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「圧倒して、レベルの違いを見せつける」“輪島功一の孫”磯谷大心が圧勝でユース王座獲りを宣言

2024年12月7日 23時56分

 23歳以下のA級ボクサーが争う日本ユース・タイトルマッチ。2017年の創設から数多の若手ボクサーが熱戦、激闘を繰り広げてきた。10日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のセミファイナルでは、ウェルター級の王座決定戦が行われる。この階級の初代王者はクドゥラ金子(本多)、2代目は小畑武尊(ダッシュ東保)。3代目の王者が決まる。

 ベルトと日本ランク入りを懸けて激突するのは“輪島功一の孫”磯谷大心(輪島功一スポーツ/23歳、7勝5KO3敗)と加藤大河(DANGAN越谷/21歳、6勝2KO2敗)。磯谷は2022年、加藤は2023年の東日本新人王決勝で敗れており、「絶対に落とせない」と口をそろえる。この一戦もまた熱戦となるか。

 磯谷は幼稚園の頃から始めたサッカーで埼玉の強豪・正智深谷高校に進み、ポジションはゴールキーパー。そこからプロボクサーに転じ、元日本ランカーの父・和広トレーナーと同じ道を歩む。新人王戦の敗退から3連敗と一時は停滞していたが、再び3連勝と上昇してきた。初めての負けが、あらためてボクシングと深く向き合う契機になったという。

 今年4月には東日本新人王決勝で敗れた松野晃汰(神奈川渥美)を2度のダウンを奪った末に判定で撃破。日章学園高校時代に国体優勝、インターハイ準優勝の実績を残している“宿敵”にリベンジを遂げ、成長を証明した。

 西川宏次郎(横田スポーツ)との8月の前戦でA級初勝利。その試合中に痛め、伸筋腱脱臼(ボクサーズナックル)と診断された両拳も回復した。A級初戦の加藤に対し、「後半は(動きが)落ちる印象。圧倒して、レベルの違いを見せつけたい」と意気込む。5歳年下の弟・広太もアンダーカード4回戦でプロデビュー。兄弟そろって勝利をつかみにいく。(取材/構成 船橋真二郎)

■スパーリングを再開し、気持ちが乗ってきた
――次の試合、ユースタイトルがかかると同時に日本ランク入りもかかる試合になります。
磯谷 まず新人王が獲れなかったので。その肩書きは、もう獲れない肩書きになって、ただ“輪島功一の孫”とだけ言われてきたので……。このタイトルは絶対に落とせないですね。

――全日本新人王になっていれば入っていた日本ランクにも入るし。
磯谷 そうですね。勝てばランキングに入って、どんどん強い人たちと争うことになるので。そこも絶対に落とせないです。

――相手の加藤大河選手にはどのような印象を持っていますか。
磯谷 まあ、結構、基本的な動きが多いかな、という印象で……。ワンツー、フック。ワンツー、ボディー。それぐらいしかないかな、という印象です。あとは後半、結構、(動きが)落ちるな、という印象なので。まず自分の長い距離で様子を見て、相手のパターン、タイミング、実際に対峙しないと分からない感覚をインプットして。そこから合わせていければな、と思ってます。

――後半勝負。
磯谷 そうですね。狙い目は後半、4、5ラウンドぐらいか、ちょっと相手が落ちてきたところでまとめ始めようかな、というイメージです。

――それは、いつも通りのやり方?
磯谷 いつも相手の情報を集めてから、ですね。で、事前の情報と合わせて、なるべく安全に。

――事前の情報と同じ、違う、を確認して。違いが小さければ、勝負をかけるタイミングも早くなりそうですか。
磯谷 でも、焦らず、ですね。拳も怖いんで。頭を叩きたくないし。

――それで前回8月の試合で両手を痛めてしまったし。お父さん(磯谷和広トレーナー)から試合後にボクサーズナックル(伸筋腱脱臼)と診断された、と。しばらく思い切り打てなくて、フラストレーションが溜まったのでは。
磯谷 10月まで(思い切り)打てなくて、ようやく打てるようになったのが10月に入ってからだったので。そうですね。もう試合は決まっていたので、だいぶストレスは溜まりましたね。

――本格的なスパーリングは11月に入ってから。気持ちも変わるものですか。
磯谷 やっぱり、スパーリングをしたら、あ、行けるなと思いますね。あ、もう勝てるな、というか(笑い)。

――勝利を確信するぐらい(笑い)。
磯谷 ずっとスパーできないで、普通に基礎練と、ずっとミットもしゃもじ(ハンドミット)だったし、対人も自分はほぼ打たない感じでやってたので。こんなんで行けるかな? みたいなのがずっとあった分、スパーをし始めたら、あ、この感じ、この感じって、気持ちも乗ってくるし、上がりますね。

