WBOウェルター級ノーマン初防衛 クエバスを3回TKO
2025年3月30日 15時17分
2025年3月30日 9時06分
4月8日の「ダイヤモンドグローブ」はトリプルメインイベント。日本王者が最強挑戦者を迎え撃つチャンピオンカーニバルの一環で、ライトフライ級、フライ級、スーパーウェルター級、全3階級の日本タイトルマッチが東京・後楽園ホールで開催される。
フライ級は王座決定戦。現・東洋太平洋王者の飯村樹輝弥(角海老宝石)が返上した王座を元同級王者で1位の永田丈晶(ながた・じょうすけ、協栄/27歳、7勝2敗)と元WBOアジアパシフィック王者で2位の山内涼太(やまうち・りょうた、角海老宝石/30歳、13勝12KO3敗)が争う。
ちょうど2年ぶりとなる再戦。前回も同王座の決定戦で、熱戦の末に7位の永田が1位の山内に判定で競り勝ち、プロ5戦目で王者となった。永田が1位、山内が2位で迎える今回はどうなるか。
永田は試練のときを乗り越えてきた。3ヵ月後の初防衛戦でアマチュア時代に1勝3敗の宿敵・飯村との接戦を0-2の判定で落とし、王座陥落。再起戦に敗れ、まさかの連敗を喫したときは「この先、どういう人生を送ったらいいのか」と頭が真っ白になり、進退も考えた。
そこから立ち上がり、昨年4月の再起戦勝利に続いて12月の神戸での最強挑戦者決定戦と連勝。挑戦権を手にした。妻・茜さんの存在が支えになったと感謝する。この3月24日に第一子となる長男が誕生。また前回は亡き父・勝之さんに手向けるために故郷の熊本にベルトを持ち帰ることができなかった。家族のためにも「しっかりベルトを獲り返したい」と力を込める。
山内に対しては「勝ったとはいえ、めちゃくちゃ強い人。油断できない」と敬意を表する。さらに今回は13勝中12KOという強打に加え、「(リベンジの)気持ちが乗っかる。まず気持ちで負けないように」と気を引き締める。(取材/構成 船橋真二郎)
■勝っても負けても引退と考えた苦境から
――タイトルを奪還するチャンスですが、どんな気持ちが一番強いですか。
永田 そうですね。タイトルを獲ったときは、めちゃくちゃよかったんですけどね。失ったときは、ほんとにきつかったんで。それを獲り返すということで、この試合はほんとに大事だなと思ってます。
――タイトルを奪われた飯村選手が返上しての王座決定戦ですけど。飯村選手に対する気持ちも強かったのではないですか。
永田 まあ、そうですね。でも、もともと返上するかもしれないという話はあったので、やっぱり、そうなったか、ぐらいの感じで。そこはあまり気にしてないですね。
――リベンジよりもタイトルを獲り返したいと。
永田 そうです。そっちのほうが大きいです。1回、勝ったとはいえ、(山内は)めちゃくちゃ強い人で、油断できないんで。気を引き締めて、しっかり獲りに行かないとな、ということをすごく感じてますね。
――あまり思い出したくないかもしれませんが、タイトルを失った後の再起戦で中国の選手(ルイ・チェンハオ)に負けてしまって。
永田 あ、はい。いやー、あのときが正直、一番きつかったですね(苦笑)。飯村くんに負けたときは悔しくて、ほんとに悔しい! っていう感じだったんですけど、あのときは悔しいという感情もなくて。この先、どうしよう、どういう人生を送ったらいいんだろう、みたいな。ただただ無になる感じでした。
――昨年4月に大保龍斗(横浜さくら)に判定勝ちして再起した控え室で、中国の選手に負けてからの4ヵ月を振り返って、思わず涙ぐむぐらいでしたよね。
永田 あ、そうでしたね(苦笑)。ほんとにきつかったですからね。
――進退も考えたと。
永田 そうですね。負けた後は1ヵ月ぐらい何もせず、ちょうど年末だったんで熊本に帰って。地元で応援してくれている方々とご飯を食べに行ったりして、そこで自分のことをほんとに応援してくれてるんだなと感じて、頑張らないとダメだなと思って、もう1回、立ち上がることができたんですけど。
――ただ、試合が決まってから、なかなか調子が上がらなかったんですよね。
永田 はい。試合に向けて、やらなきゃと思って、頑張って練習するんですけど、全然、調子が上がらなかったですね。勝っても負けても引退しようと考えたのは、そのときだったんで。
――そういう気持ちの吹っ切り方をしないといけないぐらい苦しかったというか。
永田 そうですね。それが試合の1ヵ月前ですかね。そこから調子が戻ってきて。
――その大保戦で印象に残っているのが、奥さんの茜さんが先頭に立つぐらいの感じで一緒に入場してきて。あまり表に出たくない方だと聞いていたので、心配だったんじゃないかと感じていたんですけど。
永田 そうですね。勝っても負けても引退ということを茜さんだけには伝えていたので。最後の試合という気持ちがあったんじゃないかと思います。
――そうだったんですか。その辛い時期は特に支えられたところもあったのではないですか。
永田 いや、めちゃくちゃありましたね。やっぱり、見守ってくれてたんで、支えになったところはすごくありました。
――奥さんのおかげで乗り越えられたところも。
永田 ありますね。感謝しかないです。で、勝ったら気分も上がってきて。もう、やろう! と思って。全然、違いました(笑い)。
――1勝の大きさですね。
永田 はい。やっぱり、大きいなと思いました。
■緊張感と自信を携えて
