東福岡高校の先輩・後輩対決再び――。14日、東京・後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」で日本S・フライ級王者の山口仁也(三迫/26歳、7勝2KO無敗1分)に最強挑戦者決定戦を勝ち抜いた同級1位の吉田京太郎(ワタナベ/28歳、7勝4KO4敗)が挑戦する。空位の東洋太平洋王座もかけられ、勝利すれば一気に2冠を手にすることになる。
両者の激突は昨年4月以来の因縁のリターンマッチ。1年前の王座決定戦では2学年下の後輩・山口が小差判定で吉田を振り切った。先輩として「今までの負け以上にめちゃくちゃ悔しかった」と吉田。プロ初のタイトルより「リベンジの気持ちのほうが大きい」と力を込める。

町田トレーナー(左)、応援に駆けつけた同い年で仲の良い重岡優大さん(右)と(2025年11月12日)
前回は試合1ヵ月前に急きょ出場が決まり、準備期間が短かったという事情もあったが、「あれがあのときの自分の実力」と素直に受け止め、この1年、この日のために牙を研いできた。
特に山口が距離を詰め、接近戦に活路を求めてきた中盤から「一緒になって、正直に打ち合ってしまった」のが反省点。「もともとボクシングの幅では自分が上」という自負がある。「しつこく前に出て、手数で押し切るのが強み」の山口に対し、「自分が持っている引き出しを全部使って、差をつけて勝ちたい」というのが今回の吉田のテーマになる。
担当の町田主計トレーナーは「見映えも勝敗を分けた」と見て、「ロープ際に詰まらないこと、サイドに動くこと、先手で攻めること、手数を出すこと」とポイントを挙げ、吉田に徹底して意識づけてきた。
この4月3日にWBA・WBO統一世界L・フライ級王者レネ・サンティアゴ(プエルトリコ)に挑戦した先輩の谷口将隆と2ヵ月あまりの期間、スパーリングを重ねてきた。まったくタイプは異なるが、「山口よりやりにくくて、レベルが高い」元WBO世界ミニマム級王者との手合わせが自信になっている。「自分が常に主導権を取って、チャンスがあったら倒したい」。明白な内容のリベンジを宣言した。(取材/構成 船橋真二郎)
※「ダイヤモンドグローブ」は14日18時の第1試合開始から三迫ジムのYouTubeチャンネル『MISAKO BOXING TV』でライブ配信される。

昨年11月、吉田(右)は比連﨑爽晏楽(川島)に2回TKO勝ちで挑戦権獲得
■もっとやれることがあった
――昨年11月の最強挑戦者決定戦に勝って、再戦の機会をつかみました。
吉田 そうですね。後輩に負けたっていうので、今までの負け以上にめちゃくちゃ悔しかったんですよ。その再戦になるんで。絶対にリベンジを果たして、ベルトを奪ってやろうと思います。
――気持ちとしてはプロ初のタイトルよりも、リベンジが大きいぐらいですか。
吉田 リベンジの気持ちのほうが大きいですね。
――前回は先輩の高山(涼深)選手が返上して、3月18日に試合をした直後に急きょチャンスがまわってくる形で。準備期間としては約1ヵ月でした。
吉田 でも、話があったのが、その試合が終わって、ほんとにすぐだったんで。体重もそんなに戻ってなかったし、そこは問題なかったと思います。
――対サウスポーの準備期間としては短かったのでは?
吉田 もしかしたら、そういう影響もあったのかもしれないですけど。でも、それまでも試合に向けた練習は積んできて、そこからまた練習を積めたんで。あれがあのときの自分の実力だったと思ってます。
――そう受け止めた上で、1年前の試合をどう振り返りますか。
吉田 もっとやれることがあったな、というのが一番ですね。一緒になって、正直に打ち合ってしまったんで。正面で受け止めすぎたというか……。ずっとロープ際に詰まらされた状態で、そこでやろうとしすぎました。もっと横に動くとか、もっとズル賢く、クリンチで切るとか、押し返すとか。ちょっと考えても、もっとやれることがあったなっていう。
――相手に付き合ってしまったのは、特に山口選手が出てきた中盤あたりから。
吉田 そうですね。で、あのときは必死で、(パンチを)合わせられる、合わせられる、どこかで合わせてやろう、というのがずっと頭にあって。その場でやっちゃいましたね。
――思ったよりパンチが当たるという感覚もあったんですかね。
吉田 それはありましたね。当たるから、より狙っちゃったというか。多分、山口は多少もらうことは気にしてなくて、しつこく前に出て、手数で押し切るのが強みだと思うんで。
――1回、経験して、いろいろ考えられる材料にはなりそうですね。
吉田 そうですね。もともとボクシングの幅では自分が上だと思ってるんで。
――その幅を使い切ることなく、限定したところで戦ってしまった。
吉田 そうなんですよね。だから、もっと自分が持っている引き出しを全部使って、今回は差をつけて勝ちたいですね。前回が前回だから、もう1回やっても、また山口だろって思われてると思うんで。しっかり勝ちたいです。
――明白な差をつけてリベンジを果たしたい。
吉田 そうですね。だから、自分が常に主導権を取って、チャンスがあったら倒したいですし。判定でも僅差とかじゃなくて、何回やっても吉田だろって、思われるぐらいの差を見せて勝ちたいと思ってます。

