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今年40歳の王者 出田裕一インタビュー 「変化」求め2.13日本S・ウェルター級王座防衛戦

2024年2月6日 13時26分

 2月13日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のメインは日本S・ウェルター級タイトルマッチ。日本王者と最強挑戦者が激突する恒例のチャンピオンカーニバルの開幕カードになる。

 今年10月で40歳、“不惑の年”を迎える王者の出田裕一(三迫/17勝9KO16敗1分)が、これがタイトル初挑戦の24歳、同級1位の小林柾貴(こばやし・まさき/角海老宝石/9勝4KO2敗)を迎え、2度目の防衛戦に臨む。

 泥沼の11連敗、引退、所属ジムの閉鎖……出田は波瀾万丈のボクサー人生を歩んできた。デビューから18年目で悲願のベルトを奪取したのが一昨年の11月。が、またも試練に見舞われる。川崎真琴(RK蒲田=引退)との激闘の代償に左目網膜剥離を発症し、手術。完治まで長期離脱を余儀なくされた。昨年8月、この間に暫定王者となっていた中島玲(石田)に逆転の2-1判定で競り勝ち、戦線復帰。王座を統一するとともに初防衛に成功した。

 小林は昨年3月、日本同級3位に躍進していた足名優太(金子)を8ヵ月ぶりの再戦で返り討ちにし、初8回戦で初の日本ランク入り。同10月の最強挑戦者決定戦で、中島と暫定王座を争ったベテランサウスポーの加藤寿(熊谷コサカ)を3回でストップし、挑戦権をつかんだ。

 今回、出田がテーマに掲げるのは「変化」。前に出て、コツコツとパンチを繰り出し、接近戦に巻き込んでいくスタイルをベースにプラスアルファを自らに求めてきたという。ヨネクラジム時代からコンビを組む横井龍一トレーナーも「気持ちが強い」と称える小林に対し、勝利の絶対条件を「いかに相手の心が折れるまで自分のボクシングを貫き通せるか」としつつ、「スパイスとして加えてきた“技術”が自然と出ると思う」と語る。

 個人からチームへ。会長、トレーナー、ジムメイト、文字通りのジム一丸のサポートでタイトルを獲った川崎戦から、出田の意識は大きく「変化」した。小林戦で「いい意味で変化を遂げた姿を見せたい」という出田は“考える人”でもある。一戦一戦、タイトルマッチに向かう自身の姿勢、心持ちにしっくりくる言葉を探し当て、試合に臨んできた。今回もトレーニングに励みながら、出田は自分の内面と向き合ってきた。《取材/構成 船橋真二郎》

■周りの力を頼ったことが勝因

――昨年は網膜剥離から復帰して、暫定王者の中島選手との初防衛戦をクリアしました。どんな1年と2023年を振り返りますか。

出田 振り返ると「挑戦」という言葉になるんですかね。復帰という意味でも、中島くんに対しても。

――「挑戦」の1年だった。

出田 そう思います。

――中島選手との試合についてはどう振り返りますか。

出田 川崎さんとの試合もそうでしたけど、チームがあって、勝てたという試合ですね。より周りの力に頼ったことが勝因のひとつとしては大きかったのかなと私は感じます。

――どんなところで、よりチームの力に助けられたと?

出田 何事も「頼る」ということをしてきたところです。どんな些細なことでも。川崎さんのときは、周りが言ってくれて、それを信じてやり続けました。中島くんのときは、例えばスパーリングのときのグローブを着けてもらうとか、そういう細かいところでも周りを頼ろうと思って、行動を変化させたというか。

――川崎戦は周りの力に身を任せた、中島戦は自分から積極的に周りに頼ったというか。

出田 そうですね。自分でできるからこそ、別に人にやってもらう必要性を感じないことでも頼りました(笑い)。

出田(左)は昨年8月、中島に競り勝ってベルトを守った

――「頼る」ことで、どんなプラスの効果が?

出田 なんでしょう……? 感じ方、捉え方は人それぞれ違うと思うんですけど、そうすることで力をもらってると言うんでしょうか。自分のなかでは、そう勝手に感じてました。

――覚えているのは、川崎戦の前のスパーリングを見させてもらいましたけど、担当の横井トレーナーだけでなく、三迫(貴志)会長、他のトレーナー、選手、ジムのみんなが声を出して、試合と同じように出田選手を盛り立てていました。中島戦の前は、前回とはまた違うと言っていましたよね。

出田 はい。だから、川崎さんのときの「チーム」とは、また別なのかなと感じますけど。一緒に練習しているだけでも力をもらってる、みなさんの力を吸い取ってるというか……。

――例えばジムメイトと一緒にサンドバッグを叩いていても?

