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自分にムカついた――山内涼太が再戦にかける思い 4.8永田丈晶と2年ぶり王座決定戦

2025年4月1日 10時16分

 4月8日の「ダイヤモンドグローブ」はトリプルメインイベント。日本王者が最強挑戦者を迎え撃つチャンピオンカーニバルの一環で、ライトフライ級、フライ級、スーパーウェルター級、全3階級の日本タイトルマッチが東京・後楽園ホールで開催される。

 フライ級は王座決定戦。現・東洋太平洋王者の飯村樹輝弥(角海老宝石)が返上した王座を元同級王者で1位の永田丈晶(ながた・じょうすけ、協栄/27歳、7勝2敗)と元WBOアジアパシフィック王者で2位の山内涼太(やまうち・りょうた、角海老宝石/30歳、13勝12KO3敗)が争う。

 ちょうど2年ぶりとなる再戦。前回も同王座の決定戦で、熱戦の末に7位の永田が1位の山内に判定で競り勝ち、プロ5戦目で王者となった。永田が1位、山内が2位で迎える今回はどうなるか。

永田への雪辱を誓う山内

 「マジで悔しかったし、ムカついたんで。ずっと待っていた」。山内は思いをストレートに吐露した。ジムから東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座挑戦を何度か打診されても、このチャンスにこだわり、断わってきたという。

 2年前は上位ランカー陣が諸々の理由で王座決定戦出場を回避。当然、上位との対戦を期待していた山内としては、どこか気持ちが噛み合わなかったのが正直なところだが、「『は!?』ってなってる時点で負けていた」と振り返る。以来、「1日1日、自分に負けないように」と練習に取り組んできた。

 WBOフライ級王者時代の中谷潤人(M.T)に挑み、8回TKOで完敗したのは3年前の4月だった。「2年連続、4月に負けてるんで。しかも両方ともイニシャルN.Jのサウスポーに。今回が3度目の正直」と冗談めかしながら、「倒して勝たないと気が済まない。最初から全力でいく」と待ちわびた一戦に燃えている。(取材/構成 船橋真二郎)

コンビを組む阿部トレーナーと山内㊧

■このチャンスを待っていた
――ずっと待っていた、望んでいた試合だと思います。
山内 いや、だいぶ待ってました。ずっと待ってましたね。

――あの2023年4月の王座決定戦から、やり返したいという思いでずっと。
山内 ほんまにそうです。マジでそれしかなかったし、そのためにやってたんで。で、会長(鈴木眞吾・前会長)、マネジャーから、他の東洋とか、WBOアジアとかの話も何回かもらったんですけど、そっちに行ったらできなくなる可能性のほうが高いんで。(お互いに)日本ランキングも上のほうやったし、それやったら(永田と)やりたいと言って、断わってきたんで。このチャンス、マジで待ってましたね。

――ずっと再起戦を見てきて、その気持ちは伝わってきましたよ。
山内 マジで悔しかったし、ムカついたんで。ずっと待ってました。しかも僕、2年連続、4月に負けてるんで。しかも両方ともイニシャルN.Jのサウスポーのやつに。

――ああ、中谷潤人、永田丈晶……N.Jか(笑い)。
山内 今回が3度目の正直っす(笑い)。

――ちょうど2年前の永田選手との王座決定戦を自分ではどう振り返りますか。
山内 いや、よくなかったっすね。試合だけじゃなくて、全体的に。あのときは僕が1位で、なんやかんや7位(の永田)まで誰もやらず。

――あれはチャンピオンカーニバルのカードだから、山内選手としては当然、上位とやると思っていましたよね。
山内 まあ、3位、4位は絶対にやると思いますよね。7位までやらんって、よっぽどじゃないですか。向こうは最高ですよね。ラッキーやし、無敗で勢いもあるし。