■新人王戦に負けてからの成長
――振り返ると東日本新人王の決勝で初めて負けて、そこから3連敗と勝てない時期が続きました。苦しい時間だったのでは?
磯谷 新人王で松野(晃汰)くんに負けて、もう負けられない、となって。そうですね。そこから相手がなかなか見つからず。

――復帰戦はスーパーウェルターでしたね。
磯谷 あ、そうですね。1階級上なら相手がいるとなって、で、5ヵ月ぶりに試合が決まったんですけど。なんか、あれ? オレ、何すればいいんだろう? みたいな感じになっちゃって、ずっとスパーリングしててもしっくりこないし、結局、そのまま試合当日まで来ちゃって。

――試合のときは?
磯谷 もう頭が真っ白でした。あれ? オレ、リングにいるけど、何すればいいんだっけ? どうしよう? どうしよう? みたいな。で、わけも分からないまま終わった感じです。

――ある意味、デビューしてから新人王戦まで勢いで来たというか。
磯谷 ほんとにそうです。そこまでほとんど1ラウンドで終わって(4勝4KO中、1ラウンドKO・TKOが3戦)、それこそ、わけも分からず(笑い)、たまたま当たって、倒したような感じだったんで。経験値にもなってなくて。

――どのように立て直しましたか。
磯谷 前までは、とにかくパンチを当てる! とにかく倒す! みたいな(笑い)。そんな感じだったんですけど、そこから、相手はこうだから、こうしようとか、明確に考えるようになってきました。

――お父さんとのコミュニケーションも変わってきた?
磯谷 そうですね。オレからの要望というか、こうやりたい、こういうのを入れていきたいと伝えることは増えたと思います。前はほぼ任せてたというか、基本をずっとやっていた感じだったんですけど。そこからは(2人の意見を)合わせるようになってきたので。

――あらためて、ボクシングと向き合って、相手のことを考えたり、しっかりイメージをつくるようになってきた。
磯谷 はい。去年の8月、3連敗目の上村(健太=LUSH緑)くんとやったときは、負けたんですけど、今までで一番、パンチも見えたし、体も動かせたし、思考も働いて。その試合が一番、経験になったし、自分自身、成長を感じましたね。

――上村選手もいい選手でしたよね。
磯谷 まあ、今、やったら、勝つっすけどね(笑い)。

――で、今年4月の松野選手との再戦。あれが大きかったと思いますが。
磯谷 大きかったです。その前の12月に久々に勝ったんですけど、まだ完全に「よし、勝った」って、自信を取り戻したわけではなくて。そこでしっかり、あの松野くん、1回負けた相手にリベンジしたことで、成長を証明できたので。

――よく倒された相手とやるときは怖いと言いますけど、余計な力が入ったりはしなかったですか。
磯谷 そこは自分を少しはコントロールできるようになってきたというか、しっかり考えるようになって、試合で力を出せるようになってきたので。自分のやることを出すということができたと思います。パンチはあるので、危ないというのはありましたけど、ダウンも2度奪えたし、前の負けたときは完全にペースを取られたのが、ペースを取られないでできたので。

偉大な祖父・輪島功一さんと

■勝ったときの快感が最高
――今まで散々、訊かれたことかもしれませんが、ボクシングをやるとなると、どうしても“輪島功一の孫”というのがついてくることは想像できたと思うんですけど。そこはどう考えて、ボクサーになる決断をしましたか。
磯谷 うーん……。別に自分の中で(輪島功一の名声を)あんまり知らないのが正直なところだったので。そんなに深くは。ほんとのすごさを知ったのは、ちゃんと試合をしてからで。バーッと言われるようになって、そこで、こんなにすげえんだ、と思って。

――初めて実感させられた。
磯谷 実感しました。でも、それが分かってから、そんな自分のメンタルに負担がかかったとかもないし、別に“輪島功一の孫”じゃなくても、ただ普通にボクシングの試合をするとなっても緊張はするんで。利用できるもんは利用するというか、ラッキーぐらいの(笑い)。

――ラッキーですか(笑い)。特に新人王のときは毎試合、ネットのニュースなんかでも取り上げられて。でも、外から見ていて、その状況を楽しんでいるようにも見えましたが。
磯谷 あ、まあ、嬉しいですよね。目立ちたがり屋ではあるので。ニュースに出たいし、テレビとかにも出たいし(笑い)。