出田 そうですね。相手にはその意思はなくても自分でパワーをもらってる感じがあったので。

――それは川崎戦を境に出田選手の意識が変わってきたから。

出田 そうですね。変えた……。うん。変えたのもありました。川崎さんのときと同じ気持ちでは、中島くんには勝てないなというのがあって。

――印象的なのは、川崎選手には「勝つ」という言葉が自分の気持ちにピタリとハマったと。でも、中島選手には「勝つ」ではハマらなくて……。

出田 ハマらなかったです。

――それが客観的に見て、相手の力が上だから、自分が挑戦するという気持ちの「勝ちたい」でしっくりきたということでしたよね。

出田 そうです。練習は迷いなくできてたんですけど、あるとき、あれ? 「勝ちたい」という気持ちのままでは結果には至らないな、と感じて。考えたのが「頼る」ことでした。「勝ちたい」って、もしかしたら自分の力だけでは中島くんには勝てないと思ってるからで、じゃあ、勝つという結果に至るには、どうしたらいいんだろうと。しっくりくるのは「勝ちたい」。でも、自分の力だけじゃ足りない。なら、周りの力を頼ろうと考えて、そこから自分の行動を変えました。それで気持ちがラクになったのはあったと思います。

■自信になった中島戦の勝利を経て

――試合自体はどうでしたか。前半は中島選手がポイントを取って、盛り返すという展開でしたけど、出田選手には終始、落ち着きが感じられました。

出田 ああ、確かに。焦ってはなかったです。落ち着いてたんでしょうね。まあ、言われてたことを勝手にやり出したりとか(笑い)。

――横井トレーナーから「まだ早い」と言われたと(笑い)。

出田 はい。怒られました(笑い)。ただ、それができた、それをしたということは、確かに落ち着いてたんだと思います。

――焦りというより、できると自分で判断して、展開を先に進めた。

出田 はい。判断です。自分のなかで「変化」をつけようと。いつもは自分から攻めるところを、守って、相手に攻めさせてから攻める、後の先じゃないですけど。横井先生からは「もっと徹底的に自分が攻めてる状況で、その変化をつけるならいいけど」と怒られました(笑い)。

――ずっと攻めていたのをパッと切り替えて、相手の呼吸をずらすというか。ただ、そのタイミングが早すぎた。

出田 早すぎたんだと思います(笑い)。

――前半はリードされましたけど、心情としては、このまま盛り返せるという感じでしたか。

出田 盛り返せる……。いや、ただ練習でやってきたこと、言われたことをやるだけ、という感じで。盛り返せる、盛り返せないとか、そういう気持ちはまったくなかったです。

――自分のやるべきことをやり続けた。

出田 はい。これでうまくいくのかな? いかないのかな? という感じは何もなかったです。川崎さんの試合と一緒で、言われてきたこと、やってきたことをただやるだけで。

――先走ったところはあったけど、それもやってきたことではあって(笑い)。

出田 そうですね(笑い)。

――ただ、そこから修正して、またやってきたことを徹底してやり続けることで流れが自分のものになったという感覚ですか。

出田 はい。で、結果に至ったのかなと。

――中島戦の前に言っていたのが「届かない綱に手を伸ばして、自分が勝利を引き寄せる姿を見てもらいたい」と。まさにその通りの展開ではありました。

出田 確かに(笑い)。結果、そうなりましたけど。

最後は出田の手があがった中島戦

――10ラウンドを終えて、勝ち負けについては?

出田 負けてるとも思いませんでしたけど、どっちに転んだとしても結果は受け入れられる気持ちではありました。やることは出し切れたなという。

――勝った瞬間は?

出田 あ、勝ったんだという感じですかね。

――ただ、結果を受け入れた。

出田 そうです。あ、ジャッジは自分につけてくれたんだなという感じで。

――相手を上と認めて、「勝ちたい」と挑んだ試合でポイント上では逆転勝ちしました。あの試合を経て、何か自分のなかで変化したこと、感じたことは?

出田 自信はついたと思います。中島くんに勝てたことで。そういうなかで練習ができていて、自信をより確固としたものにするために、より「変化」をつけたボクシングができるようになりたいと思ってます。接近戦、手数で相手を嫌がらせて、体力を奪って、それが自分のメインではあるんですけど、それだけじゃなく、そのなかで強弱をつけるとか、倒せるパンチを打つとか。

――自分のベースをしっかり持ちつつ、そこにプラスして、効かせるパンチ、強弱をつけたコンビネーションとか、先ほどの後の先もそうだと思いますけど、そういった「変化」をつけるというか。

出田 そうですね。もっと強くなりたいという欲はやはりあるので。

――中島戦から約6ヵ月ですか。そういう「変化」をプラスして、より強くなるという気持ちで練習してきて。では、次の試合で。

出田 はい。いい意味で「変化」を遂げた姿を見せたいなと思ってます。

長年コンビを組む横井トレーナーと

■「進化」「成長」ではなく、「変化」

――先ほども話に出ましたが、川崎戦は「勝つ」、中島戦は「勝ちたい」、次の小林戦に向けては、どんな言葉がしっくりきていますか。

出田 もう、今回は「勝つ」です。そのイメージを言葉に出して言ったとき、すごくしっくりきたので。油断はしてないですけど、「勝つ」というイメージしか湧かないというか。

――小林選手の最強挑戦者決定戦は会場で横井トレーナーと見ていましたよね。

出田 観に行きました。

――どんな印象を受けましたか。

出田 ガードが高いし、屈強でもあって、自分のペースを保てるというか、待ち方が嫌だなと感じて。加藤さんがサウスポーだから、右を狙ってたのか、相手に打たせてから打つみたいな、じわじわした感じが。そういった意味では辛抱強さ、メンタルの強さを感じました。1ラウンドを見た限りでは。

――1ラウンドを見た限りでは?

