亀田和毅あすIBFフェザー級2位決定戦「来年の世界戦につなげたい」
2023年10月6日 15時09分
2023年10月6日 10時55分
10月10日、東京・後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のセミファイナルで、元日本フェザー級王者の佐川遼(三迫/29歳、12勝7KO3敗)が再起する。今年4月、佐川は若き全勝ホープ・松本圭佑(大橋)との日本フェザー級王座決定戦に臨んで大差の判定負け。注目を集めた一戦に世界ランカーとして勝利し、王座返り咲きを果たすとともに「世界を目指す」と意気込んでいただけに落胆は大きかった。心機一転、S・フェザー級に階級を上げ、再出発を図る。
迎える日本S・フェザー級14位の福井貫太(石田/29歳、10勝7KO5敗1分)は、アマチュア出身のホープに果敢に勝負を挑みながら力をつけてきた叩き上げの好選手。ともに早生まれの同い年ながら、アマチュアでキャリアを積んだ佐川とは対照的な道を歩んできた。直近2戦は東洋太平洋ランカーのジョン・ジェミノ(比)、日本ランカーの松岡輝(大成)を連破。4回戦時代以来、約5年ぶりの連勝で勢いに乗る。
佐川は「転級初戦に相応しい相手」と難敵・福井を歓迎。「S・フェザーでもやれるというところを見せて、また自分の名前を出してもらえるような試合にしたい」と新たな階級で存在感を示すことを誓う。厳しくなっていたという減量にかかる負担も軽減されることで「どんな動きができるのか楽しみ」と、その表情は明るい。《取材/構成 船橋真二郎》
■再起までの気持ちの変遷
――松本戦から半年というタイミングで再起戦を迎えます。
佐川 そうですね。まず、そこまで期間も空かずに試合ができるのが嬉しいという気持ちが単純にありますね。
――前回、敗れてから、ここまでどんな気持ちの変化をたどってきましたか。
佐川 判定負けが初めてで、なかなかの大差だったので、落ち込んだ期間もあって。そうですね。練習は一番長く休んだかもしれないです。
――どれくらいの期間?
佐川 1ヵ月ですかね。ちょっと離れてみてっていう感じにしようと思って。でも、「やっぱり、もう1回やりたい」となったのが5月半ばぐらいでした。
――あえて自分で距離を置いて。
佐川 前回の試合が盛り上がってくれたので、自分の中の反動がすごかったというか。注目された試合で負けてしまった分、すごく落ちて、次、頑張ろうとは、なかなか思えなくて。それが回復するまで、という気持ちでした。
――自然とやりたい気持ちに?
佐川 そうですね。終わった直後は「進退を考えよう」ぐらいまで落ちたんですけど、「まだ30(歳)になる年で、やれなくないしな」とか、やれる理由を探してました(笑い)。まあ、離れて、冷静になったら、またやりたくなるだろうな、というのはあったんですけど。
――年齢の話も出ましたが、ひとつの結果として、どう受け止めて?
佐川 あのときは世界ランクを持っていて、これに勝って、世界を目指そうと考えていたので。それも(気持ちが)落ちた要因になったんですけど。練習を再開して、「何か変化がほしいな」と思ってたときに「S・フェザーでいくか」みたいな話が加藤(健太トレーナー)さんからあって、そこで心機一転、頑張ろうという心境になれて。ジムも早い段階で試合の話を持ってきてくれたので、また一気にモチベーションがバーッと高まりました。
■S・フェザーでもやれることを見せる
――減量はかなり厳しくなっていた?
佐川 しんどいのはしんどいんですけど、落とせなくはないという感じですかね。でも、どこかでケガとかしたら、一気に(計画が)狂うだろうなというぐらい気が張りつめる部分はありました。
――綱渡りというか、何かひとつでもアクシデントがあったら。
佐川 はい。ちょっと無理だな、というのは。なので、そこまで減量を気にしなくてもよくなる分、パフォーマンスの練習に力を注げると思うので。
――試合直前は動けなくなるというか、体重を落とすので精一杯だった?
佐川 そんなこともなかったんですけど、体重を落とすために走る量を多くしていたので、疲労がすごくて。その疲労が少なくなるのがデカいですね。
――フェザーにプラスした契約体重で試合をしたこともあったと思いますが、違いは感じましたか。
佐川 フィリピンでやったときがS・フェザーだったんですけど、あのときはスタミナ切れすることなく最後まで動けましたね。
――あれは12ラウンドでしたよね(2019年5月のプロ8戦目)。あのときよりは筋量も増えているでしょうし。
佐川 (2021年10月の)小坂(烈=SUN-RISE)戦のときが58.0キロで、体がアップのときから動きましたね。フェザーの57.1キロだと体が戻り切らない感じが出てきたのと、足がふわふわする感覚もあって。4月の試合(松本戦)では5(ラウンド)から上げていこうとして、思うように上げていけなくて。それが減量のせいなのか、リカバリーのせいなのか、練習が足りなかったのかは分からないですけど、フェザーはキツイのかなと感じた部分ではありました。
――上限が57.1キロから58.9キロになって、プラスされる1.8キロをどう使うか考えるところは?
