そういう自信ですか。

小林 そうですね。野球でも練習だけは頑張ってたんで。

――そういう何かを求めていた?

小林 普通に生きてても面白くなさそうだな、というか。友だちは働いてて、それはすごいなと思ってるんですけど。自分は何かに打ち込みたいっていうのがあって。

――それがボクシングだった。

小林 はい。今はボクシングに打ち込めてるんで、楽しいですよね。毎日、楽しいです。

――もともとボクシングにひかれたのは?

小林 中2のときになるんですけど、金子大樹さんが内山高志さんとやったじゃないですか。あれをテレビで見て。

――すごい試合でしたよね。

小林 金子大樹さんに感動したんですよ。ボロボロになって、でも判定まで行ったじゃないですか。結果は負けでしたけど、カッコいいなって。

――ダウンも奪ったし。

小林 そうなんですよ。10ラウンドに。すげえなと思って。親父と見てたんですけど、「こいつ、男だな」って言ってました(笑い)。

――お父さんも感動して。

小林 はい。『はじめの一歩』は読んでたんですけど、僕はボクシングを見るのは初めてで。親父は詳しいんで、(金子が)絶対に負けるって言ってて。

――内山高志は強いチャンピオンだから、と。

小林 はい。でも、何があるか分からないんだなと思いましたね。

――ああいう試合をしたいんですね。

小林 そうですね。今でもYouTubeで何回も見てます。それぐらい好きですね。

――確かイマオカジムでは元日本S・バンタム級王者の石本康隆さんとコンビを組んで。石本さんのセコンドデビューが小林選手でしたよね?

小林 あ、そうです。僕がイマオカジムに入って、半年後ぐらいに石本さんが入ってきて。一緒にやるかって。

――現役に近い元チャンピオンと。

小林 タイミングがよかったですね。厳しかったですけど。

――どういう厳しさですか。

小林 練習も厳しかったですけど、一番は礼儀ですかね。

――人間性というか、そういうところから。

小林 はい。ちゃんと話せとか、敬語を使えとか、そういうことを石本さんに叩き込まれました。ボクシングより、そっちですかね。

――言葉づかい、挨拶とか。そこが変わった。

小林 自分は分からないですけど、小林、変わったなって、周りには(笑い)。

――ボクシングの面で石本さんから学んだことは?

小林 気持ちですね。気持ちが大事だぞって。

――身長とリーチを生かしたボクシングを教えられたけど、そういう基本的なところを大切にする人で。

小林 はい。厳しかったですけど、楽しかったですね。

――あらためて小林選手にとって、日本チャンピオンのベルトはどういうものですか。

小林 めちゃくちゃ欲しいです。一番欲しいです。で、親父に見せたいですね。

――始めるときに背中を押してくれたし、ずっと応援してくれている。

小林 一番、応援してくれてます。で、『はじめの一歩』も親父が買ってきて、それを僕が読んだのがきっかけなんで。感謝してます。

――お父さんはボクシングが好きで。

小林 めちゃくちゃ好きです。

――お父さん、嬉しかったのかもしれないですね。

小林 結構、嬉しかったと思います。親父はまた別のスポーツをやってて。プロゴルファーだったんですけど。

――あ、そうだったんですか。

小林 そうなんですよ。引退して、今はインストラクターをやってるんですけど。

――そういう世界で生きてきた人だから。

小林 はい。理解が早くて。ボクシングをやりやすい環境でしたね。

――元プロスポーツ選手として、お父さんからは何か?

小林 後悔しないように練習をやれとか、体調のこと、食べ物のこととか。それぐらいで。あとは自分の気持ちばっかりです(笑い)。

――自分の勝負が終わって、今度は息子に(笑い)。

小林 結構、夢見てますよ(笑い)。

――それこそ、ベルトを獲ったら。

小林 いや、喜ぶと思いますね。一番、喜んでもらいたい存在です。あとは、お金を払って、見に来てもらうので、お客さんに何かを感じてもらいたいですし、燃えるような試合をします。

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