出田 はい。待ちながらも攻めてる感じがよかったので、このまま小林くんがと思ったら、加藤さんが左を当てるタイミング、距離感をつかんできたのか、2ラウンド目に小林くんが何発かもらって。

――手が出なくなりましたよね。

出田 そうなんです。あれ? と思って(笑い)。意外と打たれると嫌な感じをしてしまうところがあるのかなというのが垣間見えた気もして。そしたら。

――3ラウンドに左フックで倒して。

出田 はい。で、ダウンを取ったら一気に。あのまとめるところ、逃さないところは若さゆえなのか、すごいなと思いましたけど。

――短い時間でしたが、さまざまな面が見えた。

出田 そうですね。だからといって、加藤さんがサウスポーだったというのもあるので、どう動いてくるかは分からないですけど。

――映像を含めて、他に小林選手の試合を見たのは?

出田 加藤さんとの試合ぐらいです。まあ、そんなに自分はイメージしないようにしてるというか、(横井トレーナーに)任せているので。

――基本的に横井トレーナーとやってきたことを信じてやるというところは、今までと変わらない。

出田 そうですね。もちろん自分の戦い方としては、相手の中に入るんですけど、小林くんがどう反応するか。身長も高いですし、リーチもあるから脚を使うのか。ただ、加藤さんとの試合を見ても、(接近戦で)ボディーだったり、アッパーを強く打っていたので、そういうパンチには注意しないといけないなと思いますけど。

――で、試合の中で「変化」を見せるということを含めてだと思うんですけど、先ほど「変化」を遂げた姿を見せたいと。例えば「進化」とか、「成長」とか、表現の仕方は他にもあると思いますけど。

出田 いや、「進化」ではなくて、「成長」ではなくて、私はあえて「変化」を選びました。

――「変化」が一番しっくりくる。

出田 はい。「進化」とか、「成長」だと、私の勝手なイメージなんですけど、もっと手数を増やすとか、もっと体力をつけるとか、今やってることをもっとやれるように高めるというか。そんなふうに私は捉えてしまうので。まったく変えるわけではないんですけど、「変化」という言葉を選んで使ってます。

■もっと強くなりたい

――今年は40歳になる年で。

出田 ああ、そうですね。40ですね。

――そういう節目の年でもある2024年をどんな1年にしたいというのは?

出田 いやー、なんでしょうね……? ボクシングだったら、やはり「変化」、さっき言ったように「変化」を遂げて、より強くなりたいな、と思いますけど。人生に対しては……考えてなかったです(笑い)。

――ボクサーとして、40歳という年齢をどう感じていますか。

出田 いや、何も感じず。身体能力的には上がってる……上がってるという言い方は違うな、少し戻ってきた感じがあるので。

――戻ってきた?

出田 若い頃と(同じと)まではいかないですけど。

――それは体の使い方が分かってきたということなんですか。

出田 若い頃は速く走れたのが年齢を重ねるごとに速く走れなくなってきた。その要因としては、体力が落ちたとか、いろいろあると思うんですけど、体が硬くなって、スムーズに動かしにくくなってきたというのは絶対にあると思うので、以前よりは体が柔らかくなってきて、そこまで疲れずに、動きとしても、走るペースとしても、速く走れるようになってきたのかな……と(笑い)。

――30代後半まで現役でやっていた荒川仁人(八王子中屋→ワタナベ)さんがいるじゃないですか。彼が当時、体力とか、筋力は衰えてるんじゃなくて、年齢に応じて変化していると。だから、自分は体の変化に適応しているんだ、と言っていたことがあるんです。

出田 あ、なるほど。

――変化している体を若い頃と同じように扱おうとしても無理がある。自分の今の体の状態を知って、それに適応する。それができている限りは続けると。荒川さんの感覚と今の動きができるようになってきたという出田選手の感覚は近いんじゃないかなと。

出田 はい。近いんだと思います。自分の年齢に合わせた動きが、より突き詰められてきた……。いや、そうなんでしょうね(笑い)。

――チャンピオンになった頃は、防衛を続けて、この年齢でもチャンピオンでいられることを見せたいと。ただ、中島選手に挑戦するという気持ちになって、ベルトを守り続けるんじゃなくて、チャンスがあったら上に挑戦していきたいと言っていました。そこは今も変化していないですか。

出田 その目標がないと言うのは違いますけど、今は「これ」という具体的な目標は何もなく。もっと自分が強くなりたいという気持ちが強く出てきてるという感じですかね。そのなかに戦う相手がいる。そんな感じです。

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