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東洋太平洋S・ライト級王者の永田大士がゴルフで覚醒 10.10ウェルター級テストマッチ

2023年10月5日 11時27分

 元日本S・ライト級王者で、現・東洋太平洋同級王者の永田大士(三迫/33歳、17勝6KO3敗2分)が10月10日、東京・後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のメインに登場。1階級上のウェルター級8回戦でキム・ジンス(韓国/27歳、10勝6KO5敗)とのサウスポー対決に臨む。

永田大士

 永田は昨年12月、世界挑戦経験もある王者の近藤明広(一力)に判定勝ちで2冠目の王座を奪取。日本王者時代の2020年12月、初防衛戦で引き分け、薄氷を踏むような思いを味わわされたベテランとの因縁に決着をつけた。以来、10ヵ月の期間が空いたが、このブランクにはドイツで初の海外試合が決まりかけながら、最終的に成立には至らなかったという事情もあった。

 6月下旬から7月上旬にかけては3度目のロサンゼルス合宿に出かけ、元IBF王者セルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)など、約4年ぶりに当地の猛者たちとスパーリング。あらためて海外で戦いたいという思いを強くした。

 三迫貴志会長は本人の希望も考慮に入れ、「マッチメークの幅を広げるため、ウェルター級でどこまでやれるか見極めたい」と話す。相手のキムは4年前にも来日し、湯場海樹(ワタナベ)にダウンを2度奪われ、負傷による2回ストップ負け。が、当時はまだ6戦目でS・ライト級を主戦場にしていた。

 階級を上げてからのキムは7勝(5KO)1敗と戦績を伸ばし、昨年12月には韓国・仁川で日本の実力者・岡田博喜(角海老宝石)を2度倒した末、7回ストップ勝ち。さらに今年5月には中国で地元の無敗(6勝4KO1分)選手をわずか57秒でKOし、勢いに乗る。

 永田は以前、柔道や総合格闘技など、異種競技を体験することでボクシングに通じる体の使い方を学んだと話していた。今回もまたゴルフ、レスリングを通して学びがあったという。並行して計画されていた防衛戦も決まらなかったものの、「自分自身が強くなることだけに集中」して、モチベーション高く、このテストマッチに向かってきた。《取材・構成 船橋真二郎》

昨年12月、永田は近藤との再戦に勝利

■リスキーだから勝つ価値がある

――8月30日に行われた同じ階級のWBOアジアパシフィック王座決定戦は見ましたか?

永田 配信ですけど、ライブで見ました。

――3年前の日本タイトルマッチで戦った井上浩樹(大橋)選手が復帰して、再びタイトルを獲りました。

永田 いや、素晴らしいなと純粋に思いました。特に試合の後半、自分自身に打ち克った浩樹くんを見て、自分も刺激をもらいました。

――韓国を拠点にするウズベキスタンの選手(アブドゥラスル・イスモリロフ)に対して苦闘の末の逆転勝ちでした(10回TKO)。井上選手は試合後、永田選手との試合の途中、自分に負けたところがあったから、ここで諦めたら前と同じになると自らを奮い立たせた、と。

永田 苦手な接近戦に挑んでいく姿は僕の中でリスペクトできるものでしたし、むしろ人間くさい魅力を感じましたね。感動しました。

――同じ階級の王者が決まったというのとは、また違った目線になった。

永田 自分がまだ獲ってないタイトルなので、いいなとは思いましたけど。それ以上にすごく刺激をもらいました。

――相手が予想以上に力があって。中量級という階級でさらに上を目指すには、国内でチャンピオンになるだけでは十分ではなくて、超えなければいけない壁があるということも感じましたが。

永田 分厚い壁がありますよね。そこを超えていけるような選択をしないといけないと自分も思うんですけど、その意味でも今回、ひとつ上の階級の選手とやることが挑戦になるかな、と。リスキーでもあるんですけど、だからこそ勝つ価値があると思ってます。

――次のキム選手ですが、思い出すのは昨年12月の近藤戦の前、久しぶりに岡田博喜選手とスパーリングをしましたよね。

永田 ああ、そうでしたね。久しぶりにやりました。

――岡田選手はキム戦の前で、だから、永田選手が岡田選手にとっての仮想・キムだった。

永田 あ、確かに。言われてみれば、奇遇ですね。あの時の岡田くんの相手ですもんね(笑い)。

――岡田選手とは同い年、同じ階級(L・ウェルター級)の高校2冠で、高校最後の国体準々決勝で負けた相手でもありました。いつかプロで対戦する機会があればと望んでいた選手でもありましたね。

