帝拳ジムに西岡、粟生に続く現役3人目の世界チャンピオンが誕生した。31日夜東京・有明コロシアムで行われたWBAダブル世界タイトル戦の第一試合、S・バンタム級戦は、同級6位の下田昭文(帝拳)が王者李冽理(横浜光)と倒し合いの末、大差の3-0判定勝ちを飾り、初挑戦のチャンスをものにして新チャンピオンとなった。
波乱の幕開けは3回。挑戦者の踏み込み鋭く振った左ロングフックがアゴを痛撃し、李は両足はね上げてキャンバスに落ちる。これで勝負ありかと思われたほど強烈なダウンだった。しかし、李は立ち上がり、この回終了間際には逆に右フックを浴びて下田がダウン。
この時点では勝敗の行方は混沌としていたが、この日の下田は李の変則ボクシングをものともせず、その後もスピードで圧倒した。速い動きに乗せて踏み込み鋭く放つ左ストレートがビシビシ決まり、李を後手に回らせる。5回には飛び込んでくる李に絵に描いたような左ストレートをカウンターしてダウンを奪い、8回にも左フックで李にカウントを聞かせた。
快調に飛ばした下田はその後も動きが落ちず、李にペースを与えることなく12回の長丁場を乗り切った。勝敗は判定を聞くまでもなく明らか。事実スコアも島川威とビニー・マーチンが118-109、原田武夫も115-111で新チャンピオン誕生を支持していた。
新チャンピオンは、「本田会長から“魂を込めて戦え”と言われ、弱い気持ちを出さずに戦いました。(勝因は)自分自身に勝ったからだと思います」と晴れ晴れとした表情で語った。
※写真は5回、下田が李からこの試合2度目のダウンを奪った場面