――思い切ってぶつかれそうですよね。
山内 ナメてたわけじゃないですよ。(永田は熊本工業高校3年時に)アマで国体も獲ってるし、(プロで)うちの(中嶋)憂輝が負けたのも知ってたんで。ナメてたわけじゃないけど、僕は世界戦も終わって、ここは勝って当たり前というか、まあ、負けへんやろみたいな感じがあったから。

――周りの空気感が。
山内 はい。周りの空気感もよくなくて、自分の気持ちも噛み合ってなかったし、向こうにいいような流れで試合まで行っちゃったんで。

――内容はどう振り返りますか。
山内 よくなかったっすね。手数対パワーみたいな感じだったじゃないですか。前半5ラウンドが終わって、ポイントも取れてなくて、手数で持ってかれた感じやったんで。で、映像も見て、こんな感じやったんやと思って。思ってたより動けてないし、キレもないし、何もない状態やったっすね。

――あらためて、見て。
山内 はい。相手どうこうじゃなくて、オレの問題やなって。ムカつきましたね。自分に。何してんやろと思って。まあ、7位まで決まらなくて、「は!?」ってなってる時点で負けてました。自分に負けてましたね。

ミット打ちをする山内

■自分に負けないように
――再起2戦目の試合後の控え室で話してくれたことが印象に残っていて。
山内 誰とやったときですか。

――フィリピンの選手(2回KO勝ちしたアーノルド・ガルデ)ですね。去年の2月ですか。永田選手に負けてから、ここまで何を意識してやってきたかと聞いたら、何を意識するとかじゃなくて、1日1日、自分に負けないように、自分との勝負のつもりで練習してきて、1年経ってないからまだまだ、だと。
山内 あ、そうです。はい。

――この2年間、そういう日々を過ごして、カッコよく言えば、このために生きてきたということですよね。
山内 ほんまにそうです。でも、そういうのも試合で見せないと意味ないんで。で、小國(以載)さん、きっかけだったんですけど、去年の1月から体幹を始めたんですよ。その年末にたまたま電話で話して、技術とかより体の力とかでまた変わってくるから、お前、体幹でも行ったらって言ってくれて。

――小國選手も2年ぐらい前から体幹を取り入れ始めたんですよね。
山内 あ、そうですね。オレ、行ってるから、紹介したろかって。今まで試合とか、スパーとか、私生活のことでアドバイスはもらっても、小國さんに練習のことを言われたことがなくて。もう、すぐに行きたいですって言って、1月からだから、1年以上ですね。

――さっき見たら、体つきが変わってきましたね。
山内 ほんまですか? 僕、今まで体の使い方とか、意識したことなかったんですよ。でも、自然とできてるほうやから、さらに意識したらもっと変わるよと言ってもらったんで。もう、技術で圧倒的な差って、つかないじゃないですか。よっぽどじゃないですか。

――でも、体の使い方を高めることで、質を高められるかもしれないですね。動きにしても、技術にしても。
山内 そうですよね。そういう成果も出てくると思うんで。で、2月には箱根に合宿に行かせてもらったんですよ。

――2月のいつ頃ですか?
山内 2月の……7から11日まで4泊で。(榊野)凱斗、小林(柾貴)、あとシンジって、トレーナーの竹内(真志)と4人で行って。箱根の山を登って、坂道を走って、

――そういうメニューは竹内さんが考えてくれるんですか。
山内 あいつ、もともとパーソナル(トレーナー)もやってたんで、ダッシュとか、ボクシングに生かせるフィジカルとか、いろいろ。で、朝は金時山って、1200メートル(1212メートル)ぐらいあるのかな? 走って。

――走って、山を登って。
山内 あ、途中、途中、凍ってたんで、そのへんは速歩きぐらいで(笑い)。で、戻ってきて、シャドーとか、そういうフィジカルをやって。昼から坂道をダッシュして、みたいな感じで。めちゃくちゃ走り込んできました。

――たっぷり走り込んで、土台をつくって。特に次の永田選手は10ラウンド、フルに動いて、手数を出すことができる選手だから、それに対抗できるベースをしっかりつくってきたということですね。

