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“父子鷹”松本圭佑ロングインタビュー「圧倒して勝ちたい」 4.18元王者の佐川遼と日本王座戦

2023年4月17日 11時22分

 4月18日、後楽園ホールで行われる「ダイヤモンドグローブ」のメインは注目の日本フェザー級王座決定戦。3代前の元日本同級王者で世界ランキング(IBF8位、WBC13位)にも名前を連ねる実力者の佐川遼(三迫/29歳、12勝7KO2敗)と、小学生の頃から注目を集め、豊富なアマチュアキャリアを経てプロに転向以来、7戦全勝7KOの快進撃を続けるホープ・松本圭佑(大橋/23歳)が激突する。

 両者はどんな思いを持って、この一戦に臨むのか。まずは世界に3度挑戦した元東洋太平洋、日本フェザー級王者の松本好二トレーナーとの“父子鷹”でも知られ、初のタイトル挑戦となる松本のインタビューからお届けする。(取材/構成 船橋真二郎)

父でトレーナーの好二さんと

■父親と同じベルトがプラスのモチベーション

――1月10日に今年最初の試合をした段階で、ある程度、タイトルマッチが近いことは意識していたところもあったのではないですか。

松本 そうですね。でも、もうちょっと先かな、と思ってたら、もう2日後とかに話が来たんで……。

――2日後ですか!?

松本 2日後でした(笑)。

――では、最初は驚いたのでは?(笑)

松本 そうですね(笑)。あ、もう決まったんだっていう感じで、怖さと不安もあったんですけど、やっと大一番ができるワクワクのほうが大きかったですね。すぐに気持ちを切り替えて、準備に入りました。

――ターゲットが日本フェザー級タイトルになったことで、いろいろな思いがあるのではないでしょうか。

松本 まず日本一を決める試合ということで、すごく気合いが入ってますね。佐川選手は実績も実力もあるし、簡単じゃないと思ってるんですけど、スターになる選手は絶対に踏むステップだと思ってるので、しっかり圧倒して、上に行きたいという気持ちもあります。あとは父親が昔、持っていたタイトルでもあるので、親子チャンピオンはあっても、同じ階級の同じベルトは聞いたことがなくて、さらにプラスのモチベーションになりますね。

――確かに同じ階級では初めてかもしれないですね(※)。それにお父さんも王座決定戦でした。松本好二さんの試合を映像でご覧になることはあるんですか。

※野口進・恭親子はウェルター級、フライ級、カシアス内藤・律樹親子はミドル級、S・フェザー級、寺地永・拳四朗親子はL・ヘビー級、L・フライ級

松本 小っちゃい頃、ビデオで残っている試合はよく見てましたね。

――初めて日本タイトルを獲った渡辺司戦(1991年2月18日)を見たことは?

松本 はい。あります。

――終始、アウトボクシングで相手を封じて、最後は右フックのカウンターで一撃KO。完璧な内容でしたよね。

松本 そうですね。自分もそういう試合ができるようにしたいです。

――ずっとトレーナーと選手として二人三脚でやってこられましたが、ご自身がプロになって、あらためて、お父さんのすごさを感じるところはありますか。

松本 それこそ僕が今、大一番だと思ってる日本タイトルマッチを十何回(13度)もやって、タイトルも3回獲っているわけですし、僕ぐらいの歳で世界タイトルも経験しているので(1992年4月25日、22歳で世界初挑戦)。自分と重ねて考えると、すごいことをしているなと思いますよね。よく「自分は世界チャンピオンになれなかったから」って父親は言うんですけど、そこに行くだけでもすごいことだなって、今、より一層、実感してますね。尊敬できますし、まず同じベルトを獲りたいっていう気持ちも強くなります。

――佐川選手とは大学(東京農業大)の6つ違いの先輩・後輩になりますが、面識はあったんですか。

松本 ここまではなかったです。僕の先輩、佐川選手からしたら後輩という共通の方はいるんですけど、直接の面識は。

――では、2月14日に後楽園ホールのリングで顔を合わせたのが(※)。

※松本が敢闘賞に選ばれた1月度月間賞の表彰式と合わせ、両者がそろって、試合を告知した。

松本 はい。初ぐらいですね(笑)。

松本(左)と佐川は2月のリングで顔を合わせた

――体格だったり、発する雰囲気だったり、何か感じたことは?

