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ライト級王座統一戦 ロマチェンコ×ペドラサ

“ハイテクvsスナイパー” 注目試合を山中慎介が展望
ライト級王座統一戦 ロマチェンコ×ペドラサ

2018年12月7日 18時21分

  日本時間9日、米ニューヨークでWBA世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ、12戦11勝9KO1敗)対WBO同級王者ホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ、26戦25勝12KO1敗)の王座統一戦が行われる。

 オリンピック連覇、プロでで3階級制覇を達成し現代ボクシングの最高傑作と言われるロマチェンコは「ハイテク(高性能)」、こちらも北京五輪出場、プロで2階級制覇のペドラサは「スナイパー(狙撃手)」がニックネームだ。注目のライト級王者対決の展望を、WOWOWが元WBC世界バンタム級V12王者、山中慎介さんに独占インタビューした。

■相手を翻弄してあきらめさせるロマチェンコ

――山中さんはロマチェンコに関してどんな印象を持っていますか。

山中「いままでのボクサーには、あのような動きをする──ダンスみたいに細かいステップで、かつ相手がついていけないリズム。そして、どんどんギアを上げていく──選手がいませんでしたよね。

加えてロマチェンコは足が速いだけでなく、もちろんパンチも速い。そして、ここというときには強いパンチも打てる、そんなイメージですね。相手を翻弄して諦めさせることが多く一発KOの印象は薄いんですが、ローマン・マルティネス(プエルトリコ)戦のように豪快に倒すこともありますから」

ロマチェンコ(左)に右肩手術の影響は出るのか

――あのボクシングはアマチュア(397戦396勝1敗)経験がベースになっていると考えることができますよね。

山中「その戦績はホントかな?と思いますよね(笑)。オリンピックで連続金メダルでしょう。去年は同じオリンピック連覇のギジェルモ・リゴンドウ(38=キューバ)にも勝っているし。どこまで高いレベルの選手なんだと。なかなか苦戦するイメージが湧かない選手ですよね」

■リナレス戦のダウン「ソファから立ち上がりました」

――数少ない苦戦のひとつが今年5月のホルヘ・リナレス(33=帝拳)との試合でした。

山中「ホルヘ(リナレス)とは一緒にトレーニング・キャンプにも行ったし、もちろんジムワークでも一緒だったりしたので、ほかの人とは違う感情であの試合を見ました。だから6ラウンドにホルヘがダウンを奪ったときはソファから立ち上がってしまいました。

ロマチェンコが10回TKO勝ちを収めたわけですが、それまではポイントも競っていましたよね(三者三様)。世界チャンピオンのなかでも頭ひとつ抜けた者同士の対戦だったので、本当に面白い試合でした」

――あの試合でロマチェンコは右肩を痛め、試合後に手術しました。今回、その影響は考えられますか。

山中「12月に試合をすると決めたほどだから問題はないんじゃないでしょうか。しっかりトレーニングをしているだろうし、だから不安もないのでは。影響はないと思います」

■ペドラサは距離が長くアッパーがうまい

――対戦相手のペドラサ(26戦25勝12KO1敗)については、どんなイメージを持っていますか。

山中「S・フェザー級時代に1敗はしていますが、そのデービス(ジャーボンテイ・デービス=現WBA世界S・フェザー級王者)戦でも持ち味は出していたと思います。ペドラサに関しては、第一に「長い」という印象ですね。長いというのは距離のことなんですが、そうではない中間距離や接近戦でもアッパーやフックが打てる選手ですね。

タイトルを奪ったライムンド・ベルトラン(37=メキシコ)戦でも狙い澄ました左アッパーでダウンを奪っていますから。あれは得意なパンチのひとつですね。今回も狙ってくるのではないでしょうか。相手がロマチェンコとなるとそう簡単に当たるとは思えませんが、タイミングがいいので警戒させるだけでも意味があるでしょう」

ペドラサ(右)は体格差を生かすことができるか

――体格を見てみると、身長173センチ/リーチ180センチのペドラサに対しロマチェンコは170センチ/リーチ166センチと差があります。この体格差は影響しそうですか。

山中「ロマチェンコの身長は実際には170センチはないでしょうね。ホルヘと戦ったときも開始前には体格差を感じましたが、試合が始まってみるとそんなことを忘れさせるような戦い方をしました。だから影響はないのではないかと思います」

■ペドラサは左右どちらでスタートするか注目

――ペドラサは右構えでも左構えでも戦えるスイッチ・ヒッターですが、今回はどちらが有効だと思いますか。

山中「ロマチェンコが相手となると最初は距離をとりたいはず。そのためにも右構えでスタートするのではないかと思います。サウスポー同士で向き合うよりも右構えだと左ジャブで相手との距離がとれるので。そして状況を見ながら左構えにスイッチする可能性が高いのではないでしょうか」

――どんな展開を予想しますか。

山中「あくまでも僕の展開予想ですが……まずペドラサが距離をとって様子をみる。ロマチェンコは軽く触るようにパンチを当てながら距離を測って徐々にリズムを上げていく。ロマチェンコは相手の力が分かると自分から前に出て接近戦を試したりするので、そこからが勝負でしょう。

ロマチェンコのパンチでいちばん威力があるのはホルヘを倒した左ボディブローだと思うので、その巻き込むように入るボディブローが決まれば勝利に大きく近づくと思います」

■ペドラサ奮闘予想も5-1でロマチェンコ優位

――ペドラサにもチャンスはありますか。

山中「ペドラサに関して注目したいのは、まず左右どちらの構えでスタートするのかという点ですね。そしてロマチェンコの足捌き、動きに対してどうパンチを当てようとするのか。そのあたりがカギになると思います。 サウスポーで戦う場合でも右ジャブは重要になるでしょう。

ペドラサにとって厳しい戦いになることが予想されますが、ロマチェンコが接近してきたときには逆にチャンスも生まれると思います。“接近戦=ロマチェンコが足を止める瞬間”でもあるので。 ペドラサもショートレンジでの戦い方が巧いので、番狂わせが起こるとしたら近距離での戦いになったときではないでしょうか。タフなベルトランからダウンを奪った左アッパーは大きな武器ですよね」

――山中さんなりのオッズ、そして勝敗予想を。

山中「オッズは5対1ぐらいでロマチェンコ。結果予想としては、デービスが(ペドラサに)7回TKO勝ちですよね。それを参考にすると……ロマチェンコの12回判定勝ち。ペドラサが頑張ると思いますよ」

 WOWOWではこのビッグマッチを「エキサイトマッチスペシャル ボクシング史上最高傑作 ロマチェンコ統一戦!」として、12月9日(日)午後0時から生中継する。また同24日(月・休)には、今年のベストマッチが決定する「エキサイトマッチ~世界プロボクシング 2018年総集編」を放送する。Photos/Getty Images

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