元世界王者の谷口(右)と2ヵ月あまり、スパーリングを重ねた
■谷口将隆とのスパーリング経験を生かす
――劣勢のなかで9ラウンドに山口選手を倒しました。あの右は今、どう捉えていますか。
吉田 あれは9ラウンド目にして、バチッとハマったというか。
――先ほどの話で、合わせられる、合わせられるで、狙い続けてきたパンチが。
吉田 ようやく9ラウンド目で合った。そんな感じです。
――それこそ、自分が主導権を取って、本来のボクシングの幅、引き出しを使って、ああいう場面をつくりたいですね。
吉田 そうですね。ずっと谷口さんとスパーさせてもらってるんですよ。いろいろアドバイスももらって、それを試してみたり。やっぱり、うまくいかないときが多いですけど、うまくいくときもあって。これが山口だったら、もっと楽に合わせられそうだな、と感じる瞬間があるんで。そう考えると前回は9ラウンド目でバチッと合った場面をもう少し早いラウンドに持ってこれるかな、というのはあります。
――山口選手とはタイプが違って、もっと動くし、ポジションをこまめに変えて、ボディーワークも柔軟で。より合わせづらい相手ですよね。
吉田 元世界チャンピオンですからね。山口よりやりにくくて、レベルが高いんで。谷口さんとスパーした経験を生かして、序盤からチャンスをつくれるようにしたいですね。

谷口(左)とのスパーリングで多くを学んだ
――この1年、どんな気持ちで過ごしてきましたか。
吉田 基本的に僕は目の前の試合に集中するタイプなんですけど。1年前の試合で出てきた課題、(上体が)浮き気味になってたのを重心を落とすとか、ロープに詰まらないように横に動くとか、強いパンチじゃなくても手数を出す、そのなかに強打を混ぜて、メリハリをつけるとか、あの試合で出た課題をシャドー、サンドバックから意識して、スパーのなかでもやってきました。
――ずっと山口戦を意識して。
吉田 そうですね。再戦ができるまで、もう少し時間がかかると思ってたんですけどね。運よく挑戦者決定戦に出れることになって。その試合で初めて(日本人を)しっかり倒して勝てましたし、思ったより早くチャンスが来たんで、自分は運があるなと思ってますね。
――2つ違いですが、どんな後輩でしたか。
吉田 おとなしかったです。みんなとワイワイするような感じじゃなくて。僕がかわいがってた後輩が仁也をかわいがってて、3人でご飯とかありましたけど。話しても、あんまり目を合わせてくれないな、みたいな(笑い)。まあ、真面目な感じで、練習もよくしてたし。確か中3の終わりぐらいから練習に来てたと思うんですよね。推薦が決まって。
――入学前から。
吉田 はい。そのときから巧いなって、当時はボクシングが巧い印象だったんですよ。だから、プロになってから見て、あれ? こんなんだったっけ? みたいな(笑い)。
――イメージとは全然、違ったんですね。
吉田 はい。ボクシングは。普段の感じは……それこそ、王座決定戦をする年の1月に東福岡のOB会で会ったときは、しっかりコミュニケーションを取れるようになったなと感じましたけど。で、そのOB会のとき、プロとか大学の現役の選手が前に出て、みんなに紹介されるんですよ。僕と仁也が同じ階級だから、司会の人が「この2人、もしかしたら試合するかもしれないですね」と笑い話にして場を盛り上げてたら(笑い)。
――まさか2ヵ月後に(笑い)。
吉田 まさかですよね(笑い)。その時点で僕は3月に試合が決まってて、仁也は4月に高山さんと決まってたんで。今年も1月にOB会はあって、僕も誘われたんですけど、断りました。仁也が来ると聞いたんで。試合をすることは決まってましたからね。

