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S・ライト級アジア2冠王座に挑む星大翔 かつて那須川天心と世界一に輝いた男のベルトに懸ける思い

2025年2月2日 10時19分

 2月11日に東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインイベントはアジア2冠戦。両王座ともV2戦となる東洋太平洋&WBOアジアパシフィック・S・ライト級王者の永田大士(三迫/35歳、20勝6KO3敗2分)に星大翔(ほし・ひろと、DANGAN/26歳、7勝3KO3敗4分)が挑む。

石原トレーナー㊧とのタッグで王座に挑む星

 試合の3日後に27歳になる星。選手として「年齢的に一番伸びる時期で、もう少しで落ちる時期」と意識する岐路に差しかかり、再び信頼する石原雄太トレーナーと組みたいとジムを移籍。昨年11月、5ヵ月前に引き分けていた大野俊人(石川・立川)とのランカー対決に2戦ぶりのコンビで挑み、勝利を飾った。

 埼玉・秀明英光高でインターハイ、国体に出場したアマチュア経験を経て、18歳でプロデビュー。大会前から優勝候補の筆頭に挙げられながら、東日本新人王準決勝でまさかの逆転TKOで敗退。歯車が狂った。通算3度の挑戦も新人王獲得はならず。拳のケガで2年に及ぶブランクをつくったこともある。

 もともと3歳頃からキックボクシングに打ち込み、那須川天心(帝拳)の父・弘幸さんが立ち上げたTEAM TEPPENの初期メンバーとして小学5年の頃から週1回、指導を受けた。中学2年のとき、天心と出場したムエタイの世界大会でともに優勝したこともあったという。が、ちょうど同時期に入門した角海老宝石ジムでボクシングに惹かれ、自ら選んだ道だった。

 ウェルター級で佐々木尽(八王子中屋)のWBOアジアパシフィック王座に挑戦し、11回TKOで敗れて以来、1年7ヵ月ぶり2度目のタイトル挑戦。「ベルトを獲ることで、これまで自分がやってきたこと、過去の選択、決断が正解になる」と燃えている。王者の永田を「自分の土俵に立つと強くて、勝つのが大変な選手」と評し、「きつい試合になる」と覚悟する。

 星の石原トレーナーは堤聖也(角海老宝石)、永田の加藤健太トレーナーは寺地拳四朗(BMB)、ともに現役世界王者を指導し、世界戦の経験も豊富。両参謀が授ける対策もカギを握るかもしれない。(取材/構成 船橋真二郎)

DANGANジムの移籍組。左から向山太尊、星、渡邉卓也、李鎮宇

■移籍の背景にあった覚悟
――昨年11月に立川で大野選手に勝って、このタイミングでチャンスが来ることは想像していましたか。
星 まあ、勝ったほうが、という話は試合前にチラッと聞いてはいて。11月の大野戦に向けても、これを視野に入れて練習はしてたんで。心の準備としてはだいぶできてました。

――そうだったんですね。今回が2度目のタイトル挑戦になります。
星 ベルトが欲しい、というのが一番ですね。もちろん相手はチャンピオンなんで、強いですし、相性とかもあるので、フタを開けてみないと分からないですけど、今回は何が何でも獲りたいという気持ちが強いです。

――永田選手のことはどう見ていますか。
星 長い間、ずっとチャンピオンで、井上浩樹(大橋)さんとか、強い相手にも勝ってるんで、実力もあるし。自分の土俵に立つとめちゃくちゃ強くて、勝つのが大変な選手なので。きつい試合になるのは覚悟してます。

――いわゆるサウスポーらしいサウスポーではなく、サウスポーのファイターですよね。
星 そうですね。サウスポー自体に苦手意識はないんで、そこより永田さんの長所に重点を置いてますね。

