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4.18 日本フェザー級王座返り咲き狙う佐川遼 無敗のホープ松本圭佑に「何が何でも勝ちたい」

2023年4月17日 11時30分

4月18日、後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のメインは注目の日本フェザー級王座決定戦。3代前の元日本同級王者で世界ランキング(IBF8位、WBC13位)にも名前を連ねる実力者の佐川遼(三迫/29歳、12勝7KO2敗)と、小学生の頃から注目を集め、豊富なアマチュアキャリアを経てプロに転向以来、7戦全勝7KOの快進撃を続けるホープ・松本圭佑(大橋/23歳)が激突する。

両者はどんな思いを持って、この一戦に臨むのか。2019年9月、阿部麗也(KG大和)との王座決定戦を制して一度はベルトを巻くも、3度目の防衛戦で丸田陽七太(森岡)に7回TKOで敗れ、王座から陥落。2年ぶりのベルト奪還を目指す佐川のインタビューをお届けする。(取材/構成 船橋真二郎)

■世界に行くために絶対に落とせない

――2度目の日本タイトルは、最初に獲ったときとは立場も違うと思いますし、意味合いも変わると思います。

佐川 そうですね。前の阿部選手のときは、パッとチャンスが回ってきて、言い方は悪いんですけど、獲れたら“もうけもん”というか(笑)。キャリアは向こうのほうが上でしたし、自分はチャレンジ精神で、ガムシャラにやって獲れた感じだったんですけど、今回の試合は何が何でも落とせないので。前の阿部選手との王座決定戦と比べて、重みが違いますね。

――3月で29歳になって、この先を考えると意識が変わってきているところもありますか。

佐川 年齢を考えると残り少ないと言ったらアレですけど、この先、世界に行くためには、こういうチャンスは絶対に落とせないですよね。

――持っていたベルトを獲り返す試合でもありますが、丸田選手に負けて(2021年2月)、一度は王座から落ちて、ベルトに対する気持ちも違いますか。

佐川 前にチャンピオンになったときは、そこまで感じなかったんですけど、ベルトを持ってると持ってないでは人の反応も違いますし、チャンピオンは特別な存在なんだなって、失ってみて、あらためて気づいたところもありましたね。

――松本選手とは大学(東京農業大)の先輩・後輩になりますが、6つ違いで直接の面識はなかったそうですね。

佐川 そうですね。1回だけ、農大の学園祭……収穫祭って言うんですけど、最終日にOB会があって、(ボクシング部の)道場に集まるんですよ。自分と同期で1回、遊びに行って、顔を出したときに監督から、現プロの佐川から一言もらおうかってなって、話したときにチラッと見たら、まだ大学生だった松本圭佑がいたぐらいです(笑)。

――2月14日に後楽園ホールのリングで顔を合わせたのが初めてということですね(※)。

※松本が敢闘賞に選ばれた1月度月間賞の表彰式と合わせ、両者がそろって、試合を告知した。

佐川 はい。初めてでしたね。

――実際に向かい合って、感じたものはありますか。

佐川 第一印象としては、あ、意外と大きくないんだなっていうことぐらいですかね。前に1度、まだタイトルマッチが決まってないときなんですけど、後楽園ホールに試合を観に行ったときにエレベーター待ちをしている松本選手を見かけたことがあって。そのときは体がめっちゃデカいなって思ったんですよ。その印象があったんで、意外と同じぐらいなんだなというのは感じて。(負けた)丸田選手もデカいじゃないですか。「おっ」と思ってたんですけど、ちょっと勝率が上がったかなっていう(笑)。

――丸田選手ほどは身長が高くないと(笑)。では、対戦する相手として見たときの松本選手の印象はいかがですか。

佐川 やっぱり巧いですね。基本のジャブ、ストレートはもちろんなんですけど、細かい部分が巧いんで、そこをどう崩していくかですね。多分、真正面のスピード勝負では勝てないかなとは自分の中では思ってるんで。フェイントなりで、まあ、いつも通りですけど、タイミングをずらしてっていう戦い方を最大限に生かしていくことが自分の勝機かなと思ってますね。

――印象的なのは巧さ、スピードですか。

佐川 ジャブが速いですね。映像で見た感じ。で、丸田戦では左のジャブ、フックを意識しすぎて、右ストレートで効かされたんで、どのパンチにも警戒を持って、ずっと練習できているので。その負けた試合を糧にできているかなというのはありますね。

――丸田選手に左を警戒しすぎてやられた分、松本選手に対しても。

佐川 能力値で言えば、松本選手は左が突出してて、残りもすべてまんぱんぐらいの意識を持って。結局は全部、巧いと見立てている感じです。

■この1年で新しい自分に

――本来だったら昨年秋に最強挑戦者決定戦をやる予定が、対戦相手が前哨戦で負けたことでなくなってしまいました。挑戦権は得ましたけど、元世界王者の久保隼選手(真正=引退)に3回KO勝ちしてから、ちょうど1年の試合間隔があきました。

佐川 でも、1年あいてしまったというよりは、1年間の準備期間ができたと捉えられてますね。試合がない分、相手の対策をしなくていいので、やりたい練習ができましたし、新しい自分になれたところがあるので。

――試合が重なると練習が相手の対策中心になるところ、自分に足りない課題に取り組んだり、やりたいことを思う存分できた。

佐川 1年という期間を生かして練習できましたね。加藤(健太トレーナー)さんから課されたこともありましたし、ずっとやってきたことも身になったので。それを今回の試合で出せたらなと思います。