松本 ああ。でも、バチバチした感じもなく、なごやかな雰囲気だったので。強い人って、オラオラしないじゃないですか(笑)。そういうのは感じましたし、油断することなく、淡々としっかり練習をこなしてくるんだろうなという印象は受けたので、もちろん、こっちもしっかり準備しないといけないということは思いました。

――体格的にはどう感じましたか。

松本 身長は同じぐらいでしたね。小さい選手よりは大きめの選手のほうがやりやすいので、問題ないかなっていう感じはします。

――1度、日本チャンピオンにもなっている選手ですが、どんな印象を持っていますか。

松本 よく言われることで、右のパンチを得意としてると思うので、警戒はするんですけど、そう思ってて、左フックが飛んできたら、危なかったりするので、どのパンチにも対応できるようなイメージをしています。

――右にとらわれ過ぎないように。

松本 はい。他のパンチもあると思うので、全体的にもらわないように気をつけつつ、自分のパンチを自分の距離で当てることをいちばんにやっていこうと思ってます。

――距離感、タイミングが独特な選手ですよね。

松本 そうですね。距離感も独特で、リズム感も独特だと思いますし、距離が遠くて、懐が深そうなので、そこがいちばんのポイントかなと思います。で、僕は全部KOで、前半で終わってきてるので(元日本ランカーの荒木貴裕戦の5回TKOが最長ラウンド)、後半、試されていないところがあると思うんですよね。佐川選手はキャリアもあって、そういう経験もしてきているので、後半勝負になっても対応できるように練習しています。

■井上尚弥とのスパーリングが試合以上の自信に

――ここまで7戦、元日本ランカー2人と対戦していますが、現役のランカーとの対戦経験がないまま初のタイトルマッチに臨みます。その点はどう捉えていますか。

松本 でも前回の試合が終わったときも言ったんですけど、僕は強い選手が相手のほうが力を発揮できると思ってるので、特に不安視はしてないですね。大橋ジムでのスパーリングの濃さ、相手で言ったら、試合以上の経験をさせてもらっているので、その経験が自信になっています。

――それこそ前回の試合後、松本選手が例に出していたのが井上尚弥選手とのスパーリングで、一瞬でも気を抜いたら殺されると強い言葉を使って表現していました。それぐらいの空気を感じる。

松本 そうですね。緊張感が違いますし、殴り合ってる時間より見合ってる時間のほうが疲れるんですよ。よくアニメとかであるじゃないですか。ここで手を出したら斬られる予感がするから、手を引っ込めるとか。それに似た感じがあって。今、ここで右を打ったらカウンターを合わされるなとか、駆け引きの状態から、そういう緊張感のあるやり取りがあるんですけど、なかなか試合でも経験できないことなので。

――スパーリングで感じる感覚ではないんでしょうね。

松本 はい。大きなグローブで、ヘッドギアを着けてるんですけどね(笑)。尚弥さんとは最長で6ラウンド、スパーリングしたことがあって、少しでも隙を見せたり、疲れたところを見せたら、すぐ見抜いて突いてこられますし、もちろん全力じゃないかもしれないけど、僕からしたら、とてつもない経験をさせてもらっているので、試合以上に自信になってますね。

――佐川選手とは駆け引きの時間が長くなる可能性もあるし。

松本 そうですね。尚弥さんの場合、右も左もどっちも研ぎすまされていて、倒せるパンチを打ってくるので、どっちも警戒しなきゃいけないですし、世界のトップレベルを体感してるっていう自負を持っていきたいです。かと言って、佐川選手には独特のリズムがあると思うので過信せずに。そこはしっかり試合で見極めていこうと思います。

――2月下旬から徳之島に合宿に行ったそうですね。

松本 はい。10日間ですね。

――野木(丈司トレーナー=志成)さんに声をかけていただいて?

松本 はい。比嘉(大吾)さんも木村吉光さんも試合が遠いので、僕メインで組んでいただいて。

――そうだったんですね。で、そこに同い年の堤(駿斗)選手も(笑)。

松本 そうなんですよ(笑)。ライバル関係なんで、周りにも結構言われたんですけど。でも、駿斗の場合、ライバルでもあるんですけど、ジュニアの頃、一緒に(強化)合宿に行ったり、海外に遠征に行ったり、仲も悪くないですし、お互いに楽しく、きつい練習を一緒に頑張りました。

――堤選手は東洋太平洋の上位にいるから。

松本 はい。そっちで出る可能性はありますよね(※)。

※東洋太平洋フェザー級王座決定戦(5月31日)が4月3日に正式発表。

――それこそ、同じ時期に同じ階級のチャンピオンとして並び立ったら、また周囲が騒がしくなるかもしれないですね。

松本 そうですね(笑)。盛り上がると思いますし、だからこそ、自分が日本チャンピオンになれずに終わって、駿斗がチャンピオンになったら、どんどん離されてしまうので。しっかり獲らないといけないですね。

――徳之島ではどんなメニューを?

