泥臭くても、しがみついてでも勝つ―― 4.8川満俊輝がホープ高見亨介と決意の防衛戦
2025年4月3日 9時23分
2025年4月2日 15時25分
4月8日の「ダイヤモンドグローブ」はトリプルメインイベント。日本王者が最強挑戦者を迎え撃つチャンピオンカーニバルの一環で、ライトフライ級、フライ級、スーパーウェルター級、全3階級の日本タイトルマッチが東京・後楽園ホールで開催される。
13階級で実施されるカーニバルでも好カードのひとつに挙げられるライトフライ級は世界ランカー対決。王者の川満俊輝(かわみつ・としき、三迫/29歳、11勝7KO1敗)は3団体、同級1位の若き全勝ホープ・高見亨介(たかみ・きょうすけ、帝拳/23歳=試合時、8勝6KO無敗)は4団体で世界ランク入りし、ともに世界へのステップと位置づける一戦になる。
高見は小学生の頃から15歳以下の大会で活躍。目黒日大高校1年時の国体、選抜は1学年上の田中将吾(現・大橋)に決勝で敗れ、準優勝。2年時には1学年下の吉良大弥(現・志成)を破り、インターハイと国体を制した。最後の1年はコロナ禍で大会が中止になり、通算43勝4敗でアマチュアを卒業した。
2022年7月、20歳のプロデビューから2年9ヵ月でのタイトル初挑戦を「やっと決まった」と表現する。「ガツガツくるファイター。気持ちが強くて、パワーもある」と王者の川満を評し、「客観的に見ても面白いカード。すごく楽しみ」と待ちわびた実力証明のチャンスに目を輝かせる。
スピード感あふれるファイトと強気が売り。KOで勝つことに強いこだわりを示してきた。「しっかり倒して、決着をつけたい」と意気込む。高見の中では世界前哨戦という。「もう国内に相手はいないでしょ、防衛戦はいいでしょ、と周りに思わせるぐらい圧倒的な内容で勝ちたい」と野望をふくらませている。(取材/構成 船橋真二郎)
■倒して勝つことを常に意識
――プロでは初のタイトルマッチが決まって、どんな気持ちで試合に向かってきましたか。
高見 決まったときは、やっと決まったかっていう気持ちが一番最初に来て。で、相手の川満選手、チャンピオンですし、もちろん強いので、すごく楽しみだな、という気持ちで練習できてますね。
――やっと、ということは待ちに待っていた、早くやりたかった。
高見 そうですね。そんな感じで待ちに待ってました。早くやりたい! って、ずっと思ってましたね。
――まず1個目のタイトルということだと思いますが、高見選手にとって、この日本タイトルはどういう意味があるものですか。
高見 やっぱり、歴史のあるタイトルだと思いますし、帝拳ジムの歴代の先輩たちも獲ってきてるので、まず1個目、そういうタイトルを獲って、次へのステップアップ、いい弾みをつけるためにも、ここはしっかり獲りたいですね。
――チャンピオンの川満選手のイメージは?