気迫十分だった神崎戦

■初めて試合が楽しみ
――今回はどういう試合展開をイメージしていますか。
山内 まあ、おもんない試合にはならないっすよ。気合い入ってるし。当日はさらに。向こうは打ちながら脚を使って、僕が追う展開で、ど突き合いにしかならないんで。絶対におもろくなるし、そん中で僕が勝つ感じっすね。

――チャンスがあったら、倒しに行く。
山内 いや、チャンスがあったら、というか、チャンスをつくりに行きます。倒さないと気が済まないんで。最初から全開で行きます。

――10ラウンドやり切る土台もつくってきたし、10も必要ない。
山内 はい。なんか今まで怖いっていう感情が大体あったんですよ、どの試合でも。負けて、僕を応援してくれてる人が、落ち込んでるのを見るのは嫌やな、怖いっていうのがあったんですけど。今回の試合は一切ないです。楽しみです。みんな、言うじゃないですか。楽しみって。僕、今まで分からなかったんですよ。初めて楽しみです。

――初めて楽しみ、というのはプロになってから?
山内 はい。デビュー戦は楽しみでしたけど、みんなの前でデビューできるのが楽しみなだけで、試合としての楽しみは初めてやなって感じはします。

――デビュー戦の楽しみとは違うと。
山内 違うっすね。自分がやりたかった試合、やりたかった相手だからなのか。

――それこそ、これだけ、この試合、この相手に懸けてきたことって、今までのボクシング人生でなかったんじゃないですか。
山内 いや、ないです。マジでないですね。

――負けるのが怖い、というのはよく聞きますが。勝つのが楽しみ、そういう自分をつくりあげられたということなんですかね。
山内 そうかもしれないです。なんかね、違うんですよ、気持ち的に。

――思い出すのが再起3戦目の神崎靖浩(倉敷守安)戦(昨年6月に6回TKO勝ち)で、あれは再起戦の中でも特に印象に残っていて。リングサイドから見ていて、怖いぐらいの気迫を山内選手に感じたんですよ。
山内 あ、そうっすね。あの試合、マジで気合い入ってたっすね。みんなから言われたんですよ。お前、ヤバいんじゃない? みたいな。まあ、神崎くん、巧いじゃないですか。

――いい選手ですよね。で、スーパーフライ級で。
山内 はい。相性的にいなされてもおかしくないし、打ち合ってくれないなと僕も思ったんで。で、フライ級ではできひんからって、契約体重(51.9キロ)になって。まあ、相手も決まらんしって、試合が決まったら、ジムの人たちを含めて、みんなから言われたんですよ。コケるときって、こういうときやで、大丈夫か? って。オレからしたら、誰が負けると思ってやんねん、ナメんなよって感じじゃないですか。

――なんで、この相手にオレが負けるかも、と思われるんだと。
山内 そうっす。どんな評価やねん、上目指してるんやから、負けるわけないやろ、黙らさなアカンな、と思って。めちゃくちゃ気合い入ってたんですよ。

――打たれても倍以上、打ち返すような。まさに相手をのみ込んだ試合でしたね。
山内 ほんまは打たれたらダメですけど。あの試合は作戦より気合いって感じでした(笑い)。

――で、次のフィリピンの選手(オーリー・シルベストレ)との試合前、ジムで少し話したとき、すごく覚悟が決まった印象を受けて。気持ちが上がってきているなと感じたんですね。
山内 はい。上がってます。だいぶ上がってますね。

――神崎戦は気持ちの面でいいきっかけになったのかもしれないですね。
山内 いや、ほんまにそうです。

――年齢的に30歳になって。今回の日本タイトルにはどんな意味がありますか。
山内 めちゃくちゃ大きいっすよね。世界戦で負けて、日本タイトルで負けて、僕にはもう何もなくなった状態やったんで。獲らないと終わり。終わりって、始まってもないけど。獲らないと進めないんで。絶対に獲らないとダメですね。

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