――いつも通りのタイミングをずらして、ずらして、という戦い方の中で。

佐川 はい。そこにプラスアルファで出せたらいいですね。

――そういう意味では、ここからは新しいことを身に着けるとか、力を貯める期間とは言っていられないかもしれないですしね。

佐川 そうですね。ここでタイトルを獲って、防衛して、世界への足掛かりにできればと思っているので。ここから一気に駆け上がっていくための1年だったんだって、自分の中ではポジティブに捉えられているところですね。

――では、今回の試合でどう成果として表れるのか、自分でも楽しみというか、新しい自分に期待しているところもありますか。

佐川 前の松本戦のような……。

――前の松本戦……。ああ、松本亮選手(大橋=引退)との試合ですね(※)。

※2018年9月、6戦目で世界挑戦からの再起戦だった松本の大橋ジムの同姓の先輩、松本亮を3回TKOで下した佐川の出世試合。

佐川 はい(笑)。もしかしたら、あのときみたいな、すごい勝ち方ができるかもしれないですし。自分は普段、自信ないんですけど、たまにやってくれる自分がいるんで。その自分を出せれば。

――たまにやってくれる自分ですか(笑)。佐川選手が勝った阿部選手がIBFの挑戦者決定戦というチャンスをつかんだことも刺激になるのではないですか(※)。

※4月8日、キコ・マルティネス(スペイン)を大差判定で下し、世界挑戦権を獲得した。

佐川 まあ、丸田選手や前田(稔輝=グリーンツダ)選手という強い選手に勝って、そういうチャンスをつかんだのは、阿部選手自身がすごいと思いますけど、そこにフェザー級でたどり着いたということは自分の目標にもなるんで。今回の試合に対しても絶対に負けられないっていうモチベーションになりますね。

――言える範囲でどういう試合展開をイメージしていますか。

佐川 自分の中では、前半はポイントを取りつつ、自分のほうが有利な形でハメて。後半、引き離してKO、TKOを狙っていきたい、試合の構成としては、そんな感じですかね。

――いい形で中盤、後半を迎えて。

佐川 ただ、松本選手、後半のラウンドのデータがまったくないので。後半に入ってもスタミナが落ちないイメージもありますし、あっちの爆発力で前半に効かされたり、もしかしたら倒されることもあるかもしれないですし。まずは前半、松本選手の巧さに対して、どれだけ対応できるかじゃないですかね。

昨年4月は元世界王者の久保に快勝した

■強い松本圭佑をイメージして

――松本選手は小さい頃から注目されてきて、プロでも無敗のホープと期待もされています。そういう選手と相対する気持ちは?

佐川 どうですかね。でも、そこに対して、自分がどうこうというのはないかもしれないですね。一応、プロのキャリアで言えば、自分のほうがちょっと多くやってますし、元チャンピオンという肩書もあるんで、いろんなコメントとかでも、まだ佐川のほうが有利なんじゃないか、松本選手はまだ早いんじゃないかっていう声もありますけど、そういう意見に左右されて、安心するのが怖いというか。自分のアドバンテージであるプロのキャリアは“なし”にして。そうですね。自分の中では消してますね(笑)。

――あえて自分で。

佐川 はい。自分への戒めとして。有利とは思いたくないというか。まあ、松本選手のほうが始めた年齢が早くて、キャリアとしては長いのは間違いないので。そういうふうに不利という立場をつくったほうが自分を追い込めますし、まだまだ足りないっていう実感の中で自分を持っていけるので。

――若手にプロの厳しさを、みたいな感じではないわけですね。

佐川 いや、でも、強いですよ。プロになった最初のほうは、いいパンチをもらったり、ダウンを取られたりもありましたけど、最近はプロのボクシングにアジャストしてきた感じが見えるんで。

――松本選手は元日本ランカー2人とはやっていますけど、現役のランカーとはやっていないという点は、どう捉えますか。

佐川 自分に有利な部分を探すなら、強いのとやってないじゃん、キャリアを積んでないじゃんとか、思うかもしれないですけど。メンタル的には自分が不利、ボクシングキャリアの長い選手と戦うことをテーマにやってきたので。そこに対しても、どうこうはないですかね(笑)。

――そこは徹底して(笑)。

佐川 まあ、練習相手として、井上尚弥選手、井上拓真選手とか強い選手ともやっていると聞くので、そこに自信を持ってくるんじゃないかなとイメージしてますけどね。自分の経験としても強い選手とやると自信になるので。

――そういう覚えがありますか。

佐川 大学の頃ですけど、青森から来て、先輩の中澤奨さん、斎藤一貴さんにスパーリングでボコボコにやられるんですけど、その経験がリーグ戦に出たときの自信になって、いい成績を残せたのがあるんで。人によるかもしれないですけど、普段から強い人たちとやることによって、自分の成長の幅が大きくなると思いますし、強い松本選手をしっかりイメージして。

――では、1年ぶりのリングで、どんな自分を見せたいですか。

佐川 今回、今までの自分の中でいちばんチケットが売れていて、お互いの応援が盛り上がる中でやれると思うんで。それは嬉しいことですし、それだけ注目してもらっている分、ハイレベルな試合にしたいですね。その中で新しい自分というか、この1年、練習してきて、進化した姿を見せられるはずなんで。やってきたことを出して、ここは勝ちたいですね。

――さらに上を目指して。

佐川 そうですね。絶対に負けられないですね。阿部選手もそうですけど、大学の頃から一緒に練習して、ずっと背中を見せてくれる吉野(修一郎)先輩(三迫ジム、大学の先輩)も勝ち続けたら、あそこまでたどり着けるっていうプロセスを見せてくれて。自分も1戦1戦、負けなければ、いずれはたどり着けるんじゃないかって、目標にできることを見せてくれたので。何が何でも勝ちたいです。

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