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前日本フライ級王者 永田丈晶インタビュー プロ初黒星の重み受け止め12.12再起戦

2023年12月5日 12時13分

 12月12日、東京・後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」のセミファイナルで、前・日本フライ級王者の永田丈晶(協栄/25歳、5勝1敗)が5ヵ月ぶりの再起戦に臨む。今年7月、アマチュア時代に1勝3敗の宿敵・飯村樹輝弥(角海老宝石)に僅差0-2の判定負けで初防衛に失敗。4月に王座決定戦で奪取したベルトを失った。

永田(左)と内田トレーナー

 相手のルオ・チェンハオ(中国/29歳、6勝4KO1敗1分)とは、プロ初のサウスポー対決になる。ルオも初黒星からの復帰戦。6月の前戦で、かつて井上拓真(大橋)とWBC世界バンタム級暫定王座を争い、現在もWBC同級2位のタサーナ・サラパットに敵地・タイで惜敗した。この10月に苗村修悟(SRS)に3回TKO勝ちしたフー・ロンイー(中国)との無敗対決に勝ったこともある。内田洋二トレーナーともども「侮れない相手」と気を引き締める。

 中央大学卒業後にいったん競技を離れ、求人広告会社に就職してからのプロ挑戦だった。「応援の重み」を感じてきたという。「応援してくれる人のためにも、さらに先に進めるように」。試合の前日11日には26歳の誕生日を迎える。永田に再起にかける思いを聞いた。《取材/構成 船橋真二郎》

■飯村樹輝弥はいつか超えないといけない相手

――初防衛戦は競った内容で、判定も僅差(94対96×2、95対95)でした。試合が終わった瞬間はどう感じていましたか。

永田 どっちか分かんねえなっていう感じですかね。負けと言われても仕方ねえかな、みたいな。いつも飯村くんとやるときと同じ感じというか。

――アマチュア時代も飯村選手とは競った試合が多かった?

永田 そうですね。どっちか分かんねえなー、みたいな(笑い)。

――映像でも振り返ったと思いますが、感覚の違いはなかったですか。

永田 常に攻めてはいるんですけど、飯村くんの巧さも出てて、見映え的にどうなんだろうな、というところは結構ありましたね。

――試合自体はいい試合で。お互いにテンポが速く、クリーンなパンチの交換が最後の最後まで続いて、会場も盛り上がりましたよね。

永田 ありがとうございます。盛り上がってはいたんですけどねー(苦笑)。

――結果が結果なので複雑だと思いますが、お互いの応援もすごくて、声出し解禁後、日本タイトルマッチの雰囲気を久々に感じた気がしました。あの空気を味わったからこそ、あそこに戻りたいという気持ちも強くなりませんか?

永田 ほんとですね。ああいう試合を応援してくれる方たちに見せられて、よかったなと思う部分もあるし、あそこに戻らないといけないですよね。

永田(左)は7月、接戦の末に飯村に敗れた

――11月4日に初防衛した飯村選手に対する思いは?

永田 そこは前と変わらずです。今まで善戦して負けてるので、気持ち(が足りなかった)というところもあったと思うし、自分自身、しっかり超えないといけないというのは感じてますね。

――同い年でもあるし、飯村選手と初防衛戦でやると決まったときは「運命」という言葉も使っていました。いつか彼を超えないといけないという気持ちが一層、強くなったんでしょうね。

永田 はい。そこはもう。もし次、やるとすると6回目ですけどね(苦笑)。

――永田選手が高校最後の国体で優勝したときの準々決勝で勝って。大学では飯村選手の3勝。プロでの前回が5回目だったんですね。

永田 そうです、そうです。そこはもう超えないといけないですね。

■1敗の重み、応援の重み

――飯村戦が終わって、練習を再開したのはいつ頃だったんですか?

永田 練習は1週間ぐらいで再開しました。

――心境としてはどのような。

永田 そうですね……。これからしっかりやらないといけない、と思う反面、気持ち的に少し引きずってる部分は最初のうちはありました。

――やはりプロの負けというのは。

永田 アマチュアの負けとは全然、違いますね。1敗の重みがデカくて。また日本を獲るとなったら、来年の最強挑戦者決定戦とか、そんな話になってくると思うんで。そう考えるとプロの負けはデカいな、とすごく実感してます。

――日本王者のベルトは持ち回りだから。

永田 そうなんですよー。家からなくなりましたからね(苦笑)。

――日常の中で実感するでしょうね。

永田 はい。手元からなくなるんで、すごく大きいですね。

――奥さんの反応はどうでしたか。

永田 奥さんも悔しがってて。絶対にやり返す、みたいな感じですね。今も。

――あ、今も。見たことのなかった一面だったのでは?