スパーリング後、町田トレーナー(右)と課題を確認する
■相手の得意な時間を短く、自分の時間を長く
――ボクシングを始めたきっかけはお兄さんの恭輔さん、正道さんですか。※
吉田 お兄ちゃんですね。野球をやってたんですけど、練習が面白くなくて、小学校の3年生のときに1回やめて。で、中学生になって、部活に入らないとなと思って、野球部に入ったんですけど、やっぱり練習が面白くなくて(笑い)。中1の9月に福岡帝拳に。
※ともに福岡帝拳ジムからデビュー。のちに帝拳ジムに移籍する恭輔は京太郎が小学6年生の年の全日本新人王(S・フェザー級)。正道は高校1年生の年の西部日本新人王(バンタム級)。
――きょうだいは6人?
吉田 6人です。恭輔が次男、正道が四男、僕が末っ子で五男です。
――2人の影響は大きかった。
吉田 大きかったと思います。よく遊びでやってはいたんですよ。小っちゃいときから兄ちゃんとグローブを着けて、部屋でボクシングごっこみたいな。恭輔は8歳離れてるからヒザ立ちで、オレが顔面めがけて殴りに行くけど、全部よけられて。3つ上の正道とは、オレは顔面あり、正道は腹だけだったんですけど、よく泣かされてました(笑い)。
――2人はアマチュアではやってないんですよね?
吉田 やってないです。2人とも中卒で福岡帝拳からプロに行って。自分も中学校を卒業したら、プロになろうと思ってたんですけど。
――それがどうして?
吉田 今の東福岡の福岡(竜太)監督が恭輔の幼なじみで、福岡帝拳から東福岡に行って、立教までアマチュアでやってた人なんですけど。プロでやるにしてもアマチュアでやっておいたら、と勧められて。で、1回、練習に行かせてもらったら、強い人たちがいっぱいいて。実戦(練習)がいっぱいできるな、と思って。
――2つ上に沖島(輝、翼)兄弟、ひとつ上に北浦(龍馬)選手、保坂(剛)選手、宝珠山(晃)選手、廣本(彩刀)選手とか、いろんな選手が。
吉田 はい。そういうのを見て、ここなら強くなれるな、と思って。で、卒業したらプロに、と思ってたんですけど。推薦をもらえたんで、大学も行っとくかって(笑い)。
――近大では、ひとつ上に西田凌佑選手、峯祐輔選手、同学年に中井龍(=龍王)選手、で、井上(颯、彪)兄弟がいて。
吉田 競争が激しかったですね。
――西田選手とは、リーグ戦で優勝した3年生のとき、同じライト級の1、2で一緒に出ていて。よくスパーリングもしたのでは?
吉田 よくやってもらってました。西田さんとは大阪のオープン戦で試合もして、フルマークで完封負けだったんですけど。でも、正直、今みたいになるとは思ってなかったです。
――振り返るとアマチュアでやって、よかったですか。
吉田 よかったですね。そういう強い人たちのなかで揉まれたのもそうですし。大学のときは、名城(信男)さん(コーチから吉田が4年生になる年に監督に)によく教えてもらってたんですけど、パンチを打つときの体重の乗せ方とか、拳の当て方とか、プロっぽい技術をいろいろ教えてもらったんで。
――個人の結果で言うと、高校3年になるときの選抜3位が最高成績で、それが唯一の全国大会で。
吉田 そうですね。大学のときは予選で負けてたんで。全国はその1回だけです。
――山口選手も大東文化大学2年のときの国体3位が唯一の全国大会で、東福岡高校では1回も出れなくて。そういう2人がプロの日本タイトルを争っているのも興味深いというか、見る人の見方も変わると思います。
吉田 そう言われてみると似てるかもしれないですね。自分もアマチュアで結果を残せなかったけど、結果を残してやろうと思って、プロに来て。仁也もそうだったと思うんで。
――先輩・後輩対決であり、アマチュアで悔しい思いをした同士の戦い。
吉田 仁也は前回、重里(侃太朗=志成)選手と再戦だったじゃないですか。最初は横の動きを使おうとしてる意識が見えましたけど、最終的に手数で押してくる感じになって。今回もいろいろ考えて、変えてくると思いますけど、競ってきたら、最後はそうなると思うんで。
――1年前も同じで、そこからが勝負かもしれないですね。
吉田 そこで上回りたいですね。自分が持ってる引き出しを駆使して、いかに相手の得意な時間を短くして、自分の得意な時間を長くできるか。絶対に結果を残してやる、と思ってプロに来たんで。後輩にリベンジして、ひとつの証として、絶対にベルトを獲ります。