永田 そうですね。(高校時代の世代トップのひとりとして)僕の中で憧れ的なものもあったので。

――その岡田さんのラストファイトになったのがキム戦で、どこか因縁めいた相手でもあるというか。

永田 そうですね。そういうのも確かに僕の中にあります。でも、やっぱり自分自身が強くなるために戦うんで。相手をリスペクトして、しっかり備えて勝ちたいというだけです。

■テーマは“平常心”

――戦績をさかのぼると2016年12月の6戦目でマナベジムの鈴木(義行)選手と試合をした時が65.0キロ契約で(8回TKO勝ち)。S・ライト級以上の体重で戦うのはそれ以来になるんですね。

永田 ああ、あの時も契約でしたっけ? デビュー戦(井上岳志戦)だけだと思ってたんですけど。すっかり忘れてました(笑い)。

――10オンスは3回目ですか。グローブが大きくなるわけですが、何か違いはありますか?

永田 いや、ただ単に僕の拳がデカくて、8オンスが小さいっていう。加藤(健太)トレーナーが毎回、苦労するんですよ。僕の拳をグローブに入れるのを(笑い)。

――拳のサイズ的に10オンスのほうがはめやすい?(笑い)

永田 はめやすいかもしれないです(笑い)。

――試合の中で特に違いは感じないものですか?

永田 僕はそんなに繊細じゃないんで、特に何も感じないですかね(笑い)。僕の中では相手(の体格)がデカくなることが一番の違いです。

――見た感じ、デカいですよね。

永田 デカいですね。身長も178センチと言いますけど、(映像で見た印象では)もう少しあるのかな(永田、岡田ともに身長175センチ)。でも、階級が上だろうと、身長が上だろうと、実力では僕のほうが上ということをしっかり見せたいと思います。

――前戦の話ですが、近藤選手との再戦では、冷静に相手を観察して、状況に応じて戦うという、ずっと加藤トレーナーと課題にしてきたことができた試合だったのではないですか?

永田 いや、ほんとにいい試合でした。また強くなれたと思います。

――1ラウンドのバランスを崩したダウン、中盤のヒッティングによる左目上のカット、永田選手が流れを引き寄せた後半に入ってからの近藤選手の頑張り。終盤は激闘になったし、精神的な部分で自分をコントロールするという意味で試される場面も多くて、得るものも大きかったと思います。

永田 確かにそうですね。気持ちが入り過ぎたり、感情が出ると、僕の場合はダメなんですよ。空回りしちゃったり、自分で自分のバランスを崩したり、悪いほうにいっちゃうんで。今、一番大事にしているのが平常心と冷静な判断なんですけど、そこを実戦で学べたのはデカいと思います。スパーリングでも前みたいに感情的にはならなくなったし(笑い)。

――常に平常心、冷静でいることがテーマなんですね。

永田 そうですね。日常生活の中でも意識してますし。

――大事ですよね。

永田 はい。日常生活のほうが長くて、そういう(試される)場面が訪れることが多いんで。もちろん、喜怒哀楽はあっていいと思うんですけど、一方で感情に流されないように。今の自分を常に客観視するようにしてます。

コンビを組む加藤トレーナーと

■ゴルフのスイングを通して学んだこと

永田 ちょっと話は変わるんですけど、知人の元プロゴルファーにゴルフのスイングを教えてもらって。「あ、これだ!」っていう学びがあったんですよ。

――ゴルフのスイングからどんな学びが?

永田 僕、めっちゃ力が入っちゃうんですよ。でも、腕に力を入れちゃダメで、体幹の力と遠心力で飛ばす感じなんですけど。遠くに飛ばしたい気持ちが強ければ強いほど、力が入って、違う方向に飛んだり、当たりもしなかったりして。で、脱力して、体幹の動作だけで打つとビックリするぐらい飛ぶんですよ。あ、パンチもこうだよねっていうイメージをもらって。

――なるほど。永田選手には強い下半身もあるんだし。

永田 はい。「これか!」と思って。今まで効かせたり、倒したりしたパンチは感覚がないぐらいなんですけど、どれだけ俺は腕力で打ってきたんだろうと思って(笑い)。そういうのがゴルフに出ましたね。