永田 そうですね(笑い)。付き合い始めたときがプロデビュー戦(2021年6月)の1ヵ月後で、自分が勝ってる姿しか見てなかったですからね。

――今も絶対にやり返してやる、という感じでいるということは、同じ気持ちになってくれているんですね。

永田 そうです、そうです。絶対にやり返す、というのは、今もすごくあると思います(笑い)。

――最初はプロになるつもりはなくて、大学を出て、就職して働き始めたはずが、アマチュア時代に戦った松本圭佑選手、中垣龍汰朗選手(いずれも大橋)がプロに転向するニュースを見て、気持ちが変わったんでしたよね。

永田 あ、そうですね(笑い)。

――それからプロ5戦目、デビューから2年弱で日本王者になって、1敗の重みも感じて。今、プロでやるということにどんな気持ちを持っていますか。

永田 そうですね。プロになって、で、チャンピオンになって、だからこそ、応援してくれる人がすごくいてくれて。アマチュアのとき以上にすごく重みを感じるんですよ。その人たちのためにも、さらに先に進めるように。自分自身、しっかりやっていかないといけないというのは、すごく感じるところです。

■同世代、同郷・熊本勢の活躍と亡き父への思い

――2つ年下の松本圭佑選手とは、同じ4月に日本王者になって。で、同い年の飯村選手とか、今、同時期にアマチュアでやっていた選手たちがプロで台頭してきていますが、どう感じていますか。

永田 そうですね。みんな、プロで活躍しているので、自分の中でもすごく刺激になりますね。自分と同い年の重岡優大(ワタナベ)くんもそうですし。

――優大選手とは同じ熊本出身で、子どもの頃に空手で対戦したり、高校時代は合同練習をしたりした間柄でしたね(永田は熊本工業高、重岡は開新高)。

永田 あ、そうです、そうです(笑い)。

――それこそ、2つ年下の弟・銀次朗(ワタナベ)選手と世界王者になって。

永田 銀ちゃんのことも全然、知ってるし、優大くんもそうですし、同世代のみんなが活躍しているので。刺激を受けるのもそうなんですけど、みんなで(ボクシングを)盛り上げられているのが、すごく嬉しいな、という気持ちもあります。もちろん、その中でも自分がもっと活躍できるように、もっと上に行けるようにやっていきたいな、と思いますね。

――堤聖也(角海老宝石)選手、森武蔵(志成)選手、熊本出身選手の活躍も目立ちますよね。

永田 そうですね。あと今度、タイトルマッチをやる村上雄大(角海老宝石)も。※12月24日、沖縄で日本ライト級王者の仲里周磨(オキナワ)に挑戦。

――村上選手も2つ下でしたか。

永田 確か2個下ですね。銀ちゃんと一緒だったと思うんで。

――熊本出身者の中でも存在感を出さないといけないですね。

永田 いやー、出さないと、ですよねー(笑い)。みんな、強いから。その中でも活躍できるように頑張ります。

――地元では今、重岡兄弟でしょうしね。県庁を表敬訪問したり、くまモンと仲良くなったり(笑い)。

永田 いや、ほんとですよー(笑い)。同じ熊本市内なんで、自分もそうなるには、あの2人を超えないといけないですよね。

――この間に帰郷は?

永田 お盆のときに帰りました。

――昨年、亡くなったお父さんの。

永田 あ、そうですね。新盆で帰ったんですけど。

――「自分が一番のファン」と言って、ずっと応援してくれていたお父さんに対する気持ちも強いと思います。

永田 そうですね。今回、ベルトを仏壇に置いて、親父に見せようと思っていたんですけど、結局、見せることができなかったんで。またベルトを獲って、見せないといけないという気持ちはすごくありますね。

――気持ちがさらに強くなりますね。

永田 そうですね。で、陥落したあとですけど、チャンピオンになってから初めて帰って、熊本でも自分のことを応援してくれてるのをすごく感じたんで。そこでまた、さらに頑張らないといけないな、とめちゃめちゃ感じました。

再起戦に向けてミット打ちに励む永田

■得体の知れない、侮れない相手

――再起戦は、プロでは初のサウスポー対決になります。

永田 そうなんですよね。初めてのサウスポーなんですよー(笑い)。

――もともとサウスポーに対する意識はどうだったんですか?