高見 ガツガツくるファイターで、気持ちが強くて、パワーもありますよね。
――この2人の顔合わせで面白くならないわけがないというか、激しい試合、10ラウンド必要ない試合になると、恐らくファンの誰もがイメージしていると思います。
高見 自分自身、客観的に見ても面白いカードだと思うし、すごく楽しみです。そういう期待にも応えたいので、しっかり倒して、決着をつけたいと思います。
――これまでも口にしてきたことですが、倒して勝つことに対するこだわりが強いですよね。
高見 そうですね。倒すことは常に意識してますね。
――あらためて、どういうところから出てくる気持ちですか。
高見 やっぱり、小っちゃいときから見てきて、自分の中で魅力的だなと思うのが倒す試合、KO決着の試合で、格闘技のひとつの魅力だと思うので。自分に注目してもらうためにも強く意識してますね。
――小っちゃい頃、特にこれと印象に残るKO決着のシーンはありますか。
高見 (マニー・)パッキャオがずっと好きだったので、リッキー・ハットンを倒した試合は印象的です。あのドンピシャの一発で決まったKOシーンは、すぐ頭の中で再生できるぐらい焼き付いてますね。
※ハットン戦は高見が7歳、小学1年生の5月。
――そういうKOが理想ですか。
高見 そうですね。ベストはスパッと切って落とすような、そういったKOが理想です。でも、KOっていうのは難しいことだと思ってるんで、どんな形でも倒し切ることを自分の中のひとつのノルマにして、その中で“倒し方”を求めていきたいと思ってますね。
――印象的なのは、相手が効いたとき、チャンスというときの高見選手の相手に攻めかかる迫力というか、倒しにいく気迫が尋常じゃないですよね。そんなことはないんでしょうけど、ディフェンスを一切、考えてないんじゃないか、というぐらいの(笑い)。
高見 いや、もうディフェンスのことは考えてないと思います(笑い)。完全に無意識で行ってますね。でも、(映像で)見てると意外と(相手の攻撃に)反応してるんですよ。それも無意識ですね。完璧に。
――体が反応して、勝手に攻めてるぐらいの。
高見 いや、ほんとにそうだと思います。性格的な部分もあるんですかね。で、倒すチャンスって、そうそうないじゃないですか。行けるときに行くことは、練習の中でも常に意識しながらやってますね。
――絶対に仕留めきるぐらいの。
高見 そうですね。その意識を強く持って。
――そういう中で相手のパンチに反応できるのも練習で培われた本能のようなものですか。
高見 そうですね。小っちゃい頃から(体に)染みついたものではあるのかなと思います。
■現・元世界ランカーとの22ラウンドの経験
――川満選手は攻撃的な選手で、自分の良さを見せられる試合になりそうですか。
高見 そうなると思います。自分自身、持ち味を引き出してくれる相手だとも思っているので、絶対に面白い展開が来ると思います。
――その中で気をつける点は?
高見 川満選手、打ち合いに強いですし、自分と同じようにチャンスが来たらガッツリ攻めてくるタイプなので、ここは付き合うのか、それともうまく脚を使うのか、どう自分の展開に持っていくかを見極めながら。まあ、ある程度はイメージを持ちつつ、毎回、相手と向かい合いながら決めるので。
――川満選手もチャンスは逃さないところがあるし、状況に応じて、攻めたり、引いたり、押し引きを繰り返して、ヒリヒリする駆け引きもありそうですね。
高見 そうですね。そういう展開もスリリングだと思うし、自分自身、楽しみにしているところですね。
――そういう意味でも、リト・ダンテ(フィリピン)、堀川謙一(三迫=引退)、ウラン・トロハツ(中国)、現・元世界ランカーのベテラン勢との3戦の経験は大きいのではないですか。
高見 いや、大きいです。自分の中ですごくいい材料になった試合です。特に最初に判定まで戦ったリト・ダンテ戦は、自分もフルラウンド動けるんだって、自信にもなったし、ああいう老かいでタフな相手をどう仕留めるのかっていう課題も見つかったんで。すごくいい経験になりました。
――次の堀川戦にも生きましたか。
高見 はい。堀川選手も粘り強いので、しっかりフルラウンドやるイメージを持って、試合に臨んで、結果は6ラウンドで倒せたんですけど、ペース配分、抜くところは抜いて、仕留めに行くときはガッツリっていうのを試合でできて。練習でやるのと試合でやるのはまったく違うので、しっかり試合で学べたのが大きかったです。この2試合は自分にとって、いい教訓になりました。
――トロハツ戦は?
