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今回こそ――再挑戦にかける川浦龍生 8.13先輩からベルトを奪い取った大橋哲朗に挑戦

2024年8月11日 9時00分

 8月13日、後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインはWBOアジアパシフィックS・フライ級タイトルマッチ。初防衛戦に臨む王者の大橋哲朗(真正/25歳、12勝3KO3敗1分)に、これが2度目のタイトル挑戦となる川浦龍生(三迫/30歳、11勝7KO2敗)が挑む。

 大橋は今年4月、後楽園ホールで経験豊富な38歳の王者、中川健太(三迫)に終盤10回TKO勝ちでタイトルを奪取した。川浦にとっては「背中を見てきた」というジムの先輩のベルト奪回、リベンジをかけた戦いにもなる。

 一昨年12月、昨年2月と対戦相手のケガによる2度の延期を経て、ようやくたどり着いた昨年6月の日本王座決定戦は、現王者の高山涼深(ワタナベ)の強打に4回TKOで屈した。「今回こそ絶対に獲る」という固い決意の裏にある中川への思いとは。

 悲願のタイトルに向け、課題にしてきたこと。2年前に移籍した三迫ジムで得たもの。タイトル初挑戦の高山戦に敗れたあと、三迫貴志会長にかけられ、胸に響いた言葉など――。

 「ここで負けたら、次はない」と決意を固め、2度目のチャンスにかける川浦に聞いた。《取材/構成 船橋真二郎》

■自分の弱さを見つめて
――2度目のタイトルマッチになります。
川浦 そうですね。前回、負けてから1年2ヵ月で、こんなに早くチャンスをいただけるのは、すごくありがたいことなので。今回こそは何が何でも勝つ。その気持ちだけです。

――昨年6月に高山選手に負けてから、それほど間隔を空けることなく試合をしてきました。振り返ると再起戦で森青葉(角海老宝石)選手に3回TKO勝ちしたのが、2年6ヵ月ぶりの勝利だったんですね。勝ったことで気持ちが変わるところもありましたか。
川浦 そうなんですよね。あれが久しぶりの勝ちで、移籍してからの初勝利でもあったので。ホッとしたというか、気持ちが少し楽になったのはあります。

――再起してからの森戦、廣本彩刀(角海老宝石)戦を言葉にすると攻撃的なボクシングをしていた印象なんですけど、それがテーマとしてあった?
川浦 攻撃的なボクシングがテーマというより「前に出て、攻める気持ち」ですね。今までの自分は「待ち」になって、自分から前に出て、攻めることができてなかったので。前に行くために、気持ちを前に出す練習をしてきたのが、そういう形で出たというか。

――廣本戦は(初回にダウンを奪って)最終的に判定になりましたけど、終盤から最終ラウンドには「前に出ろ」「倒しに行け」と一斉にコーナーから声が飛んでいたのが印象的でした。その「気持ち」をテーマにして。
川浦 そこが結局、自分の弱いところというのは分かっているというか。前から気持ち、気持ちと自分で言い聞かせて、意識してきたところではあったんですけど、大事なところで弱気が出て、ダメだったりしたので。

――思い浮かぶのは挑戦者決定戦で初黒星を喫した大阪の久高寛之戦(21年12月)で、序盤から川浦選手が快勝ペースでリードしていたのが、ベテランの老かいなテクニック、気持ちに押されて、(1-2)判定で競り負けました。高山戦も突き詰めていくと、そこに敗因があったと。
川浦 そうですね。あの試合も常に強気でいられたか、というと弱気な部分が出てしまったところがあるので。敗因のひとつではあったと思います。

――再起してからの2試合は、攻めるという形で課題を表現できたところもあったのではないですか。
川浦 前までの自分なら出れなかったところでも、出れるようになってきたところがあったので。少しは成長できたのかなと思ってます。