佐川 筋肉量を増やすのか、水抜きの量を減らすのか、なんですけど、そこは体組成計とかでデータを取りながら、今回の試合でやってみて。
――減量からリカバリーまでのサイクルを一度やってみてから。
佐川 そうですね。当日のリカバリーも含めて、今回が基準になると思うので。ここから試しながら。
――S・フェザーのベストをつくっていくということですね。相手の福井選手の印象は?
佐川 戦績以上の実力がある選手だと思ってます。
――同じジムの保坂(剛)選手、4月にライト級の日本王者になった仲里周磨(オキナワ)選手とも試合をしていて、負けてはいますけど、いわゆる格上、ホープと戦って、力をつけてきた選手です。
佐川 強い選手に勝つか、負けるか、あと一歩のところまで持っていける力があるので油断とかはないですし、確かライトでもやっていて、体も大きいと思うので。転級初戦に相応しいと思いますし、やりがいのある相手です。
――地力の部分、体格の部分で見ても、S・フェザーでも佐川はやれると証明するには相応しい相手だと。
佐川 そうですね。試される相手かな、というのがあるので。S・フェザーでもやれるというところを見せて、また自分の名前を出してもらえるような試合にしたいですね。
■訳がわからなくさせるボクシングを
――昨年1年で左ボディーだったり、左フックだったり、前の左手に磨きをかけたり、ずっとドラムミットで一発一発、体重を乗せたパンチを打てるようにと練習を続けてきて、「新しい自分になれた」と。継続して取り組んできたことを生かして、まだまだやっていきたいという思いもあったのでは?
佐川 そうですね。近い距離でも強いパンチを打てるように、とか、新しい部分を身に着けられたのかなとは思ってて。でも加藤さんと話して、(松本戦では)その新しい部分を出そうとし過ぎたというか、うまく自分のスタイルに取り込めてなかったなという反省がありますね。
――自分のスタイルにプラスして出したかったのが。
佐川 プラスアルファにできず、そこに重きを置いちゃったというか。
――途中から前に出て、ボディーを中心に攻めて、松本選手もプレッシャーを感じていたようですが。
佐川 そうですね。僕は分からなかったんですけど、1、2、3(ラウンド)と取られて、4、5から出て。そこからはずっと同じような近い距離でやって、それが果たして正解だったのか、という反省も含めて。
――「佐川=右」というイメージが浸透してきた中で、左ボディー、左フックを織り交ぜたり、本来の中長距離、近距離を使い分けたりできれば。
佐川 オールラウンダーになれると思いますし、どの場面でも勝てるという理想に近づけるので。次、見せられたらいいですけどね。
――佐川選手の本質的なよさは、タイミングを外したり、間合いをずらしたり、頭を使って、工夫して、多彩に右を使うということで。左が使えるようになることで幅が広がると考えていいんですよね?
佐川 そうですね。だいぶ広がるので。加藤さんともよく話すんですけど、相手に何が来るのか、どのタイミングなのか、訳わからなくさせようみたいな。それが自分の中の面白いボクシングなので。
――左を使えば、右が生きるし。
佐川 右を出せば、左も生きるので。いい相乗効果になると思うので、その楽しみもあるなっていう。
――それができたら、またボクシングが楽しくなりますよね。
佐川 そうですね。最近は緊張と減量とで、楽しめてなかったので。減量とリカバリーに気を遣い過ぎることがなくなる分、少しは気が楽になると思うので。まあ、緊張しいなんで、緊張はすると思いますけど(笑い)。
――心機一転ということで、新たな階級での再出発になるわけですが、どんな気持ちが強いですか。
佐川 ワクワクのほうが強いですね。S・フェザーで、どんな動きができるのか、どれぐらいのパフォーマンスを出せるのか、それが楽しみです。
――ガラッと話が変わりますが、前回からまた入場曲を変えて。再出発の今回は?
佐川 あ、もう前回と同じ『スパルタンX』でいいかなって。プロレスラーの三沢(光晴)さんが入場曲にしてたんですけど、自分はジャッキー・チェンが好きということで(笑い)。
――小さい頃、お父さんとよく映画を見ていて、ジャッキー・チェンを好きになったことがボクシングにつながった原点でもあるし。
佐川 はい。途中、(入場曲がジャッキー・チェンから離れて)迷走しましたけど、自分の原点はジャッキーなんで(笑い)。
――個人的には前の『ポリス・ストーリー』がよかったですけど(笑い)。
佐川 そうですね(笑い)。あれ以外にないなと思って、みんなにも「あそこから変えるのムズくない?」って言われましたけど。『スパルタンX』は自分としてはいいところを突けたかな、と思うので。
――では、入場曲もジャッキーに戻したし。
佐川 はい。そこもまた自分の気持ちが乗れるようになったところなので。前回の試合がいい経験になったと今回の結果で言うことができるように。それで新しい出発だな、と。
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