高見 トロハツ戦は……まあ、序盤で、これは勝ちに来るより倒されないようにしてきてるなっていうのが見えたんで(笑い)。
――ディフェンシブでしたよね。
高見 どう倒し切ろうか、考えちゃってましたね。もう、終盤あたりで(本田明彦)会長に、あれ倒せないっすよって、言っちゃったぐらい(笑い)。
――そうだったんですか(笑い)。
高見 はい(笑い)。それぐらい消極的過ぎて。でも、強い選手は、それでも仕留めきると思うので。あらためて、自分の甘さを認識できた試合です。
――今回はそういう試合にはならないでしょうけど、そういう相手をどう誘うか、どう引き出すか、それもまた考える材料として、いろいろなことを学んだ22ラウンドになったということですね。
高見 いや、そうですね。毎試合、毎試合、いい経験をさせてもらいました。
■パッキャオ、メイウェザーのファイトマネーに夢を感じて
――キックボクシングを始めたのが幼稚園の頃ですか。
高見 そうですね。で、小学2年生ぐらいからボクシングを。
――知り合いに勧められたということですが。
高見 当時、協栄ジムのマネジャーをしていた大竹さんという方がいて、親父と知り合いだったんですけど。
――大竹重幸さん(現・青木ジム・マネジャー)ですか。
高見 あ、そうです。大竹先生にパンチの練習がてら来てみないか、と誘っていただいて。そこからジュニアの試合にもちょこちょこ出始めて。で、意外とボクシングのセンスあるんじゃない? って周りからも言ってもらえて。
――しばらくキックと並行して。
高見 両方やってました。小学4年生か、5年生からボクシングで行こう、となって。で、中学から帝拳ジムに。
――ボクシングを選んだのは自分の意志で?
高見 それは、子どもながらの考えなんですけど、当時のパッキャオとか、(フロイド・)メイウェザーのファイトマネーを聞いて、すげえ夢があるな、と思って(笑い)。
――億単位で稼げると。
高見 はい。ボクシング、稼げるじゃん! みたいな安易な考えで(笑い)。あとは高校にも推薦で行ける話を聞いて、将来的にもいいんじゃないかって、子どもなりに考えて。
――高校ではコロナ禍で大会が中止になった3年の時を除いて、出場できる全国大会にはすべて出場して。記録を見返すと1年生のときの国体、選抜は決勝で1学年上の田中将吾選手に負けて準優勝、2年生のインターハイ決勝、国体の準々決勝では1学年下の吉良大弥選手を破って優勝しているんですね。
高見 あ、そうですね。吉良くんとはアンダージュニアかな? 全国の決勝で勝ってるんで(2017年3月の全日本アンダージュニア)。3回やってます。
――田中選手、吉良選手は階級も近いし、いずれ巡り会うことがあったら。
高見 そうですね。いずれやるかもしれないですよね。それこそ、堤(聖也)選手と比嘉(大吾)選手もそうだし、あるんじゃないかなって。ほんとにそうなったら面白いですよね。
■亡き友の名前をトランクスに入れて
――体重が厳しくなってきたということも口にしていますが、ライトフライ級にこだわるのは?
高見 一番はチャンスがつかみやすいからですね。今回、タイトルを獲って、次にも、と考えているので。そこでしっかり獲って、(階級を)上げることを視野に入れて。
――次にも、というのは世界ですよね。世界前哨戦という気持ちで。
高見 自分の中では。だからこそ、もう国内に相手はいないでしょ、防衛戦はいいでしょ、と周りに思わせるぐらい圧倒的な内容で勝ちたいと思ってます。
――スパーリングでは、岩田翔吉選手、ユーリ阿久井政悟選手、アンソニー・オラスクアガ選手、以前から世界チャンピオンと拳を交えているんですよね。
高見 ほんとに贅沢な環境でやらせてもらっていて。世界に行ける自信は常にあります。
――もうひとつ、トロハツ戦から昨年3月に亡くなった坂間叶夢さんの名前をトランクスに入れるようになりました。キックの頃からの仲だったんですか。
高見 そうですね。小さい頃からの仲で、家族ぐるみで仲良くしてましたし、去年の1月に新年会みたいな感じで、久々にプライベートで会ったんですよ。タイトルマッチで当たれたらいいよなって、2人で話してたんで。
――キック時代には試合をしたこともあったんですか。
高見 試合はなくて、よくスパーリングはやってました。叶夢は当時、僕より小さかったんで、泣きながらかかってきてました(笑い)。
――ひとつ年下で。
高見 そうですね。あいつも同じ階級で頭角を現してきたところだったんで、いずれやるんじゃないかなって、楽しみにしてたんですけどね。(坂間さんの)お父さんに力を貸してくださいって、名前を入れさせてもらってから、ひとりじゃなくて一緒に戦っている気がして。力を貸してもらってます。それこそ、今回のタイトルマッチはあいつがやってたかもしれないっていう気持ちもあるので。
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