松本 基本1日3部練で、朝6時から小出(義男)監督のメモリアルパークみたいな起伏のある1周2キロのクロスカントリーのコースでジョギングや競歩をして、100メートルごとにサイドステップと後ろ向きの走りをして。昼は11時頃から4人でマスを1時間ぐらいぶっ通しで回して。で、午後3時からは毎週やっているような階段、坂道を走ったり、山に入って、ものすごい傾斜のところを走ったり。それをひたすら10日間。長いラウンドとか消耗戦を経験していない不安もあるんですけど、これをやってきたっていう気持ちがあったら超えられるんじゃないかなって。そこも自信になりました。

■秘めたポテンシャルを楽しみにしてほしい

――昨年9月に元日本ランカーの石田(凌太=角海老宝石)選手に2回TKO勝ちした試合から雰囲気が変わってきて、迫力が出てきた印象があります。

松本 そうかもしれないですね。石田選手、ブランクもあったし、負けたりもしましたけど、思いきりパンチを振ってきたり、怖いところがあるじゃないですか。試される試合かなと思った自分もいたし、危ないんじゃないかみたいな声も聞こえてきて。そこでさっき言ったみたいに強い選手のほうが力を発揮できるじゃないけど、気持ちの入り方、集中力が全然、違いました。

――いちばん印象に残ったのは、左フックで倒して、倒れかかっているところをさらに殴りかかっていったじゃないですか。ああいう姿を見たことがなくて。

松本 確かにそうですね。

攻め抜いた22年9月の石田戦

――ボクサーとしては当たり前なのかもしれないですけど、怖いぐらいの迫力を感じました。松本選手、優しい感じもあるじゃないですか。

松本 ああ、はい(笑)。それは小っちゃい頃とか、アマチュア時代はずっと言われ続けてきたところで。スパーリングでも倒すぐらいの勢いでやらないといけないところをあんまりやっつけ過ぎてもなとか、ブレーキをかけちゃうんですよ。優しすぎるって、ずっと父親だったり、野木さんからも言われたことがあって。

――では、そこは前から意識してきた部分ではあったんですね。

松本 そうですね。プロの試合になったら、なおさらチャンスで仕留めないと自分がやられる可能性だってあるわけじゃないですか。そう考えたら、獰猛に仕留めにいかないといけないっていうのはありますね。

――食うか食われるかみたいな感覚が身に着いてきた。

松本 はい。仕留めるチャンスが来たら、一気に仕留めて、終わらせないといけないという感覚は一層、高まった感じが自分でもあります。

――そういう自信が体に表れるというか、体も大きくなって、そこでも迫力を増してきた感じがします。

松本 そこはプロの減量からリカバリーの仕方がだんだんフィットしてきたのもあると思います。アマチュアの計量は当日ですけど、プロは前日で試合は次の日じゃないですか。うまく持っていけるようになって、しっかり体が戻るようになったので。

――そうなると聞くまでもないでしょうけど、2年8ヵ月で初のタイトル挑戦はいいタイミングですね。

松本 はい。バッチリだと思います。

――相手は元王者で、世界ランカーで、それこそ、気持ちも入るし、また違う松本圭佑を見せられるというのもありますか。

松本 そこが自分としても楽しみなところで、まだ試合で見せられていない部分があると思ってるし、僕の秘めたポテンシャルを楽しみにしてもらいたいですね。スパーリングの自信もそうですし、ボクシングのキャリア的にも自分は長いので、面と向かったときの自分の感覚というものを信じて挑みたいです。

――松本圭佑はどれぐらいのものなんだと注目される試合になると思いますし、周囲の期待も感じていると思います。プレッシャーも大きいのではないですか。

松本 いや、プレッシャーはあまり感じてなくて、逆にそういう声があったほうが圧倒して勝ちたいっていう気持ちになりますね。そんな簡単じゃないのは分かってるんですけど、だからこそ、いい意味で驚かせたいというか。

――自分の力を証明するにはふさわしい相手でもあると。

松本 ふさわしいと思います。自分が試されるというより、そういう自信が今はある状態なので、圧倒する勝ち方ができたら、周りはどんな反応をするんだろうとか、ワクワクしてきますね。もちろん苦しい展開になるかもしれないですけど、将来的に世界チャンピオンとか、スターになっていく選手は絶対に超えていく試合だと思うので。ここはしっかり獲りたいと思います。

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