――そこから昨年12月の最強挑戦者決定戦まで8ヵ月ありました。その間、どんなことを意識して練習をしていましたか。
永田 ランキング的(当時日本フライ級4位)にも次が最強挑戦者決定戦になるかもしれなかったんで。そこに向けて、やってましたね。タイトルに挑戦するために。
――ある程度、相手が(当時同級3位の)小坂(駿)選手になるということは分かっていたんですかね。
永田 そうですね。まあ、(小坂が昨年7月に)サウスポーの亀山(大輝)選手と試合をしてたんで、そうなんだろうなという感じで。直接、(神戸に)試合を見に行ってはいないんですけど、映像は入手できたんで。そこから小坂選手の対策をやっていこうということで。
――大保選手との再起戦と比べて、試合前のプレッシャーはどうでしたか。
永田 でも、プレッシャーは毎回、感じてます(笑い)。結構、自分で自分を緊張させて試合に臨むところがあるので、そこはいつも通り。ある程度の緊張感を持ってできたと思います。
――試合内容を自分ではどう評価していますか。
永田 まあ、自分のボクシングは徹底することはできたのかなという感じですね。前半、じょじょに削って、後半、持っていくみたいな。自分の強みは生かせたと思うんで、よかったのかなと。
――次の山内選手は1度拳を交えて、強い選手だと分かっているということでしたが、あらためて、どういう印象を持ちましたか。
永田 いや、もうパンチ力。そこに尽きると思います。そこが一番ですね。
――前回の試合はどう振り返りますか。
永田 うまく1ラウンド、2ラウンドから山内さんの動きを削って、削って、削ることができて、最後は自分のリズムに持っていけたんで。あのときは想定通りのボクシングができたのかなと思います。
――展開としては大きく変わることはないですかね。
永田 まあ、自分はあまり器用じゃないんで。あまり変わらないと思うんですけど、向こうは(リベンジの)気持ちが乗っかって、この間より気持ちを入れてくると思うんで。まず気持ちで負けないようにしないといけないですね。
――内田(洋二トレーナー)さんに聞いたら、その中でもディフェンスを強化していると。
永田 そうですね。山内さんのパンチを一発もらって、効かされたら、一気に展開が変わって、持っていかれてしまう感じがあるので。今回は特に大事です。
――前回はジャッジ全員が96対94とつける2ポイント差という接戦でした。大きく展開が変わらないという意味では、そういう細かい部分が勝負を分けるかもしれないですね。
永田 いや、ほんとにそうです。集中力がすごく大事になると思います。
――前回はプロ5戦目で、初の大きな舞台でした。勝ち切ることができたのは何が一番大きかったと思いますか。
永田 そうですね。まず前半、相手のパンチに怯まずしっかり自分のボクシングができたこと、あとは自分に自信を持って、その上で試合に臨むことが大事だと思って、どの試合でも心がけてきたので。しっかり同じ感じで挑めたのが一番大きかったと思います。
――では、今回も自信を持って、ですね。
永田 はい。そのためにもしっかり調整して、気持ちをつくらないといけないですね。
■父との厳しい練習で培われたもの
――タイトルを失って、大きな心残りは一昨年の11月に亡くなったお父さんの新盆にベルトを持ち帰れなかったことですよね。
永田 そうですね。それはすごく大きいです。ほんとに。まだ熊本のほうにベルトを持って帰ってないんで、しっかり獲って、親父に見せたい気持ちはありますね。
――で、すみません。また中国の選手との試合の話になるんですけど、最初の1ラウンドの強烈な一撃で記憶はほとんどないですよね。
永田 まったくないです。1、2ラウンドは記憶ないです。
――あの試合前の取材でお父さんの話をしたからかもしれないですけど、あの状況から強打の相手に攻めて、攻めて、挽回していくときの地の強さというか、体に染みついたものというか。幼い頃、お父さんと厳しい練習をしてきた話を思い出したんですね。
永田 いや、でも、ほんとにそれだと思います。小っちゃい頃、親父とやってきたことがあのとき出てたんだろうなというのは、ほんとにありましたね。
――毎日、嫌で仕方なかったと前に言ってましたけど、永田選手の根っこにはお父さんに厳しく鍛えられた練習があると感じたんですけど。
永田 そうですね。その後、3、4、5ラウンドと少しずつ記憶が戻ってきたとき、自分のボクシングを淡々とやることが大事で、それを実行できたのも親父との練習があったからかなと思います。確かに。
――熊本にベルトを持ち帰りたいですね。
永田 はい。で、あと1個、3月末、28日に子どもが生まれる予定で。その子のためにもお父さんはチャンピオンなんだぞっていうのを見せたいですし、ここまで支えてくれた奥さん、茜さんのためにも、しっかりベルトを獲り返したいと思っているので。
――タイトルを獲り返さないといけない理由がたくさんあるわけですね。
永田 そうですね。めちゃくちゃ辛いときに支えてくれた周りの応援してくれてる方々のためにも獲り返さなきゃいけないのもあるので。ほんとにいろんな理由があります(笑い)。
――そういう一つひとつが、また自分を支えてくれるでしょうからね。
永田 はい。もちろん自分のためにも。それが一番ではあるんで。
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