――相手の土俵に乗って、巻き込まれないように。
星 はい。巻き込まれないためにも相手の土俵に立たないことが大事なので。その対策を石原さんといろいろ考えてます。

――2024年は移籍という変化もあった年ですが、どんな1年になりましたか。
星 去年は2月に兒玉(麗司=三迫)選手とやって、6月、11月に大野選手とやったんですけど。2人とも実力があるので、そういう選手に勝って、階段を上がってきたのが自信になったというか。6月は引き分けでしたけど、それも含めて自分を見つめ直せたので、充実した1年だったと思います。

――その大野選手と引き分けた試合後に移籍を決断しました。
星 2月の試合まで石原さんに付いてもらったんですけど、引き分けた6月の試合は自分に足りない部分が出たと思うんですね。11月の試合後、石原さんは、いいスパイスを自分にくれると言ったと思うんですけど、自分に足りない部分を練習で上げてくれたり、カツを入れてくれたり。で、試合でもほんとにいいタイミングで、いい声をかけてくれるので。ボクシング人生、長くはないし、信頼する人のところでやりたいなと思って。

――去年の秋にDANGANジムで会ったときも、ボクシング人生は長くないから、と話してくれましたね。そういう思いが強くなってきた。
星 僕は今、26で、2月(14日)で27になるんですよ。今が年齢的に一番伸びる時期で、でも、もう少しで落ちる時期になるんで。より一層、これまで以上に覚悟を決めて、試合にも、練習にも挑んでいかなきゃいけない年齢だし、状況になってきたな、と意識するようになってきました。

――ここから選手として一番いい時期に入るから、自分にとって一番いい人と勝負していきたいと。
星 そうですね。角海老(宝石ジム)には中学2年生のときからいたんで、僕の中では結構、大きな決断ではあったんですけどね。

大野を下した前戦から

■チャンピオンになる人との差を見つめ直して
――自分を見つめ直せた、ということでしたが、大野選手との2戦目では、とにかく冷静に、丁寧にジャブを徹底して、最後まで我慢できたことが勝因になりましたよね。
星 僕がよく石原さんから言われるのが、打たれたからって、打ち返すのが強い気持ちなんじゃなくて、そこで自分のやるべきことを冷静にできるのが、ほんとの強い気持ちだよ、ということで。行きたいところで自分の気持ちだけで行かない、我慢して作戦をやり遂げる、それがチャンピオンになる人との差かな、と思ってますね。

――確か6ラウンドでしたか。大野選手に打たれて、打ち合いかけたシーンがありましたけど、あそこで踏みとどまれたことも大きかったですよね。
星 いや、ほんとに(笑い)。6ラウンドは取られましたけど、あそこで自分が乗ってたら、あっちの流れになったと思うんで。そこも含めて、自分の成長を確かめられた試合だったと思います。

――で、星選手でずっと印象に残っているのが、1回目の東日本新人王準決勝なんですね。
星 あ、はい(苦笑)。

――優位に試合を進めながら、左アッパーで倒されて、逆転で負けて。6月の引き分けた試合もそうですけど、展開が見えて、勝てると分かったら、知らず知らず気が緩むというか、余裕を持ってしまうところが、星選手の力と結果が見合っていないところなんじゃないかな、と失礼ながら思っているんですけど。
星 いや、自分でもそう思いますし、そこを石原さんが詰めてくれるので。まだまだ足りないところはあるんですけど、そういうところも改善できてきて、いい方向になってきてると思うんで。

――そろそろ結果、ベルトで証明したいですよね。
星 いや、ほんとに。ベルトを獲ることで、これまで自分がやってきたこと、自分の過去の選択、決断が正解になるんで。ここで獲りたいですね。

――チャンピオンになったら、ここからの選手として一番いい時期がより充実したものになるでしょうしね。
星 そうですよね。チャンピオンになって、強くなった選手、自信をつけた選手はたくさんいるし、それだけ大きな影響を自分に与えてくれると思うんで。で、この前の大野選手との試合が終わった後、家具のIKEAに行って、そのときにガラス製の棚があったんですけど、こういうのに飾りたいな、と思って、余計にベルトが欲しくなったんですよ。今、そういうふとしたときでもベルトのことが気になるんで、練習に身が入ってますね。