――これも何回も訊かれたことだと思いますが、強豪校でサッカーをしていた高校2年生の冬でしたか。お父さんと連絡を取って。
磯谷 あ、インフルエンザになって、寮から家に帰されたときなんですよ(笑い)。そのときに話したんです。

――失礼しました。よく出ているのが『グラップラー刃牙』という格闘漫画が好きで、ということなんですけど。なぜ、サッカーからボクシングに?
磯谷 あ、はい(笑い)。まあ、刃牙……強いのがカッコいいな、と思って、戦いたいと思ったとき、身近にあったのがボクシングだったので。

――サッカー、ゴールキーパーで味わえる感覚では満足できなくなったとか。
磯谷 いや、まあ、あまり試合に出ていたわけではないので、サッカーでは満足できてなかったんですけど……。まあ、ちょうど、進路選択の時期で。で、大学もサッカーで行かせてもらえるところはあったんですけど、でも、これで(サッカーを選択したら)ボクシングとか、戦うことはないんだろうな、とか考えたり……。

――そういう選択を迫られたときに自分の気持ちが確認できたんですかね。
磯谷 そうですね。前々からあったのかもしれないです。ただ私学で、寮に入って、金銭的にも負担をかけてきたんで、ここで辞めるのも申し訳ないな、という思いもあったりして、なかなか(父親に)言えなかったりしたけど。あ、ここで進路を決めないといけないんだ、となって。言ったんだと思います。

――ちょうどインフルエンザで家に帰ってきたタイミングで。面と向かって。
磯谷 そうですね。これは話したほうがいいと思って。

――では、強いのがカッコいいと、戦うことを求めてボクシングに来て、実際にリングで戦ってきて、自分が求めたものを得られていますか。
磯谷 勝ったときは、自分が主役ですからね。その勝ったときの快感が自分の欲しいものなので。気分は最高です。それをどこまで大きいものにできるか、上に行けば行くほど、強いやつを倒せば倒すほど、大きくなると思うので。

――もっともっと大きな快感を味わえるように。
磯谷 そうですね。そのためにもユースを獲って、ランキングに入って。で、ランキングを上げて、日本を獲って、と1個ずつ、上がっていければ。

■弟と一緒に試合するのは嫌?
――印象に残っているのがデビュー戦で。最初のダウンを取ったじゃないですか。大体、デビュー選手だとワーッと行ってしまいがちなところ、再開して、最初の一発目が左ボディージャブ。すごく冷静だなと感じて、よく覚えているんですけど。
磯谷 ああ、そうですね。まあ、あそこでカウンターをもらうのも怖いし、せっかくダウンを奪ったのに、逆転されるのはもったいないじゃないですか。それなら丁寧にやったら、またチャンスも来るだろうし。

――冷静に計算して。
磯谷 計算……というより危機回避的な。そこまでリスクは取らないように。まあ、相手がヨレヨレだったら行くけど、倒したあとは考えるようにしてます。そのへんのバランスを。基本的にはビビりなんで(笑い)。安全に。

――でも、一方で、その後を見ていると攻めたい、倒したい気持ちが強くて、それを自制しているように見えるときもあるんですけど。熱くなるほう?
磯谷 いや、熱くは……なんだろな、倒したいのは倒したいですけど、絶対に倒してやる、とかはないですね。そう見えます?(笑い)

――そう見えるときが(笑い)。
磯谷 でも、そろそろ倒したいですけどね(笑い)。※2戦連続判定勝ち

――では、次は勝てばランキングに入って、また次につながる試合になります。どんな試合を見せて、アピールしたいですか。
磯谷 まあ、絶対に勝つことは前提として、もう圧倒して、レベルの違いを見せつけてやりたいと思います。

――レベルの違いを。
磯谷 はい。お前はここから上には行けないぞ、ということを見せてやろうと。まあ、パンチはなくはないと思うんで。しっかり警戒して。さわらせないぐらいの感じでやりたいですね。

――弟の広太選手もデビューします。一緒に試合をする気持ちは?
磯谷 あ、同じ日に、ということですか? ほんとは嫌なんですけど(笑い)。

――ほんとは嫌なの?(笑い)
磯谷 いや、弟の試合の緊張もあるし、まあ、勝つだろうと思うんですけど、そうなると今度はオレが負けられないみたいなプレッシャーが。当日はオレ、どんな気持ちになっちゃうんだろう? みたいな(笑い)。

――弟が勝ったら、よし! オレも! となるのでは?(笑い)
磯谷 いや、オレもやらなきゃいけねえ、みたいな(笑い)。まあ、兄弟一緒に勝って、話題になってくれれば。

――話題になるでしょう。
磯谷 まあ、一緒にやるのはデビュー戦だけでいいです。オレは(笑い)。

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