――今までの自分が見えたわけですね。

永田 そうですね。で、“抜く”という動作も理解できましたし。

――それは気持ちの面でも同じですよね。遠くに飛ばそうじゃなくて、“引く”というか。

永田 いや、まさにそうで。遠くに球を飛ばして、「よっしゃ!」となって、「次も!」と思うと、どうしても力が入るんで、絶対にうまくいかないんですよ。

――いかにいいボールを打ち続けるかは、平常心を保ち続けることがポイントになる。

永田 はい。そこでも喜び過ぎない、興奮しないとか、平常心、心の在り方を学ばせてもらいました。ボクシングでも、いいパンチが当たってもぬか喜びしないで、相手の動き、状況を見て、冷静に自分のやるべきことをやらないといけないんで。

――以前は柔道、総合格闘技で体の使い方を学んだ、と。

永田 あ、今回はレスリングをやりました。

――本当にいろいろやっているんですね(笑い)。

永田 はい(笑い)。アマチュアレスリングのジムに体験に行ったんですけど、いい発見がありました。いきなりスパーリングをして、超キツかったですけど、僕の中では全部ボクシングにつながるようにやってるんで、すごく楽しいです。

――発見というのは?

永田 相手と手を組むじゃないですか。必然的に力の向きを意識するんですよ。で、押したり、引いたり、押しながら引いたり、その感覚とか、駆け引きもボクシングに通じるところがあるなって。

――ボクシングだけでは発見できない感覚を発見できるような。

永田 まさにそれです。宝物が見つかる感じです。まあ、自分のボクシングに生かせるのが一番なんですけど、何かコツをつかんだり、体感するだけで、すごい喜びと感動があるんで。それで満足してたらダメですけど(笑い)。

――でも、そういう感覚を味わうことも大事なんじゃないですか。永田選手は高校(宮崎・日章学園高)から始めて、キャリアも長くて、ボクシングだけで新しい発見をするのは難しいところもあるでしょうから。何か違う刺激で。

永田 そうですね。今年の6月下旬から7月上旬ぐらいまでロサンゼルスに合宿に行って、4年前と5年前にも行ってるんですけど、今回はチャンピオンとして行ったんで、リピネッツとか強い人とやらせてもらえて。前々回、前回とは1枚も2枚も上のレベルを感じられたんですよ。危機感を覚えて。

――この辺の階級になってくると特に肌でレベルの高さを感じないとダメなのかもしれないですね。

永田 いや、ダメだと思います。だから、僕はボクシングだけじゃ無理で、何か変化が必要だなと考えて、違う競技から学ぶことも必要かなと思ってるんですよ。

■試合の入りが課題

――久しぶりの海外合宿で、他に何か感じたことはありますか。

永田 自分の選手寿命を考えても、もっと外に出ていきたいと思いましたね。もちろん、強い日本人とは戦いたいですけど、日本人同士で潰し合うよりも、今は海外に興味があるかもしれないです。

――近藤戦から10ヵ月空くことになりました。海外で試合の話があったのがまとまらなかったり、今回のキム戦と並行して話を進めていた防衛戦も決まらなかったりと、気持ちの面で難しいところはなかったですか。

永田 決まらなかったのは残念ですけど、僕は自分が成長するために試合をするんで、モチベーションは常にあるし、自分自身が強くなることだけに集中して練習してきました。

――とにかく10月10日に照準を合わせて。

永田 はい。それでしっかり試合も決まったんで、不満なんて何もないです。ウェルター級? OK! みたいな。

――先ほどのゴルフの話なんですけど、近藤戦では最初からステップでリズムを取ったり、心も体も脱力できていたからこそだと思うんですけど、今までのように力んで突っ込み過ぎて、頭がぶつかるというシーンがまったくなかったじゃないですか。

永田 ああ、そうですね(笑い)。でも、僕の中では、まだ最初の時は頭の中が慌ただしかったですね。あ、これはいつもの自分のスタートじゃない、でも、これを正常にしないといけない、みたいな。

――まだ力を抜いて、冷静に、という感覚が馴染んでなくて。スタートの段階では、意識して自分をコントロールしないといけなかった。

永田 だと思います。それこそスリップみたいなダウンをしたのは、だからだと思うんですよ。

――近藤戦では前半、ポイントも失ってしまったし、次は入りからうまく自分を持っていけたら。

永田 はい。ましてや、次は8回戦で短いから、そこは意識してますね。

――といって、いいスタートを切ろうと力が入り過ぎても。

永田 はい。それもダメだし。

――次が永田選手にとっては声出し解禁後、初めての試合で、どうしても声援に応えたくなっちゃうのが永田選手だから(笑い)。いかに平常心を保てるか、が変わらないテーマになりそうですね。

永田 いや、ほんとにそれですよね(笑い)。相手に集中して、状況を見て、平常心で何をすべきか冷静に判断できれば。

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