――この1年のスパーリングのなかでも手応えを感じ取れている?
川浦 そうですね。前に来る相手に対して、今まではどうしても下がって、さばくことが多かったんですけど、前で止めたり、同じ土俵で打ち合うこともできるようになってきてるんで。手応えは感じてきてますね。

――川浦選手といえば、テクニシャンで、スピード、カウンターという印象が強いですけど、攻撃的になってきているところと、もとの自分のボクシングとの兼ね合いは、どのように考えていますか。
川浦 今までやってきたボクシングはいつでもできるので。そこに今まではできなかったこともできるようになってきて、自分から前に出る、一発当てて、またすぐに行く、そういうこともできるようなったことで、より強くなれた、自分の幅が広がったと考えています。

「気持ち」再起後はひと味違った部分をアピールしている

■気持ちとスタミナの勝負で負けない
――こんなに早くチャンスが、ということでしたけど、形としては、中川選手が大橋選手に負けたことで、このチャンスが来たということになります。
川浦 そうですね。中川さんが獲られたベルトを僕が獲り返すという気持ちはもちろん強いですし。去年、僕が日本王座決定戦に出ることができたのは、中川さんが持っていたベルトを返上していただいたからなので。獲れなくて、すごく申し訳ない気持ちになりましたし、その分も取り返したいという気持ちです。

――余計に気持ちが入りますね。
川浦 はい。中川さんも移籍組で、同じ階級で、同じサウスポーで、重なるところが結構あるんですけど、日本タイトルを3回獲って、アジアも獲って。お手本というか、ジムの大きな存在のひとりで、背中を見てきた先輩なので。今回こそ絶対に獲る。それだけです。

――4月の中川選手と大橋選手の試合はどのように見ていましたか。
川浦 僕はもう必ず中川さんが勝つと思って、応援に行かせていただいたんですけど。どっちが取っているか、難しいラウンドが続いていたと思うんですけど、一発効いて、倒されてしまって、まとめられて終わってしまったので。ショックでした。

――大橋選手に対して、感じたことは?
川浦 気持ちが入っていたというか、闘志が出てましたよね。トランクスに名前を入れたりとか、やっぱり、穴口(一輝)選手のことがあって、そういう気持ちが強く出ていた試合だったと思います。

――いちばんは気持ちを感じた。
川浦 気持ちを感じました。そこは今回も同じだと思います。

――戦う相手として見たとき、どういう選手だと捉えていますか。
川浦 スピードがあって、あとはスタミナがすごくありそうですね。まあ、スピード勝負だったら別に僕は負けないし、ボクシングの勝負となったら自信があるので。気持ちとスタミナの勝負で負けないことですね。(12ラウンド)ずっとやり合える気持ちとスタミナづくりをやり込んできたので、強い自分を持って、戦おうと思います。

証明できるのは試合のリングの上だけ
――気持ちとスタミナで負けないためにどういうことを?
川浦 そうですね。嫌だな、やりたくないな、と思うことを進んでやるようにしていて。例えば、ジムワークが終わってから、走りに行ったり、ダッシュをしたりとか。いつもやっていることですけど、スパーリングが終わったら、すぐサンドバッグでラッシュするのを自分でもっと追い込んだり、丸山(有二トレーナー)さんにケツを叩いてもらって、またやるとか。それで気持ちと体を強くできてるんじゃないかと思いますけど。

――例えば、日常生活の中で何か意識していることも?
川浦 そうですね。細かいことなんですけど、嫌なこと、後回しにしそうなことを進んでやるとか(笑い)。それぐらいですかね。あと練習でもそうなんですけど、嫌だなと思わない、しんどいなとか考えない。気持ちが嫌になるとスタミナにも影響すると思うので。

――逆に気持ちも前向きにやればスタミナも持つ。
川浦 そう思います。土曜日は毎週、午前中にみんなでラントレしてから、そのままジムに移動して、フィジカルトレーニングをするんですけど。