――欲が出てきたということですね。
星 あ、そうです。どんどん欲が出てきてますね。

バッグを打つ星

■一発当てたい、から始まったボクシング人生
――もともとはキックボクシングでしたよね。始めたのは何歳からですか。
星 最初はグローブ空手なんですけど、顔面ありなんで、ほぼキックみたいな感じで。それは3歳ぐらいから。で、キックボクシングは中学2年生までやってました。格闘技自体のキャリアは長いですね。

――で、TEAM TEPPENですか。去年の秋に久しぶりに合同練習をした、というのをSNSで見たんですけど。関わりがあったんですか。
星 あ、そうですね。TEAM TEPPENには、僕が小学5年生ぐらいから。その頃は週1回、土曜日に強い子たちが集まって、合同練習みたいな感じで那須川(弘幸)さんに見てもらってました。

――それぞれ違う道場とか、ジムから強い子たちが集まってくるような。
星 そうですね。ほんとに初期の初期ですね。那須川天心、堤駿斗(志成)、麗斗、牧野草子(自衛隊体育学校)とか。そのへんが集まってた頃です。

――星選手はキックの成績はどうだったんですか。
星 一応、中学2年生のときにワールド・ムエタイ・フェスティバルという世界大会(アマチュア)に那須川天心と一緒に行って、2人で優勝しました。

――そうなんですか。中学2年生というと角海老に入った頃ですね。なぜ、そこからボクシングに?
星 ちょうど旧K-1が下火になってきたのと、その頃には、キックでは大人とスパーリングしても引けを取らないぐらいだったんですけど、ボクシングには、ほんとに何もできないぐらいの強い人たちがいたんで。

――当時、そう思わされたのは角海老の誰だったんですか。
星 中学生の頃だと緒方(勇希)さん(2009年の全日本フェザー級新人王)が印象に残ってますね。全然、パンチが当たらなくて。で、中学生のときから自衛隊体育学校に練習に行かせてもらって、ロンドンオリンピックで銅メダルを獲った頃の清水聡(大橋)さんとやらせてもらったり、あと川内将嗣さんと。

――アマチュアの名選手ですよね。
星 でも、僕は最初、知らなくて(笑い)。日本代表のユニフォームを着てるから、マスだったんですけど、一発当ててやろうと思ったら、ほんとに一発も当たらないし、前の手だけで止められるし。ボクシング、難しいなと思って。

――そういう経験が本格的にボクシングに転向する理由に?
星 はい。一発当てたい、から始まって。さっき新人王の話をしましたけど、僕って、自分が上の立場だと向上心が出てこないんですけど、周りに強い人がいたら、追い抜いてやろうっていう強い気持ちが出てくるんですよ。

――追う立場のほうが楽しい。
星 楽しいですね。強い人を相手にしたほうがいろいろ考えないといけないし。それこそ、高校生の頃は、岡田(博喜)さん、デーブ(加藤善孝)さん、高山樹延さん、チャンピオンクラスとスパーリングさせてもらってたんで。

――ちょうど角海老にライト級からウェルター級の選手がそろっていた頃ですね。で、記録を見ると高校時代に出場した全国大会は、2年のインターハイと国体になりますか。
星 そうですね。その国体の1回戦で肩が外れちゃって、ドクターストップみたいな形で負けて、手術をすることになって。そこから試合に出れないまま高校は終わりました。

――そうだったんですね。そういう悔しい思いもあったし、高校を卒業して、デビューしたプロでは、3度挑戦して新人王も獲れなくて。そういう意味でも、ここで結果を出したいですね。
星 そうですね。これまで結果を出せなかったことも含めて、正解にするのは今回の結果次第だと思うので。ベルトが欲しいです。

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