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苦難乗り越え7年ぶりカムバック 元WBCユース王者 斉藤司ストーリー「もう一度ボクシングを…」

2022年12月25日 12時54分

 この11月、ひとりのボクサーが7年ぶりに戻ってきた。斉藤司(一力)32歳。日本プロボクシング界の、移籍に関する旧態依然とした慣習が改まるきっかけになった選手でもある。家庭の事情で長くボクシングから離れていたが、このたび復帰。リングキャリアの第2章をスタートさせた。《ボクシング・ビート1月号より》

勝利の瞬間、斉藤は天を仰いだ

 後楽園ホールにひときわ大きな拍手が沸き起こった。11月30日、第7試合のライト級6回戦。元WBCユース・ライト級王者の斉藤司が2015年10月以来、7年ぶりのリングに上がる瞬間だった。

 「花道を歩いて、やはり気持ちよかったです。試合が始まる前、そして試合が終わった時のあの景色というのは、僕の中でたまらない、グッとくるものがありました」

 感慨に浸る間もなく、試合開始のゴングが鳴る。初回は無難に立ち上がったものの、2回は荒っぽいタイのアヌーチャ・トングボーに攻め込まれた。

 「アップの時は柔らかく動けていたんですけど、リングの緊張感は違っていて、これがブランクなのかと痛感しました」

 それでも斉藤は動じず、冷静にチャンスを伺った。そしてアヌーチャが調子に乗り始めた3回、斉藤の右カウンターが炸裂。ダウンしたタイ人が立ち上がりかけたところでフラつき、主審が試合をストップした。

 「もともと右は得意。狙ったというより自然に出た。ちなみに相手がサウスポーというのは試合が始まって初めて知りました(笑い)」。久々の勝利を挙げた斉藤の表情は実に晴れやかだった。

 長くブランクを作ってカムバックする選手は少なくない。ところが斉藤の場合、他の選手とはかなり違う事情があった。

 斉藤は16年10月、当時所属していたジムを相手取り、未払いのファイトマネー300万円の支払いと、移籍届への承諾を求めて千葉地裁に裁判を起こした。ボクサーが所属先を訴えるという異例の事態は、業界で大きな話題となった。

 18年7月、斉藤の訴えは退けられて裁判には敗れる。一方で裁判所は、移籍に際して所属先の承諾書はそもそも不要だと判断。これにより「移籍するなら所属ジムの許可が必要」という長年の慣習に大きな風穴が開くことになる。

 公正取引委員会の指導もあり、JBC(日本ボクシングコミッション)と日本プロボクシング協会は19年にルールを整備。ジムと選手の契約期間は最長3年で、契約期間が過ぎれば、選手は自由に移籍できるようになった。

 斉藤の裁判が選手の自由を勝ち取る大きなきっかけとなったわけだが、本人は業界に与えた影響について、あくまで控えめだ。

 「僕が裁判をやったからルールが変わったんだぞ、なんて一切思ってません。裁判自体、自分の新しい道を切り拓くために、自分の意思でやったことですから、すべて自分のためだと思ってやったので何とも思わないです」..

 7年の歳月を経てカムバックした男のストーリー。記事全文は発売中のボクシング・ビート1月号でお読みできます。

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