コロナ対策緩和 試合前日の抗原検査不要、入場時の幟OK、試合数制限の廃止
2022年6月20日 17時24分
2022年6月20日 11時35分
少年院で輪島功一さんの自伝を読み、世界チャンピオンになるためにボクサーとなり、世界挑戦まであと一歩のところで夢散った勅使河原弘晶が引退を表明した。カリフォルニアのマーロン・タパレス(比)戦がラストファイト。敗れたとはいえ、意外に思えるほどすっぱりとした引き際だった。あらためて決断について聞こうと会ってみると、ボクサー時代とは違って優しい顔をしていた。「ボクシングを本当に一生懸命やったという気持ちだけはあります」と語るテッシーに、飯田さんも「あぁ、やはり引退するなぁ、さみしいけど」とちょっとしんみり。《ボクシング・ビート7月号より》
すっぱりと引退した理由
飯田 現役生活お疲れさまでした。
勅使河原 ありがとうございます。
飯田 以前、輪島功一先代会長にお話を伺いに行った際、声をかけてくれたんだよね。
勅使河原 6、7年前ですか。
飯田 「飯田さんの教則本読んでました」と言ってくれて。読んでくれて、ベルトを巻いたのはたぶんテッシーが初めてじゃないかと思ってさ。
勅使河原 いや、なんか世界のベルトじゃなくて……。
飯田 そんなことないよ、そういうわけで俺うれしくて。アジアのベルトを獲って、おお、ついに世界というところまで行った。
勅使河原 なんの疑いもなく世界チャンピオンになると思っていたんですが。
飯田 思っていたはずだよね。
勅使河原 いまはこんなに人生が変わるんだって感じです。ボクシングが一気になくなった生活ですから。ボクシングしかやっていなかったので。
飯田 テッシーみたいなすっぱりとした選択は最近はあまりない気がする。みんな、負けたら引退ぐらいの気持ちでやるだろうけど、本当に負けて引退した。やっぱりいまはチャンスもあるし、テッシーの場合は世界まであと一歩のところじゃん。逆に言うと、「そんな簡単に諦められるのか」と思う人がほとんどじゃない?
勅使河原 はい、本当に僕は毎回戦争に行くような気持ちで試合に向かっていて、だからこそ入れ込むことができたというか。これで負けたら俺のボクシング人生は終わりなんだぞって、ずっと自分に言い聞かせてました。だから24時間ずっとボクサーでいられたし、練習も追い込めました。本当に妥協した日は一日もなかったんです。
飯田 うん。
勅使河原 なので負けた時にもう自分の中で自然と「終わったな」と。続けようとかそういう気持ちがなかったです。本当、自然に。
飯田 そっかあ、「終わった感」が出たんだ。俺も同じ気持ちでボクサーをやっていたけど、初挑戦で負けた時は「止まっちゃった」感じだったかな。道が消えたみたいな。ショックだったけど、じゃあもう一歩上に行くのに何をすればいいのかと考えざるを得なかった。テッシーの場合は気持ちがもうすーっと抜けてった感じかな。
勅使河原 ジムとか周囲は(まだやれると)言ってくれたんですけど、ハイ。
飯田 「もったいない」「どうせ復活するんじゃないの」「いまはショックでもまたやりたくなる」と思っている人は正直いっぱいいる。でもいまの話を聞いて、あ、本当に消えたんだなと感じた。
勅使河原 背負っていたものも大きくて。本当にたくさんの人が応援してくれましたし、僕がボクシングで生活できたのもそういう人たちのご支援あってのことでした。そんな簡単にやると言えない。本当に全人生をかけてやっていたので、それを超える練習量なり、自分をつくって、さらにそれを超える覚悟があるなら続けてもいいと思ったんですが。
飯田 うん。
勅使河原 超えられない状態で、たとえばちょっとお金が欲しいからとか、1ミリでもそんな気持ちがあって続けることは、応援してくれるみんなに失礼。それにこれまでの僕の生きざますべてを自分で否定することになるし、ここで中途半端なことをしたら、次に進む自分の壁になると思うんです。前の自分を超える自分がつくれないならやっちゃいけない、それが僕の中の答えだったんです。
飯田 それを聞いたらますます納得しちゃった。というのも、俺が引退した時がテッシーのいまと同じ気持ちだったから。
勅使河原 ボクシングの練習って本当にめちゃくちゃしんどいじゃないですか。毎日毎日自分にカツを入れながら内心のせめぎ合いというか。あれをさらに超える自分をつくるとなると……。
飯田 あぁ……テッシーはやはり引退するなぁ、さみしいけど。
勅使河原 そう言っていただけることが僕はうれしいですし、やってきた価値もあるのかなと思います。
飯田 もうやれないんだよね、ムリなんだと。いままでのボクサーだった自分とはもう変わっちゃってんだよね。
勅使河原 本当その通りです。もうファイターじゃなくなったということです。..
世界戦のリングにはあと一歩届かなかったものの一生懸命やり切ったボクサー人生――勅使河原弘晶のラスト・インタビュー全文は発売中のボクシング・ビート7月号に掲載しています。
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