永田 いや(笑い)。そこまでオーソドックスだからとか、サウスポーだからとか、アマチュアのときから意識したことがなかったんで。

――アマチュア時代は“どファイター”だったし(笑い)。

永田 そうなんですよ。前に出るだけなんで。あんまり関係ないって感じでやってました(笑い)。

――苦手意識もないし、別に得意というわけでもない。

永田 はい。苦手も得意もないって感じですね(笑い)。

――スパーリングをしてきた感覚はどうですか。

永田 まあ、オーソドックスより(中に)入りやすいので。いいのかな、とは思ってます。試合をやってみないと分からないですけど、スパーリングでは。

――相手の映像は?

永田 まあ、前戦は見たんですけど、映像があまりないからこそ、あんまり捉われ過ぎるのもよくないと思って。ある程度、こういう動きをするんだな、というのを見るぐらいですね。

――ざっくりとどんな印象ですか。

永田 体が強くて、パンチもありそうですね。ガードを固めてくるような。

――体の強さを生かしてくる。

永田 そこは生かしてくると思います。(2020年12月~2023年5月まで)2年ぐらいブランクがあるんですけど、その間はムエタイで16戦とか17戦やってて、1敗とか1分みたいなんで。そういう体の強さもあると思うんで。

――映像は見てないんですが、前戦では、井上拓真(大橋)選手とバンタム級の暫定王座決定戦(WBC)を戦ったタサーナ・サラパットが相手で。判定を見る限り、タイで94対96が2人じゃないですか。内容的に悪くなかったんじゃないかなと想像したんですけど。

永田 いや、強い相手にめちゃめちゃいい試合をやってました。強いですね。侮れない相手です。

――他にはあまり映像がないということで、言葉にすると大げさかもしれないですけど、得体が知れないところもあるんですか。

永田 そうですね。そこがデカいですね。中国だと、調べてもあんまり情報が出てこないんで。

――そういう意味でも捉われ過ぎないで。

永田 はい。どう自分自身を仕上げていくかを重点的に。

左から内田トレーナー、永田、瀬藤会長。日本タイトル獲得時

■この5ヵ月、意識してきた課題

――判定で競り負けた飯村戦を踏まえて、何か課題として意識してきたことはありますか?

永田 内田(洋二トレーナー)さんとも話して、やはりパンチ力というか、パンチをつけていかないといけないというのはひとつですね。

――運動量、手数と回転力が永田選手の持ち味だと思うんですけど、その中でもパンチに強弱をつけるというか。

永田 そうですね。自分から仕掛けて、ステップで前後にズラして揺さぶるとか、そういうところは変えずに。それプラスアルファで、その他の技術的なところとか、引き出しを増やさないといけないと感じてますね。

――パンチ力がひとつ。他に何をプラスしようと考えているかというと?

永田 ここ数戦は前後のステップでテンポをつくってやってたんですけど、その中でしっかり踏み込んで攻めるとか。アマチュアのときの前に前に攻めて、というのを抑えてたわけじゃないんですけど、あんまり出してなかったんで。昔のよさも組み合わせながら。

――攻めるところは攻めて、メリハリをつけるような。普通、アマチュアの頃のよさを出すと言うと前に攻めるじゃないと思うんですけど、そこが永田選手ですね(笑い)。

永田 逆ですよね(笑い)。

――というところを含めて、次の再起戦、どういうボクシングを見せたいですか。

永田 まあ、一発のパンチというところはまだまだなんですけど、しっかりと今までの自分のボクシングをベースにして、強い相手ですけど、いろいろと積み上げてきたものを見せたいな、と思います。

――とにかく勝って、1年を締めくくって、来年につなげたいですよね。

永田 そうですね。終わりよければっていうのもありますし。それプラス、試合の前日11日が自分の誕生日なんですよ(笑い)。

――おお、そうなんですね。

永田 はい。計量日にケーキは食べられないんで。しっかり勝って、自分の誕生日を祝わないといけないですね(笑い)。

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