――加藤(健太)トレーナーのもと、ジム合同でやるフィジカルトレーニング。
川浦 はい。それも最初の頃は嫌だな、と思ってたんですけど(笑い)、今はラントレしてから、フィジカルをやって、また強くなれる、気持ちも体も強くなると普通に思えてやってるんで。土曜日なんで週の疲れがたまって、きついですけど、1週間の締めとして、ここを頑張ろうと思ってやれているので。

――そういう普段の継続で気持ちもスタミナもつくられる。
川浦 それが試合の大事なところで出るかどうかにかかってるんですけど。

――高山選手に負けたあと、三迫貴志会長に「証明できるのは試合だけなんだ」と言われたことが響いたと言っていましたよね。
川浦 あ、そうですね。それはずっと頭に入れていることですね。ほんとにその通りだなと思ったので。いくら、ここでできた、手応えがあると言っても、みなさんに見せられる、自分が披露できる場は、試合のリングの上しかないので。次こそは見せたいですね。

担当の丸山トレーナーと

■この2年のすべてを出す
――三迫ジムに移籍して、初めて本格的なフィジカルトレーニングをやったと。2年ほど経って、効果をどう感じていますか。
川浦 全体的な体の強さ、体の使い方が分かり始めて、それが馴染んできたので。押し合いになっても負けたり、疲れたりもなくなって、そういう不安がなくなってきてますね。

――そういう面でも不安なく、前に出て、攻めるときは攻めることができる。
川浦 そうですね。そういう面でも効果を実感してますね。

――それと増えたのがスパーリング、マスボクシングを含めた実戦練習の機会だと。ジムにはサウスポーも多いし、今回も十分できていますか。
川浦 はい。スパーはもう。宝珠山(晃)くん、山口(仁也)くんがいますし、和氣(慎吾=FLARE山上)選手とも。まあ、前回の廣本選手が右だっただけで、しばらくサウスポーとばっかりやってましたし(笑い)。

――そうでしたね(笑い)。で、先ほど少し名前が出ましたが、移籍してから一緒にやってきた丸山トレーナーには厳しい指導で鍛えられてきたと思います。
川浦 丸山さんには三迫ジムに来たときから、見ていただいて。自分の弱いところを分かってくれて、弱い気持ちが出そうになると厳しく言ってくれて、それに応えるようにやってきて、自分を強くしてくださっているので。すごくありがたいですし、丸山さんとチャンピオンになりたいですし、そういう存在ですね。

――丸山トレーナーも昨年の高山戦がチーフとして初めてのタイトルマッチで、山口選手が日本ユースのベルトを獲りましたけど、メジャーのタイトルということでは、初のベルトになるんですよね。
川浦 それも去年、僕が負けてしまったからなので。だから、今回こそ……もうすべてにおいて、そうですね。ずっと応援してくださっている方もいるので、家族もそうですけど、僕がベルトを獲ることで喜んでもらいたいですし。いつも大事なところで負けちゃうんで、今回こそはチャンピオンになりたい、ほんとにそれだけです。

――それに尽きると。いつか、三十代が近づいてきて、自分に残された時間は限られていると感じたから、言い訳のできない環境で、後悔なくボクシングをやりきりたいと移籍を決断したと。
川浦 はい。30になっちゃったんで(笑い)。今は選手寿命ものびてるんですけど、決して若くはないし、チャンスは何回もあるわけじゃないし。僕は三迫ジムに日本ランク1位で来たんですよ。結局、そこから上がってないので。会長が言われたように自分が強くなったところを試合で見せたいですね。三迫ジムに来て、川浦は強くなったということを証明したいです。

――1位の上のチャンピオンという形で。
川浦 自分がここ(三迫ジム)でやってきたことを出せば、そうなると思うので。

――この2年、やってきたことを全部、出したいですね。
川浦 はい。全部。僕の中では、今回が今までの人生でいちばん大きな試合になるので。ここで出さないと出すところがないですからね。ここで負けたら、次はない